魂喰らいの魔女

ザシガワラ

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-Chapter1- 寄る辺なき少女とロックバンド

04

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連続人間消失事件のあらましは実にシンプルかつ『不可解』だ。ロンドンの街のどこかで、誰かが生死不明で消息を絶つ。それは場所、時間、人種、性別、年齢問わず、同時多発的あるいはピンポイントに起きて、強いて条件を挙げるとするなら、その時ロンドン市街に居た者であれば観光客にだって起こりうる事象だった。
事件の性質上原因となるものは何も特定されておらず、「高度な隠蔽工作を用いる他国の諜報員の仕業だ」などと根も葉もない噂を立てる者もいた。
しかし、とあるゴシップ記事で「消失の瞬間を見た」という人物が特集されると、記事の内容が拡まるにつれてイギリスの人々はやおらに色めき立った。
記事によるとその老人はいつもの散歩コースを、いつものように、寄り道なく歩いていた。
目印である赤煉瓦の住居を曲がり、大人一人通れるような細い路地に差し掛かると、視線の先に──老人は奇妙なものを見た。
太陽が煌々と照らす炎天下、蜃気楼の見せた幻の類であったなら説明もついたのだろうが、建物の陰となるような場所ではその現象・・・・は起こりえないものだ。
老人に助けを請い、仄暗い路地をゾンビもかくやと這い寄ってくる一人の青年。
その下半身は、砂のようにぼろぼろと崩れ落ち・・・・・・・・・・・・・・、やがて上半身だけとなった身体も同様に崩れて、老人まであと数歩というところで風にさらわれてしまった。
「助けて」と縋る叫びから涙の一雫に至るまで、青年のすべては真っ白な砂か塵ともつかぬ物質に置き換わり、風の中へ消え失せた。
老人はただただ臆してそれを見守ることしか出来なかった。ほんの刹那に訪れた白昼の悪夢を前に、老人は少年のように孤独に怯えるばかりだった──

「あ・・・あははは・・・なんか逆にどんよりしちゃったね。やらかしたなぁ私」
コニーは自嘲気味に苦笑する。
テレビをつけて場を和ませようとしたことが、結果的に逆効果になったのはかなりバツが悪そうだ。
ラヴィや他のメンバーらはその失敗を責め立てようとはしなかったが、彼女の言う通り、どこか重苦しい空気が漂う雰囲気であるのは否めなかった。
ニュースは今週のスポーツ特集へと移っていた。番組進行のようにサクサクと気持ちが切り替えられればどんなに気楽だろう。見かねたラヴィが助け船を出した。
「ねぇ・・・コニーは何の楽器ををやってるの?」
「おっと、すっかり忘れてたぜ」
「はいぃぃ?一番肝心なとこでしょー!」
「お前がいきなりテレビなんかつけっから流れちまったんじゃねぇの?」
「ひっどーい!ラヴィちゃん、ノアみたいな冷血人間にだけはならないでね~?」
「だ・れ・が・冷血だコラぁ!」
「まーでも事実だからぬぅあー」
「俺の真似すんじゃねぇー!ていうかそんなに顎しゃくれてねぇー!」
どっと笑声が湧き上がった。
ラヴィをきっかけとして始まった俺たちの死ぬほどしょうもない喧嘩は、結果として場を和ませるのに成功したらしく、ラヴィは勿論、無口なキースやクールなブラッドレイでさえ思わず吹き出してしまうほどの緩いムードをもたらしていた。仏頂面のハリーに至っては、俺を指差して腹を抱えていたが、あまりにツボ過ぎたせいか腹を吊ったらしく、しばらく一人で悶え苦しんでいた。
ラヴィの放つ言葉や独特の空気感は、もしかしたら天性で場の緊張を和らげる力が備わっているのかもしれないなぁ、などとぼんやり思いつつ、俺はようやく気を取り直してコニーの紹介を始めるに至った。
「コニーはデスマーチ紅一点にしてもう一人のギタリストだ。一応、俺の音大の先輩でもある。バッキング・・・簡単に言うと曲のリズム部分を鳴らすギターをやってる」
「どうして・・・同じ楽器がふたつも?」
「私たちがやってるのはヘビィメタルってジャンルでね。分類としてはかなり激しめなやつなんだけど、そういうバンドは大抵二人以上はギターが居ないと音に重みが出なくて、面白みに欠けちゃうのよ」
「ひとつのギターじゃ・・・出来ないの?」
「出来なくはないんだけど・・・バンドとしてどんな音を鳴らしたいか?って考えた時にギターひとつじゃ選択肢がどうしても限られちゃうのよねぇ。それに、これは私の考えだけど大勢居た方が様になる気がするし・・・?」
「へー、珍しく熱く語ってんじゃん」
「これはチョー当たり前なことを、初心者にも分かりやすーく、噛み砕いて説明したまでの事よっ」
俺の茶々入れは華麗に受け流され、コニーは得意げに鼻を鳴らした。
こういうお調子者なところも大学の頃から良くも悪くも変わっていないから、俺も長いこと付き合い続けていられるのだなぁとつくづく思う。
「へいへい、今のでわかったか?ラヴィ」
「うん・・・なんとなく・・・ありがとうコニー」
「どういたしまして。んじゃ、報酬として頭なでなでまたやってもいい!?」
「う・・・」
その後、猛禽類に狩られた野兎の悲鳴がまたこだましたのは言うまでもない。
以上のような経緯で、孤独な少女も交えたささやかな仲間たちの宴は、日の出まで続いたのだった。

