氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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「王位等、私には不要だ。煩わしい者達だろうと相手にしなければならない立場よりも、屑や馬鹿な連中を排除する方が性に合っているからな。お喋りはこのぐらいにして、そろそろ移動するぞ」

「「「はっ!」」」


 近衛達は焼き菓子の袋を大事に抱え、それを兵士達は怨めし気に見ているが、連帯責任と言う物だ。

 多分、この菓子の大半は、エドワルドとアレクシス、近衛の三人に食べられてしまう事になるだろう。

 本来、道中は朝晩二食になる筈だった所を、初日の昼食分として、エヴァンス家からの差し入れを、一人ずつ受け取る事にもなった。が、十日以上掛かるドレファンへの旅に、美味い物が食べれる機会等、そうある訳が無い。

 もし、兵士が食べれるとすれば、エドワルドとアレクシスに何らかの功績が認められた時ぐらいだ。

 ドレファンに着くまでに、あの菓子が尽きる前に、最低でも、一枚ぐらいは貴重な糖分を手に入れようと、兵士達はリラの悪口を言った奴等に怨みを籠めて睨み付け、一枚でもあの菓子を多く入手する為に、思考を廻らせる。

 今更リラを褒め称えた所で、菓子欲しさに上辺を取り繕っているだけだろうと思われるだけだし、これ以上の失態は避けたい。

 兵士達の間で、密かに手作り菓子のご褒美争奪戦が幕を開けた。



 一方、時は少し過ぎた昼過ぎに、ジーンは三人の侍女を伴って、王妃のアナスタシアに会いに来る。


「お久し振りです、アナスタシア王妃。アレクシス陛下不在の間、城の留守を預かる事になりました、ジルギリス=エヴァンスの息子、ジーン=エヴァンスです。アナスタシア王妃にお願いが有り、お目通り願いました」

「あら、ジーン様。これから暫く、宜しくお願いしますわね。それで、ジーン様のお願いとは何でしょう?」

「ここにいる、侍女の三人を預かって欲しいのです。それと、あと二人。後の二人は護衛の為の補充要員としての男です。腕の立つ者達ですので、近衛の隊長にも話は通しております。それと、出来れば人払いをお願いしても良いでしょうか?内密なお話が有るのです。勿論、ここにいる三人と……そうですね、そこのお茶を運んで来た侍女に、扉の内側で待機させますので、何も無い事を証明して頂けるでしょう。それ以外の者達は退出して頂けますか?」


 ジーンは周囲にいる侍女達に向かってそう言い、アナスタシアは首を傾げながらも、皆に退出の合図を送った。
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