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今日こそは、昨日いけなかった図書館へ行く、と意気込み教室を出た。
授業もすべて終わり、教室の中の生徒もまばらになってきた。
ルイに一緒に帰るかと提案されたが、今日は他の約束があると断った。人に言われたことを断るというのは少し勇気のいることだったけれど、ルイは嫌な顔もせず、またな、と教室を出て行った。
そして一人、目的地に向かい、扉を開く。
ここの図書館は前の学園より広くて、本の種類も多いようだった。
もう僕はシエロの国を知るために他の国のことを調べる必要はなくなったけれど、今までたくさん勉強をしたおかげで、勉強が好きになった。それに図書館の雰囲気も落ち着いて好きだから。だから僕はいつも通り、図書館で勉強をする。
ひと段落着いたと顔を上げると、ちょうどシエロが図書館に着いたようだった。
まだ寮に戻らなくてもいい時間のため、少し図書館でゆっくりしようという話になり、シエロが僕の隣に座る。僕も勉強しようかな、とシエロが準備を始めている。僕は、その前に、と思い口を開く。
「シエロ、大丈夫だった?」
「?何が?」
「今日、周りの人に何か言われたりとか、たくさん何か聞かれたりとか、なかった?」
「うん。僕は何もなかったけど…。テオは何かあったの?」
シエロに何もなかったと聞いて胸をなでおろす。でも、今日はよくても、今後はわからない。僕が隣にいて迷惑をかけることがきっとある。今日ルイから聞いたことをシエロに話すか一瞬迷ってしまったが、今のうちに話しておいた方がいいだろうと判断してシエロに話した。
「そうだったんだ。テオは嫌な思いしなかった?」
「うん、大丈夫だよ。その話がシエロに当てはまらないから少し混乱したくらいで…」
だって、いつも優しくて、感情もちゃんとわかるように僕に伝えてくれてるでしょ?と話すとシエロは嬉しそうに言った。
「そんなことを言ってくれるのはテオだけだよ」
そんなシエロを見て、やっぱりそんなことないよなと再確認する。
「それより、シエロに迷惑かけちゃうとおもっー」
「テオのことで迷惑だと思うことなんてないよ」
「で、でもー」
「絶対に、ない」
シエロが強く、僕に言ってくる。信じて、とシエロが僕に訴えてきた。
「それに、今回の件は僕がテオに迷惑かけてるよ。ごめんね」
「そんなことないよっ」
シエロのことで、僕が迷惑だと思うことなんてない。絶対に。そう考えたところで、ふと思う。シエロも僕と同じように思ってくれている、ということか。そう思うと、じわじわと嬉しくなって、まるで心からあったかいのが広がっていく、みたいな感覚がした。
僕と同じ気持ちなら、シエロのその言葉を信じることができる。きっとシエロも心からそうやって思ってくれている、ってそう思える。
「その話の通り、僕は今まであんまり食堂に行ったことなくて。いつも自分の部屋で食べてたんだ」
「自分で作ってるの?」
「うん。でもテオと一緒にご飯食べたくてそうしたんだけど、まさかそんなに周りを騒がせるとは思わなかったな。周りも見えないなんて、王族として失格だな」
「…もう一緒にご飯、食べれないの?」
王族、という言葉を聞いたうえでそんなことを言っていいのかわからなかったけれど、言葉を止めることができなかった。シエロのことになると感情が素直に口から出てきてしまう。シエロに嫌われないといいけれど。
「テオさえよければ、これからは僕の部屋で一緒に食べない?」
「…いいの?」
「もちろん」
「うん!嬉しい」
でも対価を払わずに、というわけにはいかない。そう考えて、僕は思い出した。そういえば、働いてもいいか、確認しないといけないんだった。僕はそれをシエロに聞くことにした。
授業もすべて終わり、教室の中の生徒もまばらになってきた。
ルイに一緒に帰るかと提案されたが、今日は他の約束があると断った。人に言われたことを断るというのは少し勇気のいることだったけれど、ルイは嫌な顔もせず、またな、と教室を出て行った。
そして一人、目的地に向かい、扉を開く。
ここの図書館は前の学園より広くて、本の種類も多いようだった。
もう僕はシエロの国を知るために他の国のことを調べる必要はなくなったけれど、今までたくさん勉強をしたおかげで、勉強が好きになった。それに図書館の雰囲気も落ち着いて好きだから。だから僕はいつも通り、図書館で勉強をする。
ひと段落着いたと顔を上げると、ちょうどシエロが図書館に着いたようだった。
まだ寮に戻らなくてもいい時間のため、少し図書館でゆっくりしようという話になり、シエロが僕の隣に座る。僕も勉強しようかな、とシエロが準備を始めている。僕は、その前に、と思い口を開く。
「シエロ、大丈夫だった?」
「?何が?」
「今日、周りの人に何か言われたりとか、たくさん何か聞かれたりとか、なかった?」
「うん。僕は何もなかったけど…。テオは何かあったの?」
シエロに何もなかったと聞いて胸をなでおろす。でも、今日はよくても、今後はわからない。僕が隣にいて迷惑をかけることがきっとある。今日ルイから聞いたことをシエロに話すか一瞬迷ってしまったが、今のうちに話しておいた方がいいだろうと判断してシエロに話した。
「そうだったんだ。テオは嫌な思いしなかった?」
「うん、大丈夫だよ。その話がシエロに当てはまらないから少し混乱したくらいで…」
だって、いつも優しくて、感情もちゃんとわかるように僕に伝えてくれてるでしょ?と話すとシエロは嬉しそうに言った。
「そんなことを言ってくれるのはテオだけだよ」
そんなシエロを見て、やっぱりそんなことないよなと再確認する。
「それより、シエロに迷惑かけちゃうとおもっー」
「テオのことで迷惑だと思うことなんてないよ」
「で、でもー」
「絶対に、ない」
シエロが強く、僕に言ってくる。信じて、とシエロが僕に訴えてきた。
「それに、今回の件は僕がテオに迷惑かけてるよ。ごめんね」
「そんなことないよっ」
シエロのことで、僕が迷惑だと思うことなんてない。絶対に。そう考えたところで、ふと思う。シエロも僕と同じように思ってくれている、ということか。そう思うと、じわじわと嬉しくなって、まるで心からあったかいのが広がっていく、みたいな感覚がした。
僕と同じ気持ちなら、シエロのその言葉を信じることができる。きっとシエロも心からそうやって思ってくれている、ってそう思える。
「その話の通り、僕は今まであんまり食堂に行ったことなくて。いつも自分の部屋で食べてたんだ」
「自分で作ってるの?」
「うん。でもテオと一緒にご飯食べたくてそうしたんだけど、まさかそんなに周りを騒がせるとは思わなかったな。周りも見えないなんて、王族として失格だな」
「…もう一緒にご飯、食べれないの?」
王族、という言葉を聞いたうえでそんなことを言っていいのかわからなかったけれど、言葉を止めることができなかった。シエロのことになると感情が素直に口から出てきてしまう。シエロに嫌われないといいけれど。
「テオさえよければ、これからは僕の部屋で一緒に食べない?」
「…いいの?」
「もちろん」
「うん!嬉しい」
でも対価を払わずに、というわけにはいかない。そう考えて、僕は思い出した。そういえば、働いてもいいか、確認しないといけないんだった。僕はそれをシエロに聞くことにした。
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