愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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 僕の大好きな人の手の感触がする。僕に安心と、ドキドキをくれる手。いつも僕をなでて、抱きしめて、手をつないでくれる、僕よりも大きい手。昨日までは冷たくて、熱くて。いつも握り返してくれるその手は、力が入っていなくて。それが悲しくて、寂しくて、怖かった。その手が、今、僕の頭をなでて、髪をサラサラと触っている。その感覚に、意識が浮上した。

「……ん」
「……テオ?起きた?おはよう」

 そのいつもの声に、起きたばかりで働かない頭でおはようと返す。

「ごめんね、心配かけちゃって……」

 その言葉に、意識を引き上げられる。
 目の前に、目を開いているシエロが、ベッドの上に座っている。昨日までの苦しそうな姿はなく、いつも通りの、シエロが。

「……シエロ?」
「うん」

 名前を呼ぶと、反応してくれる。

「……キス、して」

 そう言うと、僕の唇に柔らかくて温かい感触がする。

「……好き」
「うん。僕も、大好き」

 僕の気持ちを伝えると、同じように、気持ちを返してくれる。

 シエロが、目を覚ましたんだ。それら全てで、それを確認出来て。
 すごく、心配だった。シエロのことは信じてる。ソラナ殿下も、王妃も、シエロを信じろって言ってくれたし、僕の中でシエロを信じることは揺るがない。お医者さんも目を覚ますって言っていた。でも、心配だった。このまま目を覚まさなかったらどうしよう。このまま、僕の声に答えないままだったらどうしよう。このまま……ってずっと怖かった。

「――ぁ……うあぁぁぁっ」
「……っ」
「……っつ……あ……かった……よかったっ……!」
「ごめん、ごめんね」

 僕は声を上げて泣いた。今までの、恐怖と不安をすべて流すように。

「よ……かった……っ」

 そう言って泣く僕の手を握てくれて、その温かさにまた安心して、余計に涙が出て、止まらない。

「……ごめんね。ごめん、心配かけて」
「っ……すごい、怖かった……ひっく……不安、だったぁ……っ」
「うん……ごめん」

 シエロはずっと謝って、僕の背中をなでていた。

「……ずっと、側にいてくれたの?」
「うん……っ……」
「そっか……ありがとう」
「うっ……うんっ」
「テオ、もしかして、僕の名前、たくさん呼んでくれた?」
「……んっ、たくさん、よんだっ……っ」
「うん、聞こえてたよ……ありがとう」
「ん……よかった……っ」
「たくさん心配させて、不安にさせて、悲しくさせて、ごめんね」
「……んっ……っ……いいよ」

 そう話しながら、僕の次から次へと流れてくる涙をシエロが拭ってくれる。その指先にまた安心して、涙が止まることはなくて。
 それでも、シエロは優しく笑って、ずっと拭ってくれた。
 そして、また口づけをして、僕の目を見てシエロは言った。

「テオ……愛してるよ」
「……んっ……うんっ……僕も、愛してるっ」

 その言葉に僕はたまらなくなって、目の前の身体に抱き着いた。そこから返ってくる力にまた余計に涙が出てきて、僕の涙が止まる様子はなかった。
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