愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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 ようやく涙も止まって落ち着いてきたため、先ほどのお礼を言う。

「さっきは、助けてくれてありがとう、ございます。シエロ、殿下」

 シエロはこの国の王子なのだろう。僕は名前から判断してシエロをそう呼んだ。僕が初めて会ったとき、シエロはいいって言ってくれたけれど、相当な失礼をしてしまったのではないかと急に不安になる。

「シエロ殿下って……。前みたいに、話してくれないの?」
「だ、だって……この国の、王子、ですよね?」
「僕は第2王子だけどね。さっき一緒にいた、僕と顔がそっくりの人が僕の兄でこの国の第1王子」

 僕はすごい人たちに助けてもらってしまったということか。シエロのお兄様にも後できちんとお礼をしておかないといけない。

「僕はテオに前みたいに僕と話してほしいし、シエロって呼んでほしいんだけどな」

 だめかな、とシエロはなんだか寂しそうな顔をしていた。
 シエロにはそんな顔をしてほしくない。いいのかなと思いつつも、王子ということを僕が知ってもなおそう言ってくれるのであればと、すぐに承諾した。

「うん、わかった。でも、他の人がいる時以外、でもいい?」
「うん。嬉しい」

 そう言って笑う、シエロの笑顔がまぶしくて、嬉しくて。僕も自然と笑顔になる。こんな風に二人で話して笑顔になれるなんて、夢みたいだ。

「テオがこっちに来るって知って、本当は昨日会いに行きたかったんだけど、兄に止められてしまって。昨日いけなかったんだ」
「僕が来るって、知ってたの?」
「うん。実はそうなんだ」

 シエロは、そう言うと僕に向き直り、頭を下げた。

「テオ、ごめん」

 そう僕に謝って、話を始めた。

 あの日、初めて僕とあった日。シエロは国に帰ってから、ずっと僕について調べていて、名前も、家のこともすべて知っていることを話してくれた。
 その中でも僕が一番驚いたのは、ブライト先生のことだった。

「テオの学園に、ブライト先生、っているだろう?」
「うん。僕が1番お世話になって、僕の味方になってくれた先生だよ」
「そうなって、本当によかったよ。その先生なんだけどね?本当は先生じゃなくて、僕がテオの学園に赴任するように命令した、僕の従者なんだ」

 だから、ブライトから、全部聞いてた。テオが、学園でどんなことがあったのか。大けがをした時もあったって、聞いた、とシエロは話してくれた。

「本当は、すぐにでも助けに行きたかった。会いに行きたかった。僕が、側にいたかった。でも、できなくて。こんなに遅くなっちゃった」

 その時の表情はよく見えなかったけれど、すごく悔しそうに、悲しそうに話していて。

 でも、僕がその話を聞いて感じたことは、驚きも、もちろんあったけれど、それ以上にーー

「一人にしてごめん。僕はいつも一緒にいるつもりだったけど、テオは一人で苦しみと戦ったんだ」
「……っううん、違う。違うよっ」

 僕は、ずっと、シエロに守られていたんだ。シエロがいたから、独り、じゃなかったんだ。

 ブライト先生がいたから、学園生活ですごく助かったこと。
 苦しいことがあっても、シエロとの思い出があったから、ここまでやってこれた。シエロとの思い出があったから、独りじゃないって、思えた。シエロの言葉があったから、生きることをあきらめずに、ここまでやってこれた。

「全部、シエロのおかげなんだよ。ありがとうっ」

 自分の感情を伝えるのは、すごく難しい。言葉では伝えきれないくらいの想いがあって、きっと全部は伝えられていない。それでも、伝わってほしいから。シエロの目を見て、いっぱい伝えた。ありがとうって。シエロのおかげだよって。

「……っそっか。よかったっ」

 その顔は、やっぱりきれいで。泣きそうだけれど、嬉しそうな顔をしていて、胸がきゅうっとなる。この感覚は、なんだろう。

「これからは、側にいて、テオを守るから」
「うん、ありがとう。僕も、シエロの支えになれたら、嬉しいな」
「ありがとう」

 たくさんもらったから、今度は僕が君に返せたら。君に会うまでに、たくさん勉強したんだ。それが役に立つかわからないけれど。僕の存在が、君のためになればいい。
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