愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

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「解毒薬は打ってある」

　保健室に到着して、シエロをベッドへ寝かせると保健室の先生と一緒に医者が入ってきた。その医者がシエロのことを診てくれて、おそらく毒はソラナ殿下の投与してくれた解毒薬で対処できているはずだと、明後日には目を覚ますだろと言う。それにソラナ殿下が言った。

「とりあえずシエロは家に帰すが……」
「ご一緒させていただきます」
「頼む」

　容態に変化があったときにすぐに対応できるよう、一緒に来てくれるという話になったようだ。そのやり取りを僕はぼうっとしたまま聞いていた。
　シエロの血の気が引いた顔を見て、無意識に手を伸ばす。僕の指先に触れたシエロの手はすごく冷たくて、それが怖くて、僕の体温を分けるように手を強く握った。

「王子が毒を盛られたと知られれば大騒ぎになるだろう。こちらから連絡があるまで生徒たちにこのことは公言しないように」
「はい。承知しました」
「他の先生方への連絡も頼む」
「お任せください」
「感謝する」

　ソラナ殿下は保健室の先生にそう言うともう一度シエロをおぶろうとして、シエロを持ち上げる。
　引っ張られるシエロを見ていたら、そのままどこかへ行ってしまうんじゃないかって、もう会えなくなるのではないかって、そんな気持ちになって、だめだった。

「……って……まって。……ぃかないで……」

　そんな言葉が口から出てきて、それを僕は他人事のように聞いていた。

「テオも来い」
「……ぇ」
「シエロも、その方がいいと思っているだろうからな。それに、テオ以外の誰がこいつの側にいてやるんだ」

　その言葉に小さくうなずいて、僕はまた、二人について行った。