愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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「おい、テオ。大丈夫か?」
「…ん?何が?」
「何がって…。お前、顔色悪すぎ」

 ルイとも、もうすっかり仲良しだ。誰かとこんな関係になれると思っていなかったから、これも僕にとって、嬉しいことの一つ。

 ルイにそう言われて、朝のシエロを思い出す。
 もうすっかり習慣化した一緒に食べる朝ごはん。シエロと一緒に食べるようになってから少しずつ増えていた食事の量も、上手に眠れなくなってから元に戻ってきてしまった。もしかしたら、それ以下かもしれない。そのことにシエロも気づいていて、いつも心配そうに僕を見ている。それに今日は、今のルイみたいに、いつもより顔色が悪いといつも以上に心配そうにしていたけれど、僕はそれに大丈夫と返した。

 シエロは無理に何があったか聞き出すことはしなかった。何気なく聞かれたこともあったけれど、僕が言わないとわかるとその話題は出さなくなった。
 僕も言おうと思った。言おうとした。でも、言えなかった。
 こんなに毎日楽しいのに。毎日嬉しいことばかりなのに。今までの毎日の夢をみて、今までの毎日を思い出して、つらくなっている。それを、知られたくなかった。シエロが知ったら、どんな気持ちになるだろうか。今の毎日を、僕が楽しくないと思っていると思われたら。そう考えたら、喉が詰まったみたいになって、言葉が出てこなかった。まるで前の僕に戻ってしまったみたいだった。
 それからも、ずっと変わらずシエロは心配そうにしていて、僕はそんなシエロを見たくないけど、言えなくて。僕はシエロのことも、自分のことにも気づかないふりをしていた。

「大丈夫だよ。なんでもないから」
「…はぁ。シエロ殿下は?なんも言ってこないわけ?」
「…ルイと同じこと、言ってた」
「…お前は意外と頑固なとこがあるからな…。休めって言っても休まないだろうけど、もしつらくなったらちゃんと言えよ」
「うん、ありがとう」

 シエロ殿下呼んできてやるよ、なんて、冗談なのかわからないけれどルイがそう言う。ルイなら本当に呼んできそうだな、なんて少しはっきりしない頭で考えていた。


 
 あまり機能しない頭を回転させて、なんとかその日の授業をすべて終える。たくさん使ったからか、くらくらする頭を無視して帰りの支度を始める。

「今日もシエロ殿下だろ?」
「うん」
「…あんまり無理するなよ」
「…うん」

 返事するのも億劫に感じるが、気のせいだと言い聞かせて、何とか持ちこたえる。

 シエロの仕事の手伝いを始めたが、僕が眠れなくなったころからシエロは手伝わせてくれなくなった。でも、シエロの側を離れたくなくて、一緒に居たくて。シエロのところに行っては、側で勉強をして、その後にご飯を一緒に食べている。するべきこともしていないのに、と思ったが、シエロに今は何も気にせず食べてと言われて、その顔があまりにも真剣で、それに従うほかなかった。
 前より、シエロの側を離れたくない気持ちが強くて、なるべく長く一緒に居たくて。それでも、自分の部屋に戻らなきゃいけない時間は来てしまう。それが嫌で。
 そう思っていると、シエロは僕の頭をなでてくれて、それにほっとして。そうして、シエロに明日ね、と言って自分の部屋に帰る。それが、ここ最近の日課。

 ―早く、シエロに会いたいな。

 カバンをもって席を立つ。その動作に、めまいがして、部屋がぐるぐる回っている気がして。
 ルイにさようならの挨拶をして、早く、シエロのところに行きたいのに。

「―おい、テオっ」

 その焦ったようなルイの声を最後に僕の意識は途切れた。
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