74 / 139
58
しおりを挟む
「本当に送ってかなくていいの?」
「…うん。すぐそこだから」
まだ一緒に居たい気持ちを抑えてそう伝えた。
「なんかあったらいつでもおいでね」
「いいの?」
「テオならいつでも大歓迎だよ。もちろん、何もなくてもきていいから。ね?」
「うん。シエロも、僕の部屋、来てもいいからね」
僕の部屋は何もなくて味気ないし、シエロみたいにおもてなしもできないけれど、シエロが来てくれるならと思ってそう伝えてみた。そしたらシエロは後ろを向いてしまって、顔が見えなくなってしまった。いけないことを言ってしまっただろうか。僕の部屋になんて来たくなかったか、と思い訂正しようとしたが、シエロの顔を見たらそんな考えは消えた。
「うん、ありがとう。絶対行くね」
そう言って僕の方を見てくれたシエロの顔は少し赤くなっていた。嬉しそうにはにかむような笑顔のシエロを見ていたら心臓がドキドキしてきて、どうして今、と不思議に思い首をかしげる。
「テオ?大丈夫?」
「っは!ごめん、大丈夫」
シエロが心配そうに顔を覗き込んでいる。シエロのきれいな顔で視界がいっぱいになって、シエロの顔はもう何度も見ているのに、それで余計に心臓がうるさくなって、今日はなんだかおかしい。
まだ一緒に居たいのに、早くそこから離れたい不思議な気持ちを抱えつつ、また明日とあいさつをして自分の部屋へ戻った。
自分の部屋に入って深呼吸をする。ようやく落ち着いた心臓をなでる。
こちらにきてまだ3日ほどしかたっていないが、あまりにも毎日が充実している。一緒に居たい人と一緒に居られて、ご飯を一緒に食べることができて。きっとそれは明日も同じ。
エミリアが同じ学園に通うと知って不安はあるし、何か起こるかもしれないけれど、近くにシエロがいてくれると思うと、今までよりも力が湧いてくる。何が起きても大丈夫と、乗り越えられると、そう思える。
シエロの隣は安心する。でも今日の帰り際のあれは、何だったんだろう。緊張することもなかったのに、心臓がドキドキしてうるさくなった。自分で気が付いていないだけで体の調子でも悪いのだろうか。
念のため今日は早く寝ようとベッドに入る準備を始めた。
「…うん。すぐそこだから」
まだ一緒に居たい気持ちを抑えてそう伝えた。
「なんかあったらいつでもおいでね」
「いいの?」
「テオならいつでも大歓迎だよ。もちろん、何もなくてもきていいから。ね?」
「うん。シエロも、僕の部屋、来てもいいからね」
僕の部屋は何もなくて味気ないし、シエロみたいにおもてなしもできないけれど、シエロが来てくれるならと思ってそう伝えてみた。そしたらシエロは後ろを向いてしまって、顔が見えなくなってしまった。いけないことを言ってしまっただろうか。僕の部屋になんて来たくなかったか、と思い訂正しようとしたが、シエロの顔を見たらそんな考えは消えた。
「うん、ありがとう。絶対行くね」
そう言って僕の方を見てくれたシエロの顔は少し赤くなっていた。嬉しそうにはにかむような笑顔のシエロを見ていたら心臓がドキドキしてきて、どうして今、と不思議に思い首をかしげる。
「テオ?大丈夫?」
「っは!ごめん、大丈夫」
シエロが心配そうに顔を覗き込んでいる。シエロのきれいな顔で視界がいっぱいになって、シエロの顔はもう何度も見ているのに、それで余計に心臓がうるさくなって、今日はなんだかおかしい。
まだ一緒に居たいのに、早くそこから離れたい不思議な気持ちを抱えつつ、また明日とあいさつをして自分の部屋へ戻った。
自分の部屋に入って深呼吸をする。ようやく落ち着いた心臓をなでる。
こちらにきてまだ3日ほどしかたっていないが、あまりにも毎日が充実している。一緒に居たい人と一緒に居られて、ご飯を一緒に食べることができて。きっとそれは明日も同じ。
エミリアが同じ学園に通うと知って不安はあるし、何か起こるかもしれないけれど、近くにシエロがいてくれると思うと、今までよりも力が湧いてくる。何が起きても大丈夫と、乗り越えられると、そう思える。
シエロの隣は安心する。でも今日の帰り際のあれは、何だったんだろう。緊張することもなかったのに、心臓がドキドキしてうるさくなった。自分で気が付いていないだけで体の調子でも悪いのだろうか。
念のため今日は早く寝ようとベッドに入る準備を始めた。
258
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる