愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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「本当に送ってかなくていいの?」
「…うん。すぐそこだから」

 まだ一緒に居たい気持ちを抑えてそう伝えた。

「なんかあったらいつでもおいでね」
「いいの?」
「テオならいつでも大歓迎だよ。もちろん、何もなくてもきていいから。ね?」
「うん。シエロも、僕の部屋、来てもいいからね」

 僕の部屋は何もなくて味気ないし、シエロみたいにおもてなしもできないけれど、シエロが来てくれるならと思ってそう伝えてみた。そしたらシエロは後ろを向いてしまって、顔が見えなくなってしまった。いけないことを言ってしまっただろうか。僕の部屋になんて来たくなかったか、と思い訂正しようとしたが、シエロの顔を見たらそんな考えは消えた。

「うん、ありがとう。絶対行くね」

 そう言って僕の方を見てくれたシエロの顔は少し赤くなっていた。嬉しそうにはにかむような笑顔のシエロを見ていたら心臓がドキドキしてきて、どうして今、と不思議に思い首をかしげる。

「テオ?大丈夫?」
「っは!ごめん、大丈夫」

 シエロが心配そうに顔を覗き込んでいる。シエロのきれいな顔で視界がいっぱいになって、シエロの顔はもう何度も見ているのに、それで余計に心臓がうるさくなって、今日はなんだかおかしい。
 まだ一緒に居たいのに、早くそこから離れたい不思議な気持ちを抱えつつ、また明日とあいさつをして自分の部屋へ戻った。

 自分の部屋に入って深呼吸をする。ようやく落ち着いた心臓をなでる。
 こちらにきてまだ3日ほどしかたっていないが、あまりにも毎日が充実している。一緒に居たい人と一緒に居られて、ご飯を一緒に食べることができて。きっとそれは明日も同じ。
 エミリアが同じ学園に通うと知って不安はあるし、何か起こるかもしれないけれど、近くにシエロがいてくれると思うと、今までよりも力が湧いてくる。何が起きても大丈夫と、乗り越えられると、そう思える。
 シエロの隣は安心する。でも今日の帰り際のあれは、何だったんだろう。緊張することもなかったのに、心臓がドキドキしてうるさくなった。自分で気が付いていないだけで体の調子でも悪いのだろうか。
 念のため今日は早く寝ようとベッドに入る準備を始めた。
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