コニーの家を跡にした頃には時刻は六時を回っていた。朝のストリートはゴミがそこかしこに散乱していて、この街の夜の片鱗を僅かながら映し出していた。
「なぁ?ラヴィはこれからどうすんだ?」
「公園に戻ろうかな・・・でも、またあの犬が現れたらスゴく・・・こわい・・・」
木の枝の一撃でダウンこそした野犬だが、致命傷には至っていない。
餌を求めて徘徊していたのだとしたら、このまま元の公園に返すのは極めてまずい。
俺の自宅でしばらくの間というのも厳しい。いくらメジャーデビューが決まったとは言え、いたいけな少女を養えるほどの備蓄や保護者としてのノウハウなんて当然無い。
ではコニーはどうか。ラヴィをすっかり寵愛してはいるものの、自分と同様に経済的な不安はやはり残る。愛や慈悲や親切心だけでは、誰かの助けになれないことがある。
「・・・ノア?」
声にハッとして前方を見ると、いつの間にかラヴィの姿が数歩先になっていた。
思案を重ねる内に、自然と足が止まってしまっていたらしい。
「おっとすまねぇ」俺は軽く謝罪して「ここじゃなんだし、とりあえず・・・俺ん家で考えてくか?」と提案する。
「・・・行っても、いいの?」
「おう。ただし、散らかってんぜ?」
「だ、大丈夫・・・ヘーキだから」
「決まりだな」──という流れで勢い任せに自宅に招いてしまったことの愚かさを、いざ帰宅してから激しく思い知ることになった。
改めて自分の部屋を見回すと「散らかってんぜ?」なんて軽く言えるレベルではなかった。
玄関を開けて三秒で憂鬱になるなんて何の冗談だと思う。
しかし幸いな事に、俺の部屋は「汚い」というよりは「整理」が成ってないタイプの汚部屋で、足の踏み場も無いことはない。
定物定位と整理整頓がしっかりされてれば、洋服がリビングに脱ぎっぱなされていたり、引越しの時以来開封していない平積みのダンボールが通行を妨げていたりはしない。自分ひとりで暮らす分にはなんとも思わないのに、こうして客人を招いてからやっと事の重大さに気付くとは恐ろしいものだ。
俺はしばらくラヴィを玄関に待機させ、正味二分の突貫でいそいそとリビングを整理した。
それでもある程度は見栄え良く片付いたので、ようやく部屋を解放することにした。
「うわぁ・・・あれがギター・・・だよね?・・・ノアも弾いてるの?」
「俺の場合ありゃ作曲用だ。あー・・・簡単に言えば、即興で浮かんだ歌を口ずさみながら、メロディと一緒に弾くためのもんさ」
「へぇ・・・あの、机の上の・・・黒い箱は?」
「ありゃパソコン。アレでも作曲が出来る」
「すごい・・・!じゃあ、あれは?、あれも──」
ラヴィは瞳に輝きを浮かべながら、部屋中のあらゆる全てに興味と関心を向けていった。
テレビ、洗濯機、掃除機、エアコン、ポット、電灯等など、生活家電ほぼ全般に対して、演技にしては些か迫真すぎている反応を示した。現代の生活文化に対してまるで馴染みが無いらしい。
頭の片隅で、自分でも「馬鹿馬鹿しい」と思えるような可能性が芽を出す。確証と言える確証はまだ無いから、あくまで可能性だが。
もしラヴィが自身の正体についてあまり触れられたくないのであれば、やはりこのままこの家で面倒を見続けるのは限界がある。
一度考える時間が欲しかった。
部屋をひとしきり物色させると、風呂を貸してやる事にした。
水周りはかつて妹に仕込まれていた影響で日頃からよく掃除していたので、バスルームはそのまま使わせても問題ないだろう。一応、簡単に風呂の入り方も説明してやった。
「私の知ってるお風呂とは・・・全然違うんだね・・・ありがとう・・・でも・・・覗いちゃ・・・ダメだよ?」
「ははは。俺にそんな趣味はねーよ。とりあえず、服はその洗濯機に放り込んどいてくれ。着替えは・・・そうだな、俺の妹が着てたやつがあるからとりあえずそれで我慢してくれ」
「・・・うん」と言って少女は脱衣所の向こうへと消えた。
何かと心配事は多いが、ひとまずシャワーがちゃんと使えるかどうか。
ラヴィが入浴しているこの間に、俺は今後について一つの閃きを得ていた。
携帯片手にベランダへ出ると、ある番号へとかける。
季節は春と夏のあわいにあったが、この時間の冷えた空気はまだまだ体に堪えるもので、羽織る物も無く出てきてしまったことが少しだけ悔やまれた。
コール音を六回聴いた段階で、やはりこの時間では出れないかという諦めが過ぎったが、八回目のコールで「もしもし?」と電話が繋がった瞬間、数瞬ほど反応するのが遅れてしまった。時間が時間ゆえか、相手のその声はかなり怪訝の色を含んでいた。
「マデリンおばさん、久しぶり。誰だかわかるか?」
「こんな時間にかけてくる常識知らずは私の知る限りノア以外有り得ないね。元気してたかい?バンドの方はどうなんだい?」
