氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
137 / 805
本編

85

しおりを挟む
 エドワルドにとって、ダンやジーンとの会話は、大変有意義な時間となった。

 特にダンは、世界のあちこちを見て回っていたのだろう。エドワルドの知らない平民の暮らしや、仕事等、見て来た事を色々話してくれた。

 ただし、リラに対しては暫く自重しろよとお小言を貰い、翌朝ダンがリラに何かを吹き込んだのだろう。リラが警戒する猫のようになっていた。


「しっ、暫く二人切りは禁止ですっ!兄様や使用人達の立ち会いの元でじゃなきゃ、お会い出来ません!」


 そんな、真っ赤な顔で警戒するリラも、物凄く可愛いと思うエドワルドに、リラはとどめとばかりに呟く。


「……でないと、エドワルド様はエヴァンス家に出入り禁止にされて、結婚式まで会えなくなってしまいますぅ……」


 怨めし気にエドワルドを上目遣いで見やり、プイッと膨れて近くにいたダンの後ろへと駆け寄り隠れ、こちらを警戒しながら窺い見てくる。

 エドワルドは猫が好きと言う訳でも、動物に興味を持つといった事も無いが、動物愛好家の気持ちが今なら解ると思った。

(かっ……可愛過ぎる!!何だあの生き物は!可愛がられ過ぎて、私を嫌ったように見せ掛けながら、こちらを気にして様子を窺うその姿が、可愛くて堪らない!持ち帰りたい!!が、そんな事をすれば、確実にあの彼女達を差し向けられる!それだけは阻止しなければ!大丈夫だ。昨夜は存分に堪能出来たし、式を挙げれば文句は出ない。取り敢えず今は、邪魔な屑連中の後始末と、式までの間に邪魔する敵の割り出し、式の手配や準備、今出来る全てに取り組まなければ!!)


「暫くは、口付けとハグだけで我慢する。だからこっちにおいで、リラ」


 エドワルドが笑顔で両腕を広げてリラに言えば、リラはダンを見上げて確認を取る。

 頷くダンに、了承が取れたとリラはエドワルドに駆け寄り腕の中に収まるリラ。

 それでも、その顔は赤く染まったままの拗ねたような顔で、エドワルドを見上げながら注意する。


「やり過ぎ、禁止ですからね!」


「うん、分かったよ。私もエヴァンス家の方達を、敵に回したくは無いからね。今夜もまた来るよ。ジーン殿に夕食を誘われているから。それまではゆっくり部屋で休んでいて。良いね?」


 エドワルドの言葉に首を傾げながらも、直ぐに頷くリラ。


「今夜また会えるのを、楽しみにお待ちしております」


 ふんわりと笑うリラに、心を鷲掴みにされながらも、エドワルドは後処理をする為に、エヴァンス邸を出た。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...