愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

文字の大きさ
104 / 139

88

しおりを挟む
 その次の日、僕は腰が痛くて立ち上がれなかった。シエロが申し訳ない顔をしながら謝ってきたけれど、その痛みは、あのすごく幸せな時間が夢ではなく現実だったと思わせてくれるもので、その時間のことを思い出すことができるものだったから嬉しかった。
 でもそのことは伝えずに、シエロに今日一日は一緒に寝ていようと提案すると、それを叶えてくれた。少し意地悪をしてしまったかな、なんて思ったけれど、その時間もすごく幸せで、シエロも嬉しそうにしていたから、良かっただろうと結論付けた。
 そうして、残りの数日も穏やかな時間を過ごして、僕たちはいつもの寮へ帰り、日常に戻った。

 夏休み明け。久しぶりに会うルイはすぐに僕の指輪に気が付いてお祝いしてくれた。

「よかったな、テオ」
「うん。ありがとう」
「幸せそうで何よりだ」

 なんて言われて少し恥ずかしかった。
 公表は、僕の家の人たちにも伝えてからにしようという話になった。
 あの人たちが僕とシエロの関係を認めてくれるのか、そもそも話を聞いてくれるのかわからない。でも、きっとシエロとなら何とかなる。乗り越えられる。これは、僕が何が何でも頑張らないといけないことだから、何があっても頑張ろうと決めている。
 きっとルイは言いふらすことなんてしないだろうけれど、まだ周りに公表していないから誰にも言わないでほしいと一応伝えておいた。

 こうして、僕はまた勉学に励む日々が始まった。僕がこの学園で過ごせるのも、あと半年になっていた。

 この生活が終わってほしくないと思っても、変わらず日々は過ぎていく。
 留学が終わって、元の生活に戻っても、それに耐えればまたシエロと過ごせる毎日が戻ってくるから。これから耐えなければいけない時間は、僕が今まで我慢してきた時間に比べれば一瞬だろうから。だからきっと大丈夫。不安な気持ちになっていても仕方ないと、僕はそれに気が付かないふりをして毎日を過ごしていた。

「テオ。お昼休みにごめんね」
「……シエロ殿下。どうされたのですか?」

 お昼休み。普段は僕の教室にこないシエロが扉の前に立っていて、僕は側に駆け寄った。

「今日なんだけど、少し用事があるから、僕の部屋に先に行っててほしいんだ。これ、鍵」
「……用事、ですか?」
「ごめんね」

 今日は一緒に帰れない寂しさに、僕は周りに人がいることも気にせず、感情を顔に出してしまった。
 シエロはそれに気が付いて僕の耳の近くまで顔を寄せてささやくように言った。

「……そんなに寂しそうな顔、しないで。……キス、したくなっちゃうから……」

 それに今度は顔が赤くなるのがわかる。
 僕はこの状況をいいことに、僕も耳元でシエロにささやいた。

「夕飯の時間には帰ってくる?」
「もちろん」

 誰にも聞こえないくらい小さな声でする会話に、なんだか楽しくなって笑ってしまう。でも、人の目もあるしこの辺でやめておかないといけないと、シエロから離れた。

「お待ちしていますね」
「うん。もう夕方は寒いし、気を付けて帰ってね」

 そう言うとシエロは自分のクラスへ帰っていった。
 周りの視線が痛いがもう慣れた。最近では、シエロとの仲も噂になっているらしい。ルイがそう言っていた。僕に直接言ってくる人はこの間の令嬢以来、誰もいない。みんな噂するだけだ。
 周りにどんな風に言われているか知らないが、僕はあの時、シエロが僕を信じていると言葉にしてくれて、もうそれだけでいいやって思うようになった。誰に疑われても、いやなことを言われて、噂されても、シエロが僕のことを信じてくれていれば、それだけでいい。

「テオ、昼行かねーと、時間なくなる」
「うん。待たせてごめんね。行こうか」

 僕はシエロから受け取った鍵をポケットにしまい、ルイと昼食を取るため食堂へ向かった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。  2026/01/09 加筆修正終了

処理中です...