氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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 暫くすると、ローズウッド公爵夫妻が訪ねて来た。


「紹介させて頂きます。私の妻のセシルです」

「初めまして、お初にお目に掛かります。バルト=ローズウッドの妻、セシル=ローズウッドと申します。以後お見知りおきを」


 その女性はスラリと背が高く、品の良いシンプルなドレスを着こなした女性で、それがまた、凛とした彼女に似合っていた。

 雰囲気も、女性騎士と言った感じなので、バルトの好む女性が奥方のような女性なら、普通の貴族女性に見向きもしないのは当然の事だろう。


「初めまして、エドワルド=クルルフォーンと言います。バルト殿には幼少の頃からお世話になっております」


 その場にいる、家位の高い者から順に名乗る事になっているので、先ずはエドワルドから挨拶をしていく。

 そして、ジルギリス、リリー、ジーン、リラの順で挨拶をし、バルトはセシルにダンと双子達の名を呼び、妻に紹介する。


「セシル、彼等が話していたダン殿とアイザーク族の子供達、ルナとルネだ」


 バルトが楽しそうにセシルに話し掛けているが、セシルは少し呆れ顔を見せていた。


「夫が無理を言ったのでは有りませんか?もしそうならちゃんと言って下さいね?この人、時折暴走してしまう事があるので、はっきり断って頂いても構いませんからね?」


 セシルの言葉に、双子達は首を傾げるが、その後直ぐに頷く。


「「ん、大丈夫。嫌、本当、断る」」

「双子達は公爵に会えて、喜んでますから大丈夫ですよ。この二人は嫌なら嫌ってちゃんと言いますから。そうだろ?双子」


 双子達は、ダンの言葉にコクコク頷く。


「それなら良いのですが……」

「お話ならば、座ってゆっくりして下さいな」


 リリーが二人にソファーを勧め、双子達にも座るように言うと、双子達はソファーを見て浮かない顔だ。

 王太子の応接間で、ソファーに沈み掛けた事を思い出しているようだ。そんな事を知らないリリーは首を傾げる。


「ルナ、ルネ、どうかしたの?」

「「食われる、嫌、イス~……」」


 怨めしそうに、ソファーを睨む双子達。

 ダンが簡潔に説明する。

「あー、前に座ろうとして、ソファーで埋まり掛けたんですよ」

「……お客様に申し出るのは、大変心苦しいのですが、ローズウッド公爵様、宜しければ双子達の背を支えて頂けますか?この前はダンが支えていたのですが、ダンは護衛に専念致しますので」

「ああ、それは良いですね!ルナ、ルネ、こっちにおいで。一緒に座ろう!」

「「座る、一緒~♪」」


 そうしてバルトは双子を隣に座らせて、至福の時間を過ごす。


「ローズウッド公爵夫人は、わたくしとお話致しませんか?」

「ええ、有難う御座います。わたくしの事はセシルとお呼び下さい」

「では、わたくしはリリーと。今後とも宜しくお願い致します」


 女性は女性で楽しく過ごすようだった。
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