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本編

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「えっ、エドワルド様に望まれて、不満に思う方なんて居ないと思いますし、寧ろ、不満に思われるのはわたくしの方ですわ!わたくし、本当に取り柄らしい取り柄なんてありませんし、他人ひととの交流を期待されても困ります!」


 リラは、取り柄が無いと言ってるが、本人はそのつもりでも、他から見ればそうでは無い。

 他人とのコミュ障を除けば、特技は多いのだ。

 しかも、記憶力が良すぎる程良いので、一度嵌まればそれに関する膨大な知識も吸収し、自身の物へとしてしまう研究者気質。

 ただ、エヴァンス家の者は、リラ程の記憶力は持たないものの、広い知識を持つ者が多い為、本人は普通の人もそんな物だと思っているが。

 リラ以外のエヴァンス家の者達は、エヴァンス家以外の者達を知っているから、リラの能力は普通では無いと知っているが、リラはエヴァンス家以外の者達との交流は無い為、自身を普通だと思っている。

 他家に知られれば悪用しようと思う者達が出て来る可能性が高い為、リラの相手には婿入りさせる気でいたのだ。

(まぁ、エドワルド殿は、王位も権力も興味の無い方だから、リラの能力を悪用しようとは思わないだろうが、態々わざわざ言う事でも無い。リラの能力よりも、リラそのものに惹かれているようだから、少しぐらいなら協力してもいいか。他の男と比べても婿入りさせれない事を除けば好条件だし、何より母が認めてしまったんだ。それなら、少しでも恩を売って協力し合い、敵の殲滅に力を注いだほうが良いだろう)

 “敵”。それはリラがエドワルドに嫁ぐ事を良しとしない、自己都合主義の野心家や、おこぼれ頂戴のおべっか腰巾着、縁続き狙いの色仕掛け女と言った者達だ。


「リラ、昨日の夜中に焼き菓子を作っていたよね。リラの淹れてくれるお茶と一緒に食べたいな。エドワルド殿、甘い物は平気でしたよね?妹の手作りですが、いかがですか?妹の淹れるお茶も美味しいですよ」

「頂きます」


 即答するエドワルドに、リラは驚く。

 リラは夜中、確かに焼き菓子を作っていたが、あれは中々眠れそうになかった為、暇潰しにと作った物だ。

 日持ちのする物なら大量に作った所で、使用人にも協力して食べて貰えば消費出来ると思ったからだ。エドワルドに食べさせる為に作った訳じゃないし、食べさせる事になると知っていれば、もう少し工夫した物を作った筈だ。


「おっ、お兄様?!あれは人様にお出しするような物ではありません!」

「大丈夫だよ。リラの作った物が口に合わないなんて言ったら、僕がこの家から追い出してあげる。リラはもう少し自信を持っても良いんだよ、僕の自慢の妹なんだから」

「おっ……お口に合わなくても、知りませんわよ?!」
[訳=お口に合わなかったらごめんなさい!!!]


 つい、口調が外用になってしまったリラだった。
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