愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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「あなた、学校でたくさん問題を起こしているようね」

 継母が僕の部屋にやってきた。
 こうして直接会うのは久しぶりだ。

「先生から報告があったわ。あなたの問題行動について……。まったく、これだけたくさん躾をしてやっているのに、まだ足りないのかしら」
「……いや、僕はっ」

 そう、つい先生に対してするように主張をしようとしてしまう。やらかした、と気づくには遅かった。

「自分が悪いことをしているのに、嘘をつくの?さすが、あの女の息子ね。卑しい子」
「……っ」

 喉が詰まったような感覚になる。言葉が出てこない。
 いくら、先生に自分の主張ができるようになったからといって、この人たちにしてはいけなかった。そんなことをしたらどうなってしまうか、自分が一番よくわかっているはずなのに。

「そんなあなたに、今日はいつもよりいいものを用意したわ。ありがたく思いなさい」

 その言葉で、継母の後ろにたくさん人がいることに気が付いた。体が大きくて、力が強そうな人ばかりだ。そんな人が全部で5人。まさか、と思ったが、信じたくなかった。

「顔は傷つけないように、お願いね。あと、くれぐれも殺さないように。どうやら頭だけはいいようだから、将来私たちのために働いてもらわないとね。それに、ストレス発散がなくなったら困るもの」
「承知しました」

 継母は笑いながら、僕の部屋を出て行った。
 部屋に残された5人の男が僕を囲む。服装は使用人のものだが、知らない顔が何人かいた。新しく入った使用人だろうか。僕は使用人ともこういった時以外に会わないから知らない顔があっても不思議ではないが。

「フレイア様からのご命令。背くわけにはいきません。それに君は学園でいけないことをたくさんしていると聞きました。貴族としての恥を知りなさい」
「人を殴ったとも聞きました。その人たちの痛みを自分も味わったほうが、身をもっていけなかったことだとわかりますよ」
「ーーっやめ」

 それからの記憶は、ない。思い出したくもない。痛くて、怖くて。体を守っても、意味がなくて。痛くて、痛くて。

 男に囲まれて見下ろされるだけでも怖かった。顔が、目が、怖くて。逃げたくても、逃げられなくて。何人か最初は戸惑っていたようだが、最終的にはきっと、僕を痛めつけることを楽しんでいた。顔が、そう言っていた。

「……ったぃ」

 痛くて、声が出ない。怖くて震えも止まらない。僕は何もしていないのに。ただ、勉強をしているだけなのに。どうして、こんなことをされないといけないんだ。本当に、死んでしまうかと思った。
 もう、こんな思いをするくらいなら、死んだ方がましかもしれない。そう考えてしまうくらい、怖かった。

 ―ーでも、だめだ。まだ死ぬわけにはいかない。

 死ななくて、殺されなくて、良かったと思わないと。まだ、彼に会っていないんだから。彼に、また会うまで、死ねないんだ。でも、今日くらいは、弱音を吐いても、許されるだろうか。
 
 ハンカチを握りしめて、つぶやく。

「……っい、たかった。怖かった……っ。あい、たいよぅ……っうぅ、うぁあ」

 それから、涙は止まらなくて。ハンカチを握りしめて、僕は夜が明けるまで、静かに泣き続けた。
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