6 / 139
5
しおりを挟む
会場内に戻ってきたはいいが、どうしたらいいかわからなかった。
僕と話してくれる人なんていないと、わかっているから、誰かに話しかけることもできない。だからと言って、テーブルの上の食べ物を食べるのも、なんだか憚られる。だって、それたちは、いつもあの人たちが食べていたような食べ物に似ているから。僕なんかが食べてはいけないような気がしてならないのだ。
どうしようか、なんて考え事をしながら歩いているからだ。ドンッと人にぶつかってしまった。
「すみまs」
「うわあぁぁぁぁん」
するとそこに、女の子の泣き声が響いた。
「アンナ?どうした?」
「ドッ、ひっく……ドレス、よごっぅえ、よごれちゃったぁあっ」
すかさずそこに兄らしき人が駆けつけて、泣いている理由を聞いている。
僕がぶつかったせいで持っていた食べ物をこぼしてドレスが汚れてしまったようだ。
謝らないと、と思い、声を出す。
「すみませっ」
「おい、お前!アンナになにしたんだ!」
大きい声に驚き、体が縮こまってしまう。
「……あ、の、ぶ、ぶつかってしまってっ」
「ぶつかった?お前、アナベル伯爵家の息子だろう?アンナに暴力をふるったんじゃないだろうな!」
「ご、ごめんなさいっ」
悪いことをしてしまったのは確かだ。ぶつかった僕が悪いのはわかっている。だから頭を下げて謝った。でも、なんで暴力をふるった、という話になるのかがわからなかった。大きい声も怖くて、暴力なんてしていないがそれに反論もできず、ただ謝ることしかできなかった。
「ごめんなさい」
「うわああああんっ」
「アンナ、怖かったな。もう、俺の妹に近づくなっ」
頭を下げて謝るが、ずっと怒っている。
僕はもうどうしたらいいかわからなかった。
「どうしたの?」
「何の騒ぎ?」
騒ぎを聞きつけた大人たちが野次馬のように集まってくる。
「あれ、侯爵様のとこの子供たちと、あの子……」
「噂よりもおとなしいと思っていたところなのに……やっぱり噂通りだったのね」
「アナベル伯爵家のご子息はやっぱり野蛮で、わがままで伯爵様たちの手にも負えないって噂通りみたいね」
大人たちが話している声が聞こえる。
身に覚えがないが、アナベル伯爵家の子息は自分しかいない。
だからか、と急に合点がいく。
だから、みんな、僕と初めて会うのに、僕のことを遠ざけていたのだ。
じろじろ、こそこそ。
声のトーン、視線。すべてが僕のことを拒否していることがわかる。
それが、怖くて。ここにも、どこにも、僕の味方なんて誰もいなくて。あぁ、僕はやっぱり独りなんだって再確認して。心が冷え切っていくのが分かった。
「何をしている」
「……っ」
「お二方とも、本当に申し訳ありません。愚息が大変失礼を…」
そう、恭しく頭を下げ謝罪をする継母と恐ろしい顔をした父が立っていた。
「アンナ様。もしよろしければ、私たちに新しいドレス、買わせていただけませんか?」
「……いいの?……ぐすっ」
「ええ、もちろんです。素敵なドレス、汚してしまってごめんなさい」
「……いいよぉ」
「ありがとう。それじゃあ、一緒にご両親のところへ行かせていただいてもよろしいですか?」
「俺が案内します」
「ありがとうございます」
そうして、子供たちと継母は行ってしまった。
僕が謝っていたときはあんなに怒っていたのに、2人がきて謝ったらそれはおさまった。僕の謝り方が悪かったのか、それとも、僕だから許してくれなかったのか。わからないし、わかりたくなかった。
「はぁ。問題は起こすなとあれほど言ったのに」
「……申し訳ありません。」
「もう、お前は馬車に先に戻っていろ。そこで終わるまで待っていること。いいな」
「はい……」
もう、ここにはいたくなかった。もう、怖い視線を浴びるのも、声をきくのも、いやだった。僕はすぐに会場をあとにした。
僕と話してくれる人なんていないと、わかっているから、誰かに話しかけることもできない。だからと言って、テーブルの上の食べ物を食べるのも、なんだか憚られる。だって、それたちは、いつもあの人たちが食べていたような食べ物に似ているから。僕なんかが食べてはいけないような気がしてならないのだ。
どうしようか、なんて考え事をしながら歩いているからだ。ドンッと人にぶつかってしまった。
「すみまs」
「うわあぁぁぁぁん」
するとそこに、女の子の泣き声が響いた。
