7年の青春

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01_出会い

ボランティア。

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どうやら、僕が勧誘されたボランティアは、小学生を対象にした活動のようだ。
夏休みの5日間、地元を泊まりがけで、子どもたち100人と100kmの道のりを歩く、そんな活動らしい。

うげー、100km歩くってマジかいな。
年々猛暑日とか40℃超えとか騒がれてるのに、よくやるねぇ。
っていうか、100kmってさ。
まずそこからだよね、何ちゅー距離歩くわけよ。
徐に携帯の地図アプリで、100kmでいける場所を探してみる。
えー、うちからディズニーランドまで行けちゃうよ。

青少年育成事業で、子どもたちの生きる力を醸成するんだとか。
ほう、大した大義名分で活動されてることよ。
ボランティアは大学生、短大生、専門学生を中心に募集をかけてるんだとか。

総じて、めんどくさそう。
5月から本番までは毎週末研修という名目で集まるらしいし。
てか
大学生中心なんでしょ。
まだ高校生だし、一年だしさ。
ボランティア精神なんてあいにく持ち合わせてなかったんだった。

あぁ、何でめんどくさい人たちに捕まっちゃったんだろう。
無視してさらっと愛想笑いぐらい振りまいて、大人しく帰っときゃよかったよ。
なんて、どんどん考えていくうちに、やりたくない気持ちが僕の中で広がっていく。

でも、あの人たち、ずっと楽しそうに笑ってたんだよなぁ。
めんどくさいと思いながらも、出会ったあの日見た、あの人たちの顔が妙に頭から離れない。
高校生は勉強が本業だ。
毎日学校に行って、アルバイトして、友達と戯れあって、楽しい毎日を過ごしている。
それでも、あの時から感じる虚しさは、どう足掻いたって埋まるものではなかった。
日に日に広がる、心に空いたぽっかりとした小さな穴。
そこから毎日、少しずつ満たされたものが、砂時計のようにこぼれ落ちていく感覚は確かにあった。





何か、変わるのかな。
ここでこの人たちの中に飛び込んでいったら、何か日常が変わるのかな。
今感じる、こぼれ落ちていくような虚しさは、何か埋まるのかな。

そんな期待が、少しだけ心に積みがあっていく感覚を感じた。
まぁ、物は試しだ。
行ってみて、話を聞いて、違うと思えば参加しなければいいだけだ。
そもそも僕の人生になかったものだ。
なくったって変わるものじゃないし、これ以上何かを失うわけじゃない。

次の集まり、お邪魔させてください。
そうメールをして、返信がくるのは間もなかった。というより、返信ではなく、電話が来たのだった。

次の土曜日、地元にある私立大学においで。
自由に入れるから、近くのコンビニまで来たら連絡してね。
あと、夕方みんなでご飯行くだろうから、時間あったら空けておいてね。

そう伝えられて、電話を切った。
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