愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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「……ぇ……し、しえろ?」

 とっさに出た声はすごく小さくて、震えていた。

「――っつ!!シエロ!!!」

 大きな声で呼んでもシエロからいつもみたいな返事は聞こえてこない。
 急いで駆け寄って体を揺らしてみても現状は変わらない。シエロは言葉にならない声を出して、苦しそうに息をして、もがいている。
 突然の出来事に頭が真っ白になるが、とにかくシエロを助けないと、それだけを考えて立ち上がった。

「ぁ……だ、誰か……っ」

 助けを呼ぼう。僕だけでは何もできない。
 とにかく急げ。早く、早く。
 僕は部屋から出ようと、扉に向かったが、その扉を自分で開くことはなかった。

「大丈夫だ。後は任せろ」

 ソラナ殿下が部屋に入ってきたのだ。

「ソラナ殿下っ。シエロが……!」
「わかっている」

 冷静に言うソラナ殿下は、シエロの様子を確認して、何か薬を打った。しばらくするとシエロは動かなくなって、苦しい音も聞こえなくなった。

「とりあえず保健室に連れて行き、医者を待つ。テオも一緒に来い」
「は、はいっ」

 二人の後ろをついていく。
 シエロは、身体をだらんとさせてソラナ殿下に背負われている。それに、気を失っているということがまざまざとわかって、怖くなる。

 僕はあの時を思い返す。シエロは、あの時、紅茶を一口飲んで、僕と話して、クッキーを食べて。僕にこのお菓子を食べてはだめだと言った。そして、倒れた。
 そこまで思い出して、一つの可能性が僕の頭に浮かんだ。

 ――もしかして、毒、が入っていた?

 身体から血の気が引いていく。
 シエロは毒の入ったお菓子を食べてしまったんだ。あれは人からもらったものだと言っていた。誰からもらったのか、ちゃんと聞いておくんだったと、今更後悔しても遅い。
 毒はどんな効果があるんだろう。どうしてシエロに毒入りのお菓子なんて。このまま、シエロが目覚めなかったらどうしよう。このまま、シエロがーー。

「テオ。大丈夫だから落ち着け」
「……はっ、はっ……あ……」
「シエロは大丈夫だ。お前は、シエロのことだけ信じていろ」

 いつの間にか上がっていた呼吸を一生懸命整える。今、怖いのは、苦しいのはシエロだから。僕がこんなでどうする。
 とにかく僕はソラナ殿下の言葉に返事をして、必死に保健室までの道を歩いた。
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