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満月とライオンと王女
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草原の草の根の擦れ合う、音が聞こえる。満月の優しい光が大地に降り注ぐ。
僕の前には。焚き火の火が、この大地において唯一の異端者であるがごとく、強い光を放つ。動物達はこの異端の炎を恐れ近づいては来ない。
僕の太ももには女王が眠る。暑い毛布にくるまり、まるで芋虫を思わせる。横たわる女王の前には、全体的に青く中心に赤い星がプリントされている、さっきまで、暖かい羊の乳が入っていたカップが置いてある。そのデザインはどこかの共産圏を思わせる。しかし、社会主義も資本主義も遥か遠い話だ。この永遠世続くように思える、緑の大地にはイデオロギーは必要ない。
女王の顔が焚き火の光で照らされる。美しい横顔だ。おでこが広く、鼻が高い、そしてどこまでも白い、白人の肌よりも遥かに。彼女の顔がはアジアの誇りといっても過言でない。まさに女王の名に恥じない顔だ。例えどこの国の王族でなくとも、領土拡大を続ける、蛮族の姫でなくとも、僕にとって彼女は女王だ。僕は彼女に全てを捧げている。遠い北の極寒の大地で、出会った頃から、それは変わらない。僕は大変、光栄に感じる。今僕の膝の上で女王が眠っていることを。
ふと、視線を感じると僕の前方、焚き火から十メートルほど先に獣がいた。よくみると、それは立派な毛を生やした、オスのライオンであった。僕は銃にてをかけようとしたが、不意にライオンと目があってしまった。僕はライオンと強く見つめあった。僕は女王とここまで強く目と目で見つめあったことはなかった。それはあまりに不躾に思えたからだ。
ライオンと見つめ合ううちに、ライオンはテレパシーを使って話しかけてきた。
彼は言った 「馬鹿者がいつまで、その女に固執するのだ。貴様がどんなに願ったところで、その女はてに入らない、今、お前の太ももの上に居るのは、お前の妄想が作り出したものだ。本物は今頃、どこかの大都市で一人か二人か、それとも三人の子供達と暮らしているだろう。いつまで、お前はその女に苦しめられるのだ!お前はその女のために、どれだけの時間を無駄にした!?どれだけのチャンスを無駄にした!?いくらだって、他の方法で幸せになれただろうに」
うるさいライオンだ。
ライオンの話は終わらない、彼が話している間、僕は願い続けた。早く女王の安らかな寝顔を見つめたいと。
・患者Aについて
「また彼は例の女の夢をみたらしいわ」
白衣を着た髪の長い、女医がカルテを机に投げた。
コーヒーを飲みながら、椅子に座っていた男性医がカルテを手に取った
「患者A、27歳、身長165センチ、強い妄想癖ありて社会生活を送るのは難しいか」
「で、その例の女っていうのは、誰なんだい?」
女医が答える。
「家族の話では、彼が海外で生活しているときに会った女らしいわ、でも実際に会ったのは二三回だそうよ」
女医はそういいながら、コーヒーブレイカーに近づいていった。
「馬鹿よ、どうかしてる」
男性医が答えた。
「どうかしている人たちのための、わが病院だよ。投げ出さないでくれ」
「わかっているわ、でもかわいそうで、彼も、その家族も」
男性医はコーヒーカップをもったまま、椅子を回転させ、窓の外を見た。窓の外には、紅葉も終わり、たんに葉のない骸骨のような木と白い空が見えた。風の音がする。外はそうとう、寒いようだ。彼は呟いた「忘れじの人か」
そして、たっぷりのミルクと砂糖の入った、コーヒーをすすった。カップの色は青だった。
僕の前には。焚き火の火が、この大地において唯一の異端者であるがごとく、強い光を放つ。動物達はこの異端の炎を恐れ近づいては来ない。
僕の太ももには女王が眠る。暑い毛布にくるまり、まるで芋虫を思わせる。横たわる女王の前には、全体的に青く中心に赤い星がプリントされている、さっきまで、暖かい羊の乳が入っていたカップが置いてある。そのデザインはどこかの共産圏を思わせる。しかし、社会主義も資本主義も遥か遠い話だ。この永遠世続くように思える、緑の大地にはイデオロギーは必要ない。
女王の顔が焚き火の光で照らされる。美しい横顔だ。おでこが広く、鼻が高い、そしてどこまでも白い、白人の肌よりも遥かに。彼女の顔がはアジアの誇りといっても過言でない。まさに女王の名に恥じない顔だ。例えどこの国の王族でなくとも、領土拡大を続ける、蛮族の姫でなくとも、僕にとって彼女は女王だ。僕は彼女に全てを捧げている。遠い北の極寒の大地で、出会った頃から、それは変わらない。僕は大変、光栄に感じる。今僕の膝の上で女王が眠っていることを。
ふと、視線を感じると僕の前方、焚き火から十メートルほど先に獣がいた。よくみると、それは立派な毛を生やした、オスのライオンであった。僕は銃にてをかけようとしたが、不意にライオンと目があってしまった。僕はライオンと強く見つめあった。僕は女王とここまで強く目と目で見つめあったことはなかった。それはあまりに不躾に思えたからだ。
ライオンと見つめ合ううちに、ライオンはテレパシーを使って話しかけてきた。
彼は言った 「馬鹿者がいつまで、その女に固執するのだ。貴様がどんなに願ったところで、その女はてに入らない、今、お前の太ももの上に居るのは、お前の妄想が作り出したものだ。本物は今頃、どこかの大都市で一人か二人か、それとも三人の子供達と暮らしているだろう。いつまで、お前はその女に苦しめられるのだ!お前はその女のために、どれだけの時間を無駄にした!?どれだけのチャンスを無駄にした!?いくらだって、他の方法で幸せになれただろうに」
うるさいライオンだ。
ライオンの話は終わらない、彼が話している間、僕は願い続けた。早く女王の安らかな寝顔を見つめたいと。
・患者Aについて
「また彼は例の女の夢をみたらしいわ」
白衣を着た髪の長い、女医がカルテを机に投げた。
コーヒーを飲みながら、椅子に座っていた男性医がカルテを手に取った
「患者A、27歳、身長165センチ、強い妄想癖ありて社会生活を送るのは難しいか」
「で、その例の女っていうのは、誰なんだい?」
女医が答える。
「家族の話では、彼が海外で生活しているときに会った女らしいわ、でも実際に会ったのは二三回だそうよ」
女医はそういいながら、コーヒーブレイカーに近づいていった。
「馬鹿よ、どうかしてる」
男性医が答えた。
「どうかしている人たちのための、わが病院だよ。投げ出さないでくれ」
「わかっているわ、でもかわいそうで、彼も、その家族も」
男性医はコーヒーカップをもったまま、椅子を回転させ、窓の外を見た。窓の外には、紅葉も終わり、たんに葉のない骸骨のような木と白い空が見えた。風の音がする。外はそうとう、寒いようだ。彼は呟いた「忘れじの人か」
そして、たっぷりのミルクと砂糖の入った、コーヒーをすすった。カップの色は青だった。
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