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しおりを挟む「それじゃあ、また夕方ね」
「はい、また」
朝目が覚めて、僕は昨日の出来事が夢だったのではないか、夢だったらどうしよう、なんていう不安に駆られた。でも、支度を整えて部屋の外に出たらシエロがそこにいて、再会できたのは夢じゃなかったんだって思ったらなんだかまた涙が出てきちゃって。シエロを困らせるってわかっているのに止まらなくて。ごめん、すぐ止まるからって部屋に戻ろうとしたら、シエロが大丈夫だよって言いながら僕の頭をなでてくれた。
朝からそんなやり取りをして、一緒に朝食を食べて、一緒に学園まで来た。帰りは僕が図書館に寄りたいと話したら、お迎えに行くから一緒に帰ろうと言ってくれた。シエロとたくさん一緒にいることができてすごく嬉しかった。
そうして学園について、シエロと別れて一人で歩く。二人でいた時からずっと周りの視線が痛かったけれど、一人になってもそれは変わらなかった。もしかして、僕の良くない噂が何か流れているのかと不安になったけれど、その視線に嫌なものは今のところないが、落ち着かない。少し攻撃的なものもある感じはしたけれど、僕を探るような視線が多い感じがした。
教室に入り、今日も昨日と同じところに座ろうと思い教室内を見渡すとルイと目が合う。今日も隣に座ってもいいだろうか。迷いながらも、昨日またって言ってくれたと思いだし、ルイの隣の席に着く。
「お、はよ」
ぎこちないあいさつをしたが、ルイは気にした様子もなく、あいさつを返してくれた。
「お前、一気に有名人になってるぞ」
「…へ?」
唐突にそう言われて困惑した。
やっぱり、エミリアが何か仕掛けているのだろうか。心拍数が急に上がる。どうしよう。また、僕は、今までみたいにー
「あのシエロ殿下と仲良さそうな留学生はなんだって」
「へ?」
「あの子の前だと今までなら全然変わらなかったシエロ殿下の表情がころころ変わるとか、あのシエロ殿下が仲良さそうに人と話しているところなんて初めて見たとか、相手は誰だとか…」
そっちか、と安堵し、胸をなでおろす。
この国の殿下が他国の、しかも昨日から留学に来た生徒と仲良くしていたらみんな驚くし、噂にもなるよなと納得する。
でも、シエロの表情が全然変わらないとはどういうことか。そんなこと、思ったことがない。
「昨日、食堂でみんな騒いでたぞ」
まさかそんなに周りを騒がせているとは。気が付かなかった。ルイによれば、シエロが食堂にいること自体そもそも珍しいことだったらしく、それがソラナ殿下以外の誰かと一緒となると、余計周りを騒がせたようだ。
「えっと…詳しくは言えないけど、シエロ、殿下は僕の恩人で」
「なんだ、俺てっきり二人はこ…あー、いや、なんでもない」
「?なに?」
「いや…。そうだ、昨日ちゃんと図書館行けたか?」
ルイはもうその話題に興味がなくなったのか、昨日のことを謝ってきた。それに答えつつ、僕は考えていた。
シエロは大丈夫だろうか。周りに何か言われていないだろうか。僕のせいで迷惑をかけていたら嫌だ。そもそも、シエロが無表情ってどういうことだろう。シエロの笑顔は優しくて、感情もわかりやすいと僕は思うが。
何もなかったか念のため後で確認しないと、と考え、今は目の前の授業に集中しようと頭を切り替えた。
「はい、また」
朝目が覚めて、僕は昨日の出来事が夢だったのではないか、夢だったらどうしよう、なんていう不安に駆られた。でも、支度を整えて部屋の外に出たらシエロがそこにいて、再会できたのは夢じゃなかったんだって思ったらなんだかまた涙が出てきちゃって。シエロを困らせるってわかっているのに止まらなくて。ごめん、すぐ止まるからって部屋に戻ろうとしたら、シエロが大丈夫だよって言いながら僕の頭をなでてくれた。
朝からそんなやり取りをして、一緒に朝食を食べて、一緒に学園まで来た。帰りは僕が図書館に寄りたいと話したら、お迎えに行くから一緒に帰ろうと言ってくれた。シエロとたくさん一緒にいることができてすごく嬉しかった。
そうして学園について、シエロと別れて一人で歩く。二人でいた時からずっと周りの視線が痛かったけれど、一人になってもそれは変わらなかった。もしかして、僕の良くない噂が何か流れているのかと不安になったけれど、その視線に嫌なものは今のところないが、落ち着かない。少し攻撃的なものもある感じはしたけれど、僕を探るような視線が多い感じがした。
教室に入り、今日も昨日と同じところに座ろうと思い教室内を見渡すとルイと目が合う。今日も隣に座ってもいいだろうか。迷いながらも、昨日またって言ってくれたと思いだし、ルイの隣の席に着く。
「お、はよ」
ぎこちないあいさつをしたが、ルイは気にした様子もなく、あいさつを返してくれた。
「お前、一気に有名人になってるぞ」
「…へ?」
唐突にそう言われて困惑した。
やっぱり、エミリアが何か仕掛けているのだろうか。心拍数が急に上がる。どうしよう。また、僕は、今までみたいにー
「あのシエロ殿下と仲良さそうな留学生はなんだって」
「へ?」
「あの子の前だと今までなら全然変わらなかったシエロ殿下の表情がころころ変わるとか、あのシエロ殿下が仲良さそうに人と話しているところなんて初めて見たとか、相手は誰だとか…」
そっちか、と安堵し、胸をなでおろす。
この国の殿下が他国の、しかも昨日から留学に来た生徒と仲良くしていたらみんな驚くし、噂にもなるよなと納得する。
でも、シエロの表情が全然変わらないとはどういうことか。そんなこと、思ったことがない。
「昨日、食堂でみんな騒いでたぞ」
まさかそんなに周りを騒がせているとは。気が付かなかった。ルイによれば、シエロが食堂にいること自体そもそも珍しいことだったらしく、それがソラナ殿下以外の誰かと一緒となると、余計周りを騒がせたようだ。
「えっと…詳しくは言えないけど、シエロ、殿下は僕の恩人で」
「なんだ、俺てっきり二人はこ…あー、いや、なんでもない」
「?なに?」
「いや…。そうだ、昨日ちゃんと図書館行けたか?」
ルイはもうその話題に興味がなくなったのか、昨日のことを謝ってきた。それに答えつつ、僕は考えていた。
シエロは大丈夫だろうか。周りに何か言われていないだろうか。僕のせいで迷惑をかけていたら嫌だ。そもそも、シエロが無表情ってどういうことだろう。シエロの笑顔は優しくて、感情もわかりやすいと僕は思うが。
何もなかったか念のため後で確認しないと、と考え、今は目の前の授業に集中しようと頭を切り替えた。
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