愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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「……もういいかしら」

 なんて、一人温かい気持ちになっていると、ずっとしゃべらず黙っていた王妃がそう言って立ち上がった。
 前髪でよく顔が見えない。何か気に障ることをしてしまっただろうか。怒っているのだろうか。どうしよう、何かしてしまったかと気持ちが焦る。

 歩みを進めた王妃が僕の目の前に立つ。
 とにかく、気に障ることをしてしまったのであれば謝らなければと口を開いた。

「あ、あの、申し訳―っ」
「やっぱり、シエロの言う通り、すごくかわいらしい子だわ!」

 僕はシエロの腕の中から引っ張り出され、王妃の胸の中に引きずり込まれた。
 何がどうなっている。僕は今、王妃に、シエロの母親に抱きしめられているのか。

「あ、あのっ、えと……っ!」
「可愛い……。でも少し細いわね、心配だわ……。そうだ!一緒にお菓子でも食べましょう?甘いものは好きかしら?」
「え、えと……!」
「紅茶は飲めるかしら?」
「母上。テオが困っています。離してください」
「あら、ごめんなさい」
「い、いえ……」

 シエロの一言で僕は解放された。
 
 母親、というものに、こんなに抱きしめられたことなんて、僕はなかった。確かに、苦しかったし、驚いたけれど、それは、温かくて、洗い立てのシーツの布団の中、みたいな安心感があって。シエロとはまた違ったそれは、僕の心を包んでくれるようで。

「シエロもようやく私たちに顔を見せてくれたし、この後の公務も今日はお休み。ソラナも呼んでみんなでお茶にしましょう」
「あぁ、そうだな。久しぶりにゆっくりしよう」
「えぇ。テオ君は何か食べられないものとかあるかしら?」
「テオは、苦いものが苦手で、甘い物が好きですよ。ね、テオ。……テオ?」

 その会話も、温かくて、優しくて。これが家族なんだなって、思って。この中に、今から僕も入れてもらえるんだと思うとすごく嬉しくて、幸せだって気持ちがあふれて。

「……っ、うん、す、き」
「―っ、テオ、おいで」

 シエロが腕を広げて僕を呼ぶ。僕はその中に飛び込んだ。

「ね、二人なら大丈夫だよって、言ったでしょ?」
「うん……っ、……ふっ、うぅ、うん……っ……し、えろ」
「うん?」
「あ、りがとう……っ」
「……こちらこそ、僕と出会ってくれて、ありがとう」

 その後、落ち着いた僕はみんなと一緒にお菓子を食べた。どれもおいしくて、ほっぺたが落ちそうだっだった。隣にいるシエロも幸せそうな顔をしていて、他のみんなも楽しそうな顔をしていて。僕もその中にいるんだって、それがすごく嬉しくて。その幸せをかみしめた。
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