悪役の僕 何故か愛される

いもち

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学院編

第十二話 アレクセイ?

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夏季休業も終わり、普段通りの日常が戻ってきた。それなのに。
「ごめん、アレクセイ。今日の生徒会は行けそうにないや。」
「本当に一人で大丈夫かい?やはり、私も休んだほうが。」
僕は風邪を引いてしまった。今は少し熱っぽくて、ぼーっとする。喉も痛くて、食欲はあまりない。
同室だからアレクセイにも風邪を移したらどうしようかと思っていたら、全然元気だった。一緒に寝ているのに、どうして。体の丈夫さが違うのだろうか。
なんとか休日で体を休めて、また授業にしっかり出ないと。
それに、今日は生徒会の会議があるのに…。
「今日の会議は、一月先の学院祭の決め事確認と、案の作成をしないとなんだ。本当は僕が行かないと最終決定ができない。……でも、風邪をみんなにうつす訳にはいかないから、僕の権限を、君に渡す。だから、いいお祭りになるように、大事なことを決めてきて。」
「……わかった。食事はこの鍋の中に卵粥を作ってあるよ。保温しているから、いつでも食べてくれ。
…セイン。本当に辛ければ、呼び出しの伝書鳩を使うんだよ。魔法でできているから、すぐに私の元に連絡がつくようになっている。駆けつけるから。」
「ん、わかった。いってらっしゃい。ごめんね。」
「いってくる。」
過保護なアレクセイは枕元のテーブルに食事に水分、緊急用の伝書鳩を置いて、時間ギリギリまでそばにいてくれた。
それから名残惜しそうに部屋を出た。

一人になると、途端に寂しくなる。アレクセイと婚約を結んでからというもの、学院に入ってからも僕の周りは騒がしかった。

だから、余計に静かで、僕がこの世界に一人なのだと思い込んでしまう。
僕の咳き込む音、壁にかけられた時計が針を刻む音、枕元の伝書鳩の小さな鳴き声。
頭が痛い。一人でいると、些細な症状でも、辛くなる。お腹も減っていないから、コップに注がれた水を一口飲んで、ベッドに潜り込む。寝よう。そしたら、いつかよくなる。それに教会でだって殆ど一人だった。覚えていないけど、エルンもいてくれた。けれど、常にいたわけじゃない。僕と片時も離れずいてくれたのは、影に潜む魔法だけ。
僕一人になったから、久しぶりに影がふわふわと浮かぶ。頭を撫でて、額がひんやりする。

「やっと出てきてくれたね。…いつも声をかけても出てこなかったのに。」
「……♡」
「冷たくて、気持ちいいね。ありがとう。」
「…♡」
なんだか安心して眠くなってきた。影に撫でられながら、睡魔に負けて、目を閉じる。


……コツコツと靴音が聞こえる。
アレクセイが帰ってきたのかな。でもいつもは入ってくるなり大きな声で僕に帰宅した旨を伝えるはず。でも僕の調子が悪いから気を利かせてくれているのかな。確認したいけど、眠たくて瞼が開けられない。
気配から寝室の入り口にいるみたいだから、僕から声をかかえればいいか。

「アレクセイ、おかえり。」
「…。」
…?いつもなら僕がおかえりと声をかけただけで「これが、新婚…!」なんて意味不明な歓喜に震えていたのに、今日は一切反応がない。
「…アレクセイ?」
「…。」
もう一度声をかけてみる。返事はない。
目が開かないのも相まって、怖くなってきた。誰だ。セキュリティはしっかりしているはず。ではこれは誰だ。なんだ。
「…っ、影、クロ、シロ、助けて…、お願い。」
影にいるはずのあの子と近くにいるはずのクロとシロを呼ぶ。でも応答しない。どうして、誰か。怖いよ。助けて。

「…私の花嫁。」
「…っひ。」
誰かが、声を発した。それで確信する。アレクセイじゃない。目が開けられないのは、この人が何かしているのか。わからない。でも怖い。花嫁って何。僕のこと?
「花嫁。やっと見つけた。」
誰かが僕の頭を触る。何故か懐かしくて、馴染みがある。どうしてだろう。でもさっきまでくっつけられたみたいに目が開けられなかったのに、急に視界が開ける。
目の前には、どこかアレクセイに似た男の子がいた。違うのは黒髪であること。以前の僕のような色見をしている。やや長めの前髪から真紅の目が怪しく光っている。

でも不思議なことに、彼の姿が見えるようになってから恐怖感が薄れている。それどころか、僕はこの人を待ち望んでいた気がする。
頭がぼーっとする。急に思考に靄がかかったみたいで、考え事ができない。けれど、彼に何か言わないと思って、僕も彼に手を伸ばしていた。
「…愛しき私の花嫁。我らの悲願。待っていてね。また会えるから。」
「…ん。待ってる。会いにきてね。




アルトリウス。」

……アルトリウス?何故僕は彼の名前を知っているんだろう。僕が無意識に呼んだ彼は微笑を浮かべ、顔を寄せてきた。
あ、と思った時には唇が重なっていた。でも嫌じゃなかった。むしろ嬉しかった。
「また会おう、セイン。愛してる。」


「セイン!セイン!」
「…っ。あ、アレクセイ。」
アレクセイがいつのまにかいた。いつ帰ってきたのだろうか。窓から見える景色はいつのまにか夕焼けに染まっている。どれくらい寝ていたんだろう。それよりも、さっきまでのは夢だったのだろうか。

「体調は大丈夫かい。セイン。いつもなら人の気配ですぐに起きる君が、ずっと眠っていて。心配したんだよ。」
アレクセイが眉を下げて、僕を心配そうに見ている。
「ごめんね。なんか変な夢見ちゃって。」
「やはり一人にするべきじゃなかった。クロもシロもこういう時に限って寝室に入らずにいたんだ。
…だが、熱は下がったね。具合は?辛いところはあるかい?」
「もう辛くないよ。明日から授業にちゃんと出るよ。」
僕のその言葉を聞いて安堵した表情になった後に、またすぐ暗い表情をアレクセイは浮かべる。

「よかった。……休み明けに転入生が来ることになった。今日は臨時で彼のことについても議題になった。」
「転入生?」

「アルトリウス・ヴェール・マルトロン。
魔族が生きる国。魔国の王子だ。」
ゲームでは聞いたことのなかった人物の名前。けれど、先程僕が夢だと思っていた場面で出会った彼と同じ名前をしていた。
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