愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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 それからも、僕は勉強を頑張った。基礎の本をたくさん読んで、授業を受けて。その繰り返しだった。どうしても基礎の勉強が追い付かなくて、授業で困ったことも何度もあった。わからないのに先生にあてられて、答えられなくて、笑われるなんてこともたくさんあった。それでも、僕はあきらめなかった。自分のために、彼のために。
 授業に精一杯で、今のところあまり他の国のことについて学べていないけれど今はしょうがない。今は目の前のことに集中しないと、と頑張った。

 
 そして、僕は、テストで上位の順位を取れるくらいに知識をつけることができた。

「おい、あいつ、また上位に入ってるぞ」
「うわ、本当だ。やっぱりあの噂、本当っぽいよな」

 僕がテストで上位を取るたびに言われる噂。

 僕が、カンニングしているのではないか、と。
 あの、テオ・アナベルが勉強ができるわけがない。不正をしているに違いない。そういわれている。
 でも、いくら疑われても、反論する人もいない。噂されるだけで、今のところ直接言われたことはないし、僕には友達と呼べる人もいないから。僕だけが耐えればいいだけ。僕だけが、そんなことはしていないとわかっていればいいだけ、そう思っていた。

「なあ」

 久しぶりにすごく近くで、人の声がした。

「は?無視?」

 まさか、本当に僕に話しかけているのか?と疑問に思いながらも顔を上げると、そこにはいやそうな顔をしたケイトがいた。

「……す、みません。僕に、何か…ご用、ですか?」
「そのしゃべり方、わざとなの?気持ちわる」

 顔が怖くて、悪意が怖くて、あげた顔をすぐ元に戻す。
 初日はあんなに人当たりのよさそうな話し方をしていたケイトからの悪意に、僕は傷ついてしまっているようだった。悪意なんて初めてではないのに、心がいつもより痛かった。

「カンニングしてる、って本当なの?」
「……っちがっ」
「ま、本当にしてても、してます、なんて言えないか」

 反論できない自分が悔しかった。本当にそんなことしていないのに。
 僕は正真正銘、カンニングなんてしていない。これは、僕が頑張った結果だと、胸を張って言える。でも、周りはそう思っていない。
 今では常連の図書館でも、今でも行けばこそこそといろいろ言われる。その言葉を、あまり耳に入れないように、僕が図書館にいるとわからないように、僕が他の人の目につかないよう端っこで勉強して。本を探す時もこそこそと静かに探すようにしている。
 だから僕が勉強している姿なんて想像もつかないんだろうな、なんて勝手に分析をする。

「基礎問題も回答できなかった君が、上位を取れるなんて思えないんだけど…。誰のこと脅してるの?ここまで、先生にばれないってことは、だれか協力者がいるんじゃないのかなって思ったんだけど」
「……だから、」
「もしかして、先生を脅しているの?ま、家族に危害を加えるくらいの人、なんだもんね?そのくらいできそうだね」

 つい下げていた頭を上げる。
 やっぱりケイトは僕の噂を聞いていたんだ。だから次の日から話しても近づいても来なかったんだ。
 すべて、噂で、本当のことなんて一つもない。
 でも、ここには僕のことを信じてくれる人なんて誰もいない。いつも痛いことに、怖いことに耐えているのは僕だと、それを信じてくれる人なんて。それが悔しくて、寂しい。何一つ、きちんと反論できない自分にも腹が立つ。ここまで来るためにたくさん勉強したと、胸を張って言えるんじゃないのか。

「いろんな先生に伝えれば、解決するかな…。俺が代わりに先生たちに伝えておいてあげる。君がカンニングしていましたって」

 ケイトの本性はきっとこっちだろうなと、顔をみてなんとなくわかってしまう。

「恨まないでよ?伯爵家の子だからって、いけないことはいけないことなんだから。それに、入学した日も言ったよな。この学園では身分は関与しないって。じゃ、またね」

 そう言いたいことだけを言ってケイトは帰っていった。
 僕は、何も言えなくて、動くこともできなくて。悔しがることしかできなかった。
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