愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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 授業もすべて終わり、帰りの支度をする。今日のテオを思い出すとそれをする手が早く動く。早くテオのところに行きたい。そして、休ませないといけない。

 ここのところ、テオの顔色が悪い。今日は特にひどかった。
 ずっと、何かを抱えていて、それを隠している。何があったのかテオから話してくれるのを待っていたけれど、話してくれなくて。それとなく聞いてみたけれど、やっぱり話してくれなかった。
 何かあれば、話してほしいのに。何か抱えているのであれば僕に話してほしいのに。テオの支えに、力になりたいと願っているのに、それを叶えられない。僕では力不足なのだろうか。僕には話したくない理由があるのだろうか。迷惑をかけると思っているのだろうか。何を話してくれても、何を言われても、何をされても。僕が迷惑だと思うことなんてありえない。テオにもそうやって伝えたはずだけれど、わかってくれていなかったのだろうか。
 ここまで待ってみたけれど、今朝のテオの顔を見たらもう待てない。
 どうやって聞き出そうか。どうしたら、話してくれるだろうか。無理にでもどうしたのか聞かないと、これ以上はテオの体が壊れてしまう。

「シエロ様、少しよろしいでしょうか」

 こうして僕が急いでいてもお構いなしに話しかけてくるクラスメイト。いつもみたいに当たり障りなく返答すればいいのだが、今日の僕は急いでいる。相手にかまっている暇はない。

「申し訳ないけれど、無理です」

 そう言って席を立つ。相手が何か言っているが、もう僕の耳には入ってこない。

 いつもなら、待ち合わせ場所で待っているが、今日はテオの教室に向かった。どうしても心配で、今すぐに確認したくて、足早にテオの教室に向かった。
 教室の扉のところでテオを探す。周りの生徒が僕を見ているようだけれどそんなことを気にしている暇はなかった。
 教室の後ろの方でクラスメイトと話しているテオを見つける。相手はよく話の中に出てくるルイだろう。
 二人の席に近づいていく。テオは今朝の顔色も悪かったのに、さらに悪くなっていて。やっぱり迎えに来て正解だったなと心の中でつぶやく。あと少しで二人の会話もはっきり聞こえるだろうという距離まで行くと、テオがちょうどカバンを持って立ち上がった。
 あ、まずい、と感じる前に体が動いて、瞬時にテオのところまで行く。そうして到着したとき、テオの体が僕の体に吸い寄せられるように倒れてきた。

「テオっ」

 そう焦って声をかけたけれど反応はなく、顔は真っ白。でも、テオからは規則正しい呼吸音が聞こえてきて、まるで眠っているみたいだった。

「シエロ殿下」
「…保健室に連れて行くね」

 近くにいたルイへそう伝えて、テオを抱きかかえる。そうするとより一層近くでテオの呼吸と心臓の音が聞こえてきて、ようやく息ができた気がした。テオが倒れたことに驚いて、心臓が止まるかと思った。
 
 テオは、これまでたくさんのことを一人で抱えてきた。でも、今は僕が隣にいる。だから、僕にもそれを、つらさを、分けてはくれないだろうか。
 テオが目を覚ましたら、話を聞こう。そして、テオはたくさん頑張ったと、もう休んでいいんだよと、そう伝えよう。
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