愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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 会場内に戻ってきたはいいが、どうしたらいいかわからなかった。
 僕と話してくれる人なんていないと、わかっているから、誰かに話しかけることもできない。だからと言って、テーブルの上の食べ物を食べるのも、なんだか憚られる。だって、それたちは、いつもあの人たちが食べていたような食べ物に似ているから。僕なんかが食べてはいけないような気がしてならないのだ。

 どうしようか、なんて考え事をしながら歩いているからだ。ドンッと人にぶつかってしまった。

「すみまs」
「うわあぁぁぁぁん」

 するとそこに、女の子の泣き声が響いた。

「アンナ?どうした?」
「ドッ、ひっく……ドレス、よごっぅえ、よごれちゃったぁあっ」

 すかさずそこに兄らしき人が駆けつけて、泣いている理由を聞いている。
 僕がぶつかったせいで持っていた食べ物をこぼしてドレスが汚れてしまったようだ。
 謝らないと、と思い、声を出す。

「すみませっ」
「おい、お前!アンナになにしたんだ!」

 大きい声に驚き、体が縮こまってしまう。

「……あ、の、ぶ、ぶつかってしまってっ」
「ぶつかった?お前、アナベル伯爵家の息子だろう?アンナに暴力をふるったんじゃないだろうな!」
「ご、ごめんなさいっ」

 悪いことをしてしまったのは確かだ。ぶつかった僕が悪いのはわかっている。だから頭を下げて謝った。でも、なんで暴力をふるった、という話になるのかがわからなかった。大きい声も怖くて、暴力なんてしていないがそれに反論もできず、ただ謝ることしかできなかった。

「ごめんなさい」
「うわああああんっ」
「アンナ、怖かったな。もう、俺の妹に近づくなっ」

 頭を下げて謝るが、ずっと怒っている。
 僕はもうどうしたらいいかわからなかった。

「どうしたの?」
「何の騒ぎ?」

 騒ぎを聞きつけた大人たちが野次馬のように集まってくる。

「あれ、侯爵様のとこの子供たちと、あの子……」
「噂よりもおとなしいと思っていたところなのに……やっぱり噂通りだったのね」
「アナベル伯爵家のご子息はやっぱり野蛮で、わがままで伯爵様たちの手にも負えないって噂通りみたいね」

 大人たちが話している声が聞こえる。
 身に覚えがないが、アナベル伯爵家の子息は自分しかいない。
 だからか、と急に合点がいく。
 だから、みんな、僕と初めて会うのに、僕のことを遠ざけていたのだ。

 じろじろ、こそこそ。
 声のトーン、視線。すべてが僕のことを拒否していることがわかる。
 それが、怖くて。ここにも、どこにも、僕の味方なんて誰もいなくて。あぁ、僕はやっぱり独りなんだって再確認して。心が冷え切っていくのが分かった。

「何をしている」
「……っ」
「お二方とも、本当に申し訳ありません。愚息が大変失礼を…」

 そう、恭しく頭を下げ謝罪をする継母と恐ろしい顔をした父が立っていた。

「アンナ様。もしよろしければ、私たちに新しいドレス、買わせていただけませんか?」
「……いいの?……ぐすっ」
「ええ、もちろんです。素敵なドレス、汚してしまってごめんなさい」
「……いいよぉ」
「ありがとう。それじゃあ、一緒にご両親のところへ行かせていただいてもよろしいですか?」
「俺が案内します」
「ありがとうございます」

 そうして、子供たちと継母は行ってしまった。
 僕が謝っていたときはあんなに怒っていたのに、2人がきて謝ったらそれはおさまった。僕の謝り方が悪かったのか、それとも、僕だから許してくれなかったのか。わからないし、わかりたくなかった。

「はぁ。問題は起こすなとあれほど言ったのに」
「……申し訳ありません。」
「もう、お前は馬車に先に戻っていろ。そこで終わるまで待っていること。いいな」
「はい……」

 もう、ここにはいたくなかった。もう、怖い視線を浴びるのも、声をきくのも、いやだった。僕はすぐに会場をあとにした。
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