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「おじゃま、します」
「どうぞ」
早速今日からどうかと誘われて、シエロの部屋に来た。人の部屋にお邪魔するという経験をしたことがないからか、すごく緊張する。
寮の部屋はすべて同じ様式になっている。家具も支給品。だから、僕の部屋とあまり変わらないはずなのになんだか違うように見える。それに、部屋のあちこちからシエロの空気を感じて、安心するけれどドキドキして。こんな気持ちになるのは初めてで、どうしたらいいかわからない。
「テオ?」
「はいっ!」
「緊張してる?」
「…少し」
気づかれたことが恥ずかしくて、顔が赤くなる。
「そんなに緊張しないで?くつろいでいいからね」
「…うん。ありがとう」
「ここ座って。すぐ準備するから待っててね」
シエロはそう言って、制服の上着を脱いで、腕まくりをしながらキッチンに向かった。その姿がかっこよくて、目が離せない。
言われた通り、ソファーに腰かけたが、やっぱりそわそわして落ち着かない。
「テオは料理、したことある?」
「…ない」
「一緒にしてみる?」
「…!うん!」
僕が一緒にしても邪魔になるだけだという考えが一瞬頭をよぎったが、好奇心が勝ってしまった。それに、何かあってもシエロなら怒らない、と思うから。
僕は立ち上がってシエロの隣に立った。
そうするとシエロは僕の予想通り丁寧に教えてくれた。僕に合わせてゆっくり。包丁の使い方とか、注意しないといけないこととか。少ししか手伝えることがなくて、途中からシエロの手元をずっと見ているだけだったけれど、手際よく料理を作っていくところは見ているだけで楽しかった。僕もいつかできるようにれたらいいなとシエロに話したら、テオならすぐできるようになるよと言ってくれた。
だんだんといい匂いがしてきて、ぐうっと音が鳴る。僕のお腹が鳴ったようだった。今まであまり感じたことがなかった食欲を感じて嬉しくなる半面、恥ずかしくて。ごめんと謝ろうとしたけれど、おなかすいたね、とシエロが優しい顔で言うものだから、その言葉は飲み込んだ。
「いただきます」
「召し上がれ」
「おいしいっ」
「よかった。食べきれなかったら残してもいいからね」
シエロが作ってくれたご飯は今まで食べたことがないくらいおいしくて、今まで食べたご飯の中で一番おいしくて、心があったかくなって。こうして二人で机を囲んでご飯を食べていることも嬉しくて。なんだか泣きそうになった。
「…シエロ」
「ん?」
「ありがとう」
「…もし食べれるなら、おかわりもあるよ」
「うん」
ふわっと頭にのったシエロの手から伝わってくる体温は心地よくて、自然と笑顔がこぼれた。
「どうぞ」
早速今日からどうかと誘われて、シエロの部屋に来た。人の部屋にお邪魔するという経験をしたことがないからか、すごく緊張する。
寮の部屋はすべて同じ様式になっている。家具も支給品。だから、僕の部屋とあまり変わらないはずなのになんだか違うように見える。それに、部屋のあちこちからシエロの空気を感じて、安心するけれどドキドキして。こんな気持ちになるのは初めてで、どうしたらいいかわからない。
「テオ?」
「はいっ!」
「緊張してる?」
「…少し」
気づかれたことが恥ずかしくて、顔が赤くなる。
「そんなに緊張しないで?くつろいでいいからね」
「…うん。ありがとう」
「ここ座って。すぐ準備するから待っててね」
シエロはそう言って、制服の上着を脱いで、腕まくりをしながらキッチンに向かった。その姿がかっこよくて、目が離せない。
言われた通り、ソファーに腰かけたが、やっぱりそわそわして落ち着かない。
「テオは料理、したことある?」
「…ない」
「一緒にしてみる?」
「…!うん!」
僕が一緒にしても邪魔になるだけだという考えが一瞬頭をよぎったが、好奇心が勝ってしまった。それに、何かあってもシエロなら怒らない、と思うから。
僕は立ち上がってシエロの隣に立った。
そうするとシエロは僕の予想通り丁寧に教えてくれた。僕に合わせてゆっくり。包丁の使い方とか、注意しないといけないこととか。少ししか手伝えることがなくて、途中からシエロの手元をずっと見ているだけだったけれど、手際よく料理を作っていくところは見ているだけで楽しかった。僕もいつかできるようにれたらいいなとシエロに話したら、テオならすぐできるようになるよと言ってくれた。
だんだんといい匂いがしてきて、ぐうっと音が鳴る。僕のお腹が鳴ったようだった。今まであまり感じたことがなかった食欲を感じて嬉しくなる半面、恥ずかしくて。ごめんと謝ろうとしたけれど、おなかすいたね、とシエロが優しい顔で言うものだから、その言葉は飲み込んだ。
「いただきます」
「召し上がれ」
「おいしいっ」
「よかった。食べきれなかったら残してもいいからね」
シエロが作ってくれたご飯は今まで食べたことがないくらいおいしくて、今まで食べたご飯の中で一番おいしくて、心があったかくなって。こうして二人で机を囲んでご飯を食べていることも嬉しくて。なんだか泣きそうになった。
「…シエロ」
「ん?」
「ありがとう」
「…もし食べれるなら、おかわりもあるよ」
「うん」
ふわっと頭にのったシエロの手から伝わってくる体温は心地よくて、自然と笑顔がこぼれた。
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初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
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