7年の青春

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01_出会い

勧誘。

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あぁ、疲れてんのに捕まっちゃったよ。
そんな気持ちを押し殺し、さっきまで仕事場だった客席に、招かれるように座らされる。
あぁ、早く帰りたい。腹も減った。

ほんとに高校生?何年生?
さっきまお客として接していた人たちからの、滝のように溢れる質問攻め。
どうやら本当に、僕が高校生に見えなかったようだな。

そうやって話していると、そのうちの一人がこの集まりについて話してくれた。
どうやら、地元で開催している、ボランティア団体の仲間のようだ。
2年前に立ち上がった事業で、3年目のスタートを切るキックオフとやらで、事前の打ち合わせに集まっていたとのこと。

へー、ボランティアか。
人相の悪い坊主でも、ひょろひょろで頼りなさそうでも、メガネで地味な人でも、ボランティアってやるんだなぁ。
というか、ボランティア?中学の時、学校のイベントでイヤイヤ参加させられたことはあったけど、興味もへったくれもない。
まして、ボランティア精神なんてあいにく持ち合わせてもいない。
ボランティアとは無縁の世界で生きてき方わけだから、ボランティアって言われてもピンとこない。

だが、なぜか猛烈に興味が湧いた。
年齢も、おそらく社会人とか大学生とかおり混ざったこの人たちは、何でこんなに楽しそうな顔をしているんだろう。
どうしてこんなにふざけ合って、腹を抱える程に笑い合えるくらい、仲良くなったんだろう。
まして、高校生なんて年上の人や、社会人と接する機会なんて滅多にない。
この人たち、なんなんだろう。

困惑しながらも少しずつ湧き上がる、この人たちへの興味。
とりあえずさ、来週も集まるから、興味あったら顔出して見てよ。
そう言われて渡された、一枚のポスター。

ふーん、こんな団体があるんだぁ。
世間は広いもんだな、まだまだ知らないことはたくさんあるんだな。

まぁ、ちょうどバイトもないし、顔くらい出しておくか。
そう思いながら、タバコに火をつけ、自転車に跨ってバイト先を後にした。
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