愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

文字の大きさ
94 / 139

78

しおりを挟む
 緊張で、足が震える。いつもの癖で目線を下げてしまいそうだ。でも、今日だけは、その癖を出すわけにはいかない。どれだけ緊張しても、怖くても、顔を上げろ。今日会う人は国王と王妃であると同時に、シエロの両親だ。そんな二人に、失礼なことはしたくない。きちんと顔を合わせて、話したい。うるさい心臓に落ち着けと言い聞かせて、二人のところまで歩みを進めた。

 部屋の中は、僕とシエロと、国王と王妃の4人だけだった。

「お久しぶりです、陛下」
「あぁ、久しぶりだな」
「本日は紹介したい方がおります」
「お初に、お目にかかります、テオ・アナベルと申し、ます」

 自己紹介をして、頭を下げる。少し言葉に引っかかってしまったが、きちんと言えたことに安堵する。

「顔を上げなさい。君は、この国に留学へきていると聞いたが、この国はどうだ」
「とても、素敵な国です。人も、街も、いいところばかりです。この国に留学できたこと、とても誇りに思います」
「……そうか。そう言ってもらえること、国王として嬉しく思う。これからも勉学に励んでくれ」
「はい」

 国王も、王妃も、さすが国の上に立つ人、といった迫力がある人だったが、怖いとは感じなくて、最初の緊張も少し和らいだ。やはり、シエロと血がつながっているからだろうか。
 
 国王は一つ咳払いをすると真剣な顔をして話し始めた。

「ここからは、国王ではなく、シエロの父として聞きたいことがある」
「は、はい」

 その一言で部屋の空気が変わったのを肌で感じた。

「シエロとの関係、君のこと、シエロから聞かせてもらった」
「勝手にごめんね。先に伝えておいた方がいいと思って」
「大丈夫、です」
「二人とも知っているし、陛下の時間は終わりのようだから、もう僕と普段通りの話し方で話していいんだよ?」
「あ、そ、そう、なの?」

 シエロは僕にそう言いながらさっきまでのかたい姿勢を崩して僕にそっと近づいてくれた。

「テオ君、と呼んでもいいかな」
「はい」
「では、テオ君。君に問うが……もし、シエロが王族ではなく、普通の身分の者であっても、君はシエロを好きになってくれたか?」
「王族ではなかったら、ですか?」
「父上、お言葉ですが、なぜそんなことを」
「シエロは少し静かにしていなさい。……あぁ。君を助けたのが、出会ったのが、王子ではないシエロだったら、どうだろうか?」

 シエロが王族ではなかったら。そんなこと想像もしたことがなかった。
 そもそも、シエロが王子だってことを意識することもそんなにない。人に僕とのことがどう思われるかとか、仕事のお手伝いをしているときとか、そういえばそうだって思い出すことはあるけれど、僕の中で、シエロはシエロだ。王子という身分を取ってもそれは、シエロであることは変わらないから。そんなの答えは一つに決まっている。

「僕は、これまで、つらいことがたくさんありました。きっと、シエロがいなかったら、僕はこの年齢まで生きていない、と思います」
「……テオ」

 僕の名前を呼んでくれる彼を見ると、今にも泣きだしそうな顔をしていた。
 今の僕は、シエロに出会えたから、ここまで生きれた。今も、生きている。だから大丈夫だと伝えたくて、思わずシエロの手を握った。

「……でも僕は、その今までがなければ、シエロと出会えなかったとも思います。シエロと出会っていなければ、人を好きになる気持ちを、恋を、知ることはできませんでした。シエロが王子だとか、そんなことは関係ありません。僕の中では、第二王子がシエロなのではなく、シエロが第二王子だって感じで……うまく言葉にできず、すみません」
「……つまりは……よければ、君の言葉で直接聞かせてくれないか」
「はい。……好きに、恋に落ちます。シエロがどんな身分でも、シエロがシエロである限り」

 たくさん言葉を発して、言わなくてもいいことまで口から出ていた気もするが、伝えたいことはきっと伝わっただろう。
 言い終わって、急に恥ずかしくなって、ずっとしないように気を張っていたのに、顔を隠すように俯いてしまった。

「……そうか。すまない、変なことを聞いて」
「い、いえ……って、うわぁ」
「テオ、僕も大好きだよ」

 急にシエロが僕に抱き着いてきてそんなことを言う。僕はきっと、驚きと恥ずかしさでさらに顔が赤くなっているだろう。

「あ、あの、シエロ、二人の前、だから」
「はは、ぞっこん、だな。……シエロ。よく想い人を守った。さすが我が息子だ」
「……はい。ありがとうございます」

 そう言って笑う陛下は、なんだかシエロに似ていて、やっぱり親子だなと感動した。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました

藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。 ================= 高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。 ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。 そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。 冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで…… 優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

処理中です...