言葉の辛辣さとは裏腹に、既におばさんの声色は家族と相対する時のものになっていた。
「さすがはおばさん、敵わねぇな。スゴく順調さ。その事も含めて、色々と相談ていうか、話したいことがあって・・・急だけど今日って会えねぇかな?」
「恋人に言われたら最高にキュンとするセリフだったんだがねぇ・・・ふ、冗談よ。良いわ、私も久々にアンタの顔を見たいと思ってたところよ」
「そっか。サンキュー。じゃあ、夕方ぐらいに呼び鈴鳴らすよ」
「気をつけて来なね、ノア。最近は物騒な世の中だ」
向こうがまず通話を切ったのを確認してからこちらも切る。
登りゆく朝日が今日は痛いぐらいに眩しい。
ニコチン切れを感じて、持っていた煙草に火をつけた。
紫煙で肺が満ちると気忙しさも落ち着く気がして、俺は自然とこれからの事を考えていた。
妹がいた頃であれば、たとえ根拠が無くとも兄妹で力を合わせればどんな困難も乗り越えていけるという自信を持てた。
それがこの上ない勇気と活力になっていたんだ。
妹を失ってバンドが支えと成り代わった自分と、ラヴィを助けてやろうとする自分とが重なると、言い様の無い違和感を覚えた。
あっちが立てばこっちが立たずで、総崩れとなってしまうのではないか?そんな漠然とした悲観がいつの間にか根付いているのだ。
今日知り合ったばかりの少女のためにここまで懊悩し助けになろうとするあたり、やはり俺はラヴィに妹の姿を視ているのは間違いない。
だからこそこの自身の不全さがどうしようもなく痛くって、そして、毒のように苦しい。でも、それでも、わかっていても、俺は──
煙草を消してリビングへと戻ると、物憂げにテーブルのコップを見つめるラヴィがいた。
どうやら問題なく風呂に入れたようだが、髪がまだ乾いていないのかバスタオルを頭に乗せている。
彼女が見つめるコップの中のオレンジペコは、まだ一口も飲まれていなかった。
「私・・・これからどうしたらいいのかな・・・?」
彼女なりに今後の生き方について悩み始めているのかもしれない。
その目はこちらを真っ直ぐに見据え、自分が向かうべき指針を示してほしいという切望を窺わせた。
「とりあえず、頭拭いてそれを飲んだら一度寝たらどうだ?俺のベッドを貸してやる。少々男臭いかもだがな」
「でも・・・ノアだって疲れてるんでしょ?・・・悪いよ」
「良いんだよ。俺って頑丈だからさ、へへへ」
「あの・・・ひとつ聞いてもいいかな・・・どうして私にここまで優しくしてくれるの・・・?」
問われた途端から、額に汗が滲みだしてきた。
まさかのどストレートが飛んでくると思っていなかった俺は完全に不意を突かれる形となり、「あー・・・そ、それなー・・・」と、わかりやすくどもってしまい、上手く言葉が紡げなかった。
ラヴィが疑問に思うのは当然だが、こうもタイムリーなところを突いてくるとは完全に想定外だ。
しかし俺の動揺や焦りは、次の一言で全て虚空へと吹っ飛んでしまった。
私が、妹さんに似ているから?・・・・・・・・・・・・・・
「な、なんだって・・・?」呼吸は乱れ、心臓の鼓動も徐々に加速し始めた。背後から突然頭を殴りつけられたような感覚と混乱「・・・どうして、それを?」
「なんだ・・・鎌をかけたつもりだったけど・・・やっぱりそうなんだね」
俺は急速に恥の感情を引きずり出された。立て続けに起こった心の機微は、未知のパニックをもたらした。
「まんまとやられたってわけか・・・やるじゃねぇか。コニーみたいだった」
「えへへ・・・」
初めて彼女の純粋な笑顔を見た気がした。悪戯っぽいその笑みは、嫌味なところが一つもない。
その笑顔をキースにも見せてやってほしいものだ。
「案外笑うとかわいいのな」
「えっ!・・・?」
仕返しのつもりで褒めてやると、その両頬に赤が差した。
するとさっきは目もくれなかった筈のコップに手を伸ばして中身をがぶ飲みし始めた。反動で頭のバスタオルは床に落ちてしまった。わかりやすいやつだなぁなんて思っていると、コップの中のオレンジペコはあっという間に空になっていた。
「うっ、けほっけほっ・・・」
「おいおい大丈夫か?一気なんてするからだぜ?」
「けほっ・・・と、ところでっ!・・・ノアの妹さんてどんな人なの?」
「優しくて気立ても良くてな。んで、お前に雰囲気がそっくりなんだ。今は遠くで暮らしてる・・・・・・・。自慢の妹さ」
あえて真実を語ろうとはしなかった。折角見ることが出来たあの笑顔を台無しにしてしまいたくなかったし、語ってしまったが最後、妹がこの世にいない現実に否応なくまた向き合わされるはめになるというのもまっぴらゴメンだ。
とどのつまり、俺はまだ妹の死を受け入れきれていなかった。

その後、ラヴィがこっくりとうたた寝をし始めたので宣言通りベッドを貸してやった。
俺は再度ベランダで煙草を一本吸って戻ると、ラヴィが寝静まっているのを確認し、ようやくやってきた睡魔に任せてテーブルに突っ伏した。時計の針が八時を回ったという記憶を最後に、俺の意識は眠りの深淵へと急速に引きずり込まれて行った──



わたしは・・・・」──それより先に続く筈だった言葉は、喉の奥底で溶けて消えていった。
力を得てから今日までの私にとって必要以上に他者と交流することははばかられた事だったし、だからこそ人が沢山いるような場所は避けて生きるように努めてきた。
誰かを信じれない訳じゃない。だが誰かを信頼するということは、その誰かとの交流は絶対に避けられない。
私が何より恐れていたのは永劫に続いていく孤独よりも、この力が暴走して誰かに害を成すという事だった。
だけど彼ら──ノアたちと出会ったことで、私の中の鉄の掟が破られようとしているのを感じる。
数百年の孤独を埋める機会を得たのなら、例え誰かを傷つけることになったって許されるのではないか?
百二十年を過ぎたあたりからとうに人としての正常な観念なんてうしなわれているのだ。バケモノがバケモノなりの幸福を追求して何がいけないというのか。
誰かに名を呼ばれるのが、話をするのが、触れられるのが、こんなにも愛おしくて、優しくて、心地いいのなら、この幸福をいつまでも享受していたい。
だから神様、どうかこの時間だけは私の我儘をちょっぴりでも許してください。
数百年の内のせめてたかが一コマくらいは、人と同じ幸福を歩むことをどうか許してください。
どうか──私に、誰も殺させないで。
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