「アンナ?どうした?」
「ドッ、ひっく……ドレス、よごっぅえ、よごれちゃったぁあっ」
すかさずそこに兄らしき人が駆けつけて、泣いている理由を聞いている。
僕がぶつかったせいで持っていた食べ物をこぼしてドレスが汚れてしまったようだ。
謝らないと、と思い、声を出す。
「すみませっ」
「おい、お前!アンナになにしたんだ!」
大きい声に驚き、体が縮こまってしまう。
「……あ、の、ぶ、ぶつかってしまってっ」
「ぶつかった?お前、アナベル伯爵家の息子だろう?アンナに暴力をふるったんじゃないだろうな!」
「ご、ごめんなさいっ」
悪いことをしてしまったのは確かだ。ぶつかった僕が悪いのはわかっている。だから頭を下げて謝った。でも、なんで暴力をふるった、という話になるのかがわからなかった。大きい声も怖くて、暴力なんてしていないがそれに反論もできず、ただ謝ることしかできなかった。
「ごめんなさい」
「うわああああんっ」
「アンナ、怖かったな。もう、俺の妹に近づくなっ」
頭を下げて謝るが、ずっと怒っている。
僕はもうどうしたらいいかわからなかった。
「どうしたの?」
「何の騒ぎ?」
騒ぎを聞きつけた大人たちが野次馬のように集まってくる。
「あれ、侯爵様のとこの子供たちと、あの子……」
「噂よりもおとなしいと思っていたところなのに……やっぱり噂通りだったのね」
「アナベル伯爵家のご子息はやっぱり野蛮で、わがままで伯爵様たちの手にも負えないって噂通りみたいね」
大人たちが話している声が聞こえる。
身に覚えがないが、アナベル伯爵家の子息は自分しかいない。
だからか、と急に合点がいく。
だから、みんな、僕と初めて会うのに、僕のことを遠ざけていたのだ。
じろじろ、こそこそ。
声のトーン、視線。すべてが僕のことを拒否していることがわかる。
それが、怖くて。ここにも、どこにも、僕の味方なんて誰もいなくて。あぁ、僕はやっぱり独りなんだって再確認して。心が冷え切っていくのが分かった。
「何をしている」
「……っ」
「お二方とも、本当に申し訳ありません。愚息が大変失礼を…」
そう、恭しく頭を下げ謝罪をする継母と恐ろしい顔をした父が立っていた。
「アンナ様。もしよろしければ、私たちに新しいドレス、買わせていただけませんか?」
「……いいの?……ぐすっ」
「ええ、もちろんです。素敵なドレス、汚してしまってごめんなさい」
「……いいよぉ」
「ありがとう。それじゃあ、一緒にご両親のところへ行かせていただいてもよろしいですか?」
「俺が案内します」
「ありがとうございます」
そうして、子供たちと継母は行ってしまった。
僕が謝っていたときはあんなに怒っていたのに、2人がきて謝ったらそれはおさまった。僕の謝り方が悪かったのか、それとも、僕だから許してくれなかったのか。わからないし、わかりたくなかった。
「はぁ。問題は起こすなとあれほど言ったのに」
「……申し訳ありません。」
「もう、お前は馬車に先に戻っていろ。そこで終わるまで待っていること。いいな」
「はい……」
もう、ここにはいたくなかった。もう、怖い視線を浴びるのも、声をきくのも、いやだった。僕はすぐに会場をあとにした。
257
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
2026/01/09 加筆修正終了
天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました
藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。
=================
高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。
ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。
そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。
冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで……
優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる