愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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「テオ・アナベル君。ある生徒から聞いたのですが、テストでカンニングしているというのは、本当ですか?」
「……ぃ、や、あの、僕……」

 違いますとすぐに言いたいのに、人に自分の言葉で話すのは得意ではないし、慣れていなくて言葉がすぐに出てこない。

「……はぁ、君はいつももじもじしていますね。それは、わざとですか?」

 その言葉は昨日も聞いた気がして、思い立つ。きっと先生たちも噂は知っているんだ。

「それで?どうなんですか?」
「……やって、ません」
「そうですか。…証拠もないようですし、今はその言葉は信じます。ですが、疑われている、ということは、そのような行動をしている、ということですからね。そのことを忘れないように」
「……はい、申し訳ありません」

 部屋を出て、僕は立ちすくむ。
 僕の何が駄目だったんだろう。疑われる行動ってなんだ。僕はただ、たくさん勉強しただけなんだ。
 僕、だから疑われているのか。僕、だから先生にも疑われるのか。悔しくて、唇をかみしめる。
 僕は、どうしたらいいんだろうと、今までも何度も考えてきたことが頭に浮かぶ。いつも答えなんて出ないけれど。

 ここにずっといても仕方がない。まだお迎えまでは時間があるから、勉強をしようと図書館へ足を向けようとした時だった。

「あの問題児君、どうでした?」
「否定していました。今は証拠もないので本人の言葉を受け取るしかできませんでしたが」
「そうですか。なにせ、あの有名なテオ・アナベル君ですからね。不正くらいしていそうですね」
「えぇ……。次のテストからは厳しく監視するようにします」
「そうしましょう」

 そんな会話が聞こえてきたけれど、聞こえないふりをした。
 
 僕が頑張っていることは、僕が分かっていればいいんだ。
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