人類アンチ種族神

緑茶

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第一章.はじまり

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑧ 大規模攻勢の予兆》

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この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。
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神災じんさいから38日が経過した。

大仲おおなか大臣の設立した私有シェルター救出作戦部隊、通称「R連隊」について、埼玉シェルターの軍事用会議室にて最後の人員調整が行われている。

議題はこのR連隊の連隊長と副隊長の選抜である。

激論が真夜中の蛍光灯を揺らす。机を挟んで向かい合うのは――

防衛大臣 大仲おおなか晴彦はるひこ

立国平和党 津田つだ一郎いちろう

帝都復権党 舞岡まいおか幸三こうぞう

自衛隊幕僚・秘匿兵器開発部門長

他、与野党を代表する有力議員である。


大仲は熱弁した。

「連隊長についてですが、まずはUFBとの交戦経験をもつ、敵を知る人物が必要です。我々はUFBの正体を把握していません。必要なのは、実戦の肌感覚を持つ人物、少しでも、敵を知る人物ということです」

この言葉を聞いた舞岡議員は、この作戦の重要性を強く力説した。むろんこれは方便で、本音としてはシェルターに取り残されている重鎮にして帝都復権党の資金源、大荻山おおぎやま 剛三郎ごうざぶろうの救出である。
前回の失敗を強く叱責されており、再び救出作戦に失敗すれば、大荻山から資金提供を絶たれるか、舞岡本人の議員生命が危ないのだ。

舞岡議員が拳で天板を鳴らす。

「大仲さん、その口ぶりでは敗戦の将に挽回の機会を与えたいように聞こえますが?まさか、一度敗北している指揮官を再起用したりしませんよね?」


大仲はその追及を予想していた。

「敗戦の将ですか、確かにそうなのかもしれません。しかし、言い方を変えれば交戦経験者であります。しかも貴重な生還者でもあります。
 私が任命したい足立あだち 昭介しょうすけは確かに完璧とは言えないかもしれません。だけどこれだけは言えます。
 足立が一番マシです。いくら座学の成績の良い指揮官でも、実戦経験に勝るものはありません。足立自身も、前回の戦闘を執念深く解析し、今、自衛隊の中でUFBにかなり詳しい人物となっております。ですから、隊長には足立を推薦します。対案があればお聞かせください」

苦しいが正論でもある。だが舞岡は納得しない。いやできないのだ。

「正気ですか大臣。野球で例えるのなら、ホームランを打たれまくったピッチャーを、翌日また起用するようなものですよ?敗戦の経験者が敗戦回数を増やすだけですよ!しかも今回は連隊規模です。野球でいえば国威をかけたオリンピックですよ!またホームランを打たれたら、こんどは謝罪じゃ済みませんよ!」

この声に反応したのは意外な人物だった。

「えー。立国平和党の津田です。まず舞岡議員、この作戦は人の命がかかっています。救出対象はもちろん自衛隊員の命も等しくかかっています。その作戦とスポーツである野球を一緒にしちゃぁいけないと思いますよ。それとも舞岡議員は足立さんよりも適任者をご存じですか?」

まるで子供をたしなめるような、低いトーンの語り口調に舞岡は感情が高まったものの、対案として出せる人材はいない。むしろ対案を出して万が一失敗した場合のリスクを考慮すると対案を出したくないまであった。

苦し紛れに一言

「津田さん、私も本気なんです。連隊規模を投入して失敗は許されえないと思うのです。ですから、大仲大臣のいう、経験者ではなく、私としては大仲議員ご自身が、責任をもって連隊長をお務めになるべきだと思っています」

国会議員を戦場の指揮官にする。苦し紛れの一言は議会に失笑を誘う。津田は空気をコントロールする。

「舞岡議員、少し冷静になりましょう。まつりごとのプロである大仲大臣が、実戦の指揮をとれるわけがないですよ。大仲議員は確かに元自衛官です。しかし、もう20年も前の話ですよ?現役でUFBとの交戦経験をもつ指揮官と、20年も自衛隊を離れていた経験もない指揮官。こんなものは天秤にものりませんよ」

舞岡は思慮の浅い発言の足元を見事にすくわれて、完全にこの調整会議での発言力を失った。

さら津田は続ける。

「大仲大臣。気持ち的には私も舞岡議員と同じく、不退転の決意で挑むべきだと思います。その為には、少しでも勝てる見込みを上げておきたいのです。大臣としては、その足立さんで勝算はあるんですよね?」

舞岡にかぶせる形で自身にダメージはなく、大仲に全責任を負わせる。熟練した舌戦の達人である。

大仲大臣も退路を断たれて誘導されるように答える。

「あります。連隊長には足立。副長に仲原なかばらかおり三佐をつけます。二人とも前回の救出作戦の指揮官・副官であり経験者。そして生還者です」

仲原の名前に反応される前に、大仲大臣は続ける。

「前回の交戦で全滅を免れたのは二人の資質によるものが多いと思います。そのうえで敗因はやはり戦力不足でありました。 その部分は私も反省しなければならないと思います。ですから、今回は早急に集められる戦力を結集し、この二人に託すことにしました。それでも絶対に成功できるとは言えませんが、一番マシな選択であると私は確信しています」

こうして、足立・仲原を連隊長・副長に据えた、R連隊は翌日には作戦会議を経て出陣することとなった。

◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆

調整後の会議室。

出席していた議員たちは声を潜めて話をしている。

「大仲大臣を連隊長にしようなんて、舞岡議員の考えは理解できませんな」

「あれですよ、パトロンの重鎮から強い圧力を受けてるらしいですよ」

「ああ、彼に生殺与奪権を握らせるなんて、舞岡議員も若いですな」

「本当にそう思いますよ。議員に支援者は不可欠ですが相手は慎重に選ばないと、議員生命にかかわりますからね」

「しかし、それで焦って大臣を連隊長にとは、思慮の方も浅そうですな」

「ははは、私も含めて何人か声に出して失笑していましたね」

小さい声だが、与野党の議員の雑談が舞岡の耳には大音量の罵倒のように、脳に突き刺さった。
彼は顔を真っ赤に染めて怒りと悔しさ、敗北感が混ざり合った表情で会議室を足早に立ち去って行った。

◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆

その頃……

デスランドの玉座。ヴァロンは神とサーチから送られてきた兵器の集合状況をみて、少々興奮していた。

「創造主様、人間の玩具が集まってきてますね。連隊規模、長射程の新兵器もあります……」

玉座の上で神は短く笑う。

「退屈しのぎには丁度いい。――へし折るか。花を持たせるか。どちらが楽しめるかな」

その夜の月は、神の不敵な笑みを照らしていた。
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