愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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 学園長のところへ4人で向かい、話を聞いた。
 学園長としては、このまま勉強を続けてほしいが、今回の事件はこの国の王家が絡んでいて、その容疑を噂であるとしてもかけられている生徒をこのまま受け入れているわけにはいかないこと。その生徒と同じ家の者もこのまま何もせずに学園に置いておくわけにはいかないこと。それらを踏まえて、一度自国へ帰るようにとのことだった。今回の件が落ち着けばいつでも戻ってきてほしいと話してくれた。

 部屋から退出し、廊下で立ち尽くす。
 自国に、あの家に帰れと言われた。
 留学はあと数か月で、それは片手で足りるほど。今回の件が落ち着けば、と学園長は言っていていたが、それは犯人が分かれば落ち着いたことになって戻ってきてもいいのか、そもそもそれがどのくらいかかるのか、わからない。
 先ほどソラナ殿下がわかってきている、と言っていたが、それがどのくらいなのかもわからない。それに、僕が思っている犯人も本当かわからない。あくまで憶測の話だから。
 そうなると、もう僕はこの学園には戻ってこれないかもしれない。

 何やらソラナ殿下とエミリアが話しているようだが、それも耳に入れずにそう考えていると、僕の手が何かに包まれる。その温かさの先を見ると、シエロが変わらずそこにいて、それだけでほっとして大丈夫だって思えるんだから、僕は案外、簡単な人間なのかもしれない。

「とにかく、エミリア嬢とテオは自分の国に帰国すること。それに私たちも同行させてもらう。アナベル伯爵に話さないといけないことがあるからな」
「……やはり、犯人は……そうなると、この男とシエロ殿下を一緒にいさせるのはいささか問題がーー」
「それについては何も問題はない。こちらの警備も万全だ。本当にテオが犯人だとするのなら、近くにいてもらった方が安全、とも言える。それとも、私たちに異議でもあるというのか?」
「…………いえ、出すぎた真似をいたしました。申し訳ありません」

 僕はそれにすぐに返事ができなくて黙ったままでいると、シエロが僕にこっそり話してくれた。

「大丈夫だよ、テオ。テオは僕とずっと一緒」
「……本当?」
「うん。国に帰るときも、そこにいる間も、ずっとね。あの家に一人で行かせるなんて僕が許さないから」
「……ん。シエロ、ありがとう」

 こっそりつながる手に力を少し込めて、そう伝えると、シエロが嬉しそうに目を細めた。

「今日は二人とも私たちの家で預かる。明日、出発しよう」

 そうして、僕たちは4人でシエロたちの家に行くことになった。
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