ムーンナイトセレナーデ

フランク太宰

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少女S

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   ライトノベルのヒロインに憧れるのは、桃源郷を探す坊さんの苦労とにているように思う。
 それは切ない旅路でありゴールの無いマラソンでもある。
  正直にいうと、私はライトノベルというものには詳しくない。
しかし、ライトノベルは列記とした文学である。堅苦しいだけの文字の世界に一石投じた事は賛辞に値いする。
 芸術は博学な人間の物でもないし、御勉強では無いのだから。
   
 話は変わり、1939年の満州の出来事になるが。私の曾祖父は
当時、満州で紡績工場を営んでいたらしい。妻子(つまり私の曾祖母と祖母)は連れていかず、日本に残したまま。はっきり言って、かって気ままで不純に過ごしていた、あの海の無い都で。
 そこで彼は終戦までの間、上海からの少女と半ば同棲をしていたらしい。
 彼女は紡績工場の中国人相手の通訳兼、曾祖父の秘書をしていた。社長と秘書の関係であるし、あの時代の日本人と上海人であるから、男の方は威張っていたのだろう。
 日本が戦争に負けたとき、立場は逆転したのだろうか?
それと、曾祖父は三年後に日本へ帰れたが、彼女の方は上海へ帰れたのだろうか?
日本人に協力したとかで、強制収容所に入れられたりしなかっただろうか?
  曾祖父の日記を見つけてからは、それがどうにも気がかりだ、もう、七十五年も経つのに。それに赤の他人の事であるのに。
 東北で地震があったとき、ボランティアにも行かず、ウクライナで内線が起こったときに、政府側の義勇軍にも志願しなかった自分には"おこがましい"感情に思う。
では、何故 、曾祖父の物語に興味を持ったかというと、件の日記帳に挟まっていた古い写真を見たからだ。
 写真には麻のスーツにハットを被った、曾祖父が何というか特徴の無い、当時らしい服装の女性に肩を掛けていた。
女性は髪を密編みにしていて、おでこが広かった。
目が大きく二重で、中国美人といった感じであった。
確実な事は分からないが、きっと彼女が社長秘書兼通訳だろう。色の無い写真は余計に創造力を沸かせる。
 だからといって、私は彼女に一目惚れしたわけでもないし、写真を見つけた瞬間、曾祖父の霊が私に乗り移て、涙が止めどなく流れ出もしなかった。
 私が彼女に感じたのは、一種の
デジャブ。
何処かで彼女を見たことが有るように思えた。
いや、私は彼女と話したことさえある、大昔。
シリアで内線が起こる前。
 要するに、他人の空似だった。古い知り合い、今は何処に居るかもわからない。
彼女とは色々とあった気もするし、何もなかった気もする、もしかしたら、存在もしていなかったのかもしれない。
 とにもかくにも、私は驚いた。曾祖父の愛人と私の知り合いが似ていることに。
    
 もし、私がライトノベルを書けるとしたら、彼女たちをモチーフに何が描けるだろうか?
少なくとも、作名は「少女S」
にするだろう。

・「少女S」
 Sはエネルギッシュな少女で高校ではバスケット部のキャプテンをしている。
身長は165㎝、足がスラッと長く、若いのに腰に首れがある、胸は成長途中であるが、将来有望、髪をいつもポニーテールにしている。
おでこの広い目鼻立ちのハッキリした顔立ちで、彼女に微笑みかけられれば、男女問わず恋の痛みを知る。
  性格は....そう、穏やかであるが、アクティブなところもある。
 完璧だ、正に美少女。

 しかし、彼女は土曜の夜になると、黒いブーツを履いて、原宿のクラブにくり出す、学校の友人には秘密だ。
  クラブでは彼女はイケテる、ラップに合わせて、躍り狂う。
左手にメンソールの煙草、右手にはイェーガーマイスターの入ったショット。
彼女は"その世界"の友人達とショットを一気にあおる。
 そして、終電のなくなった街を千鳥足で歩きながら、路地裏に入り黒人から"白い粉"を買う。
 彼女はその場で粉を鼻から吸い込む、彼女は鼻血を流しながら路地裏で倒れて、笑いながら、目の前の黒い壁を見つめる。
 彼女の目には海の無い街が映る、モノクロの。
  
 彼女は、そちらに行きたいと思う。そしてこの世界には自分は不向きであると自覚する。
  思考が、この物語の作者と似ている。
 
  しかし、まぁ、PTAが彼女の家に押し掛けることはない。
彼女も作者も作者の曾祖父も曾祖父の愛人も作者の古い知り合いも、全て存在などしないのだから。
 
 


 
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