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しおりを挟む「…ん、ふぁぁ」
「…ん…テオ?…おはよう」
「ぅん……はよう」
あれ以来、シエロの部屋にいる時間が増えた、というより、自分の部屋にいる時間がほとんどなくなった。
もう一切怖い夢を見ないわけではない。今でも見ることはあるけれど、起きて、隣にシエロがいるとわかると心が落ち着く。それに、不安で仕方なくても、シエロが僕を安心で包んでくれる。背中をなでられるとすごく安心して、心がポカポカして。シエロの体温と、心臓の音が心地よくて、気が付くと僕も眠りについている。
そんなわけで僕の寝不足は解消されたけれど、それからもこの生活が変わることはなかった。僕もこのままがよかったし、シエロも何も言わなくて、それに甘えている。
朝、シエロの隣で目が覚めて、顔を合わせて朝の挨拶をする。そして一緒に朝の支度をして、一緒にご飯を食べて。学校が終わったら同じ部屋に帰って夕飯を食べて一緒に寝る。そんな生活が幸せでないわけがない。そんな毎日が過ごせて嬉しくないわけがない。
僕はシエロの寝起きの姿を見るのが好きだ。なんだか、僕だけの特権なんだって思うから。シエロの寝起きはふわふわしていて可愛い。本人に言ったら納得いっていないみたいだったけれど。
「今日は学園も休みだし、外に買い物に行こう」
「僕も一緒に行っていいの?」
「当たり前だよ。テオはどこか寄りたいところある?」
外に買い物をしに行ったことがない僕は、そう言われてもすぐに思いつかなかった。どんなお店があるのかも想像するしかなくて、頭を悩ませる。
「テオ?」
「あ、えっと…」
「どこでもいいよ」
そこでふと思い出す。こっちに来てから何かとバタバタしていたり、僕の寝不足のこととかもあったりして、ブライト先生に手紙をまだ出せていない。そもそも、書くための便箋が手元にないことに。
「あの、ブライト先生に手紙を書きたいんだけど、便箋を持っていなくて」
「それなら便箋を置いているお店に行ってみようか」
「うん」
朝ごはんを食べ終わって、それぞれ外出の支度をする。
僕は支度をするために自分の部屋に戻ることにした。シエロは少し時間がかかるかも、というので、支度が終わったら僕の部屋に来てくれることになった。
一着しかない私服に着替える。いつも制服を着ているから、それに比べるとこの服はボロボロに見えた。シエロの隣を歩くんだから、もう少しましなものを着たかったが、この服しか持っていないから、仕方がない。
楽しみな気持ちと、初めてのお出かけに少し緊張する。僕はそわそわしながら、シエロを待っていた。
「…ん…テオ?…おはよう」
「ぅん……はよう」
あれ以来、シエロの部屋にいる時間が増えた、というより、自分の部屋にいる時間がほとんどなくなった。
もう一切怖い夢を見ないわけではない。今でも見ることはあるけれど、起きて、隣にシエロがいるとわかると心が落ち着く。それに、不安で仕方なくても、シエロが僕を安心で包んでくれる。背中をなでられるとすごく安心して、心がポカポカして。シエロの体温と、心臓の音が心地よくて、気が付くと僕も眠りについている。
そんなわけで僕の寝不足は解消されたけれど、それからもこの生活が変わることはなかった。僕もこのままがよかったし、シエロも何も言わなくて、それに甘えている。
朝、シエロの隣で目が覚めて、顔を合わせて朝の挨拶をする。そして一緒に朝の支度をして、一緒にご飯を食べて。学校が終わったら同じ部屋に帰って夕飯を食べて一緒に寝る。そんな生活が幸せでないわけがない。そんな毎日が過ごせて嬉しくないわけがない。
僕はシエロの寝起きの姿を見るのが好きだ。なんだか、僕だけの特権なんだって思うから。シエロの寝起きはふわふわしていて可愛い。本人に言ったら納得いっていないみたいだったけれど。
「今日は学園も休みだし、外に買い物に行こう」
「僕も一緒に行っていいの?」
「当たり前だよ。テオはどこか寄りたいところある?」
外に買い物をしに行ったことがない僕は、そう言われてもすぐに思いつかなかった。どんなお店があるのかも想像するしかなくて、頭を悩ませる。
「テオ?」
「あ、えっと…」
「どこでもいいよ」
そこでふと思い出す。こっちに来てから何かとバタバタしていたり、僕の寝不足のこととかもあったりして、ブライト先生に手紙をまだ出せていない。そもそも、書くための便箋が手元にないことに。
「あの、ブライト先生に手紙を書きたいんだけど、便箋を持っていなくて」
「それなら便箋を置いているお店に行ってみようか」
「うん」
朝ごはんを食べ終わって、それぞれ外出の支度をする。
僕は支度をするために自分の部屋に戻ることにした。シエロは少し時間がかかるかも、というので、支度が終わったら僕の部屋に来てくれることになった。
一着しかない私服に着替える。いつも制服を着ているから、それに比べるとこの服はボロボロに見えた。シエロの隣を歩くんだから、もう少しましなものを着たかったが、この服しか持っていないから、仕方がない。
楽しみな気持ちと、初めてのお出かけに少し緊張する。僕はそわそわしながら、シエロを待っていた。
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