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本編

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「……リラ嬢ちゃん、とんでもないのを釣り上げてんなぁ……」

「……わたくしも、エドワルド様がここまでの資産家だとは、思ってもいませんでした」


 金を湯水の如く使用する事の出来る王子や元王子は多いだろうが、資産を増やし続けている王子や元王子はあまりいない。と言うか、資産管理出来る者の方が少ないだろう。

 そもそも王族は、書面の金額等は理解出来ても、自身が買い物に出たりする訳では無いので、物価や相場を知らない者が多いのだ。

 その為、王宮での暮らしをそのまま再現したり、贅沢の限りを尽くす者が多い。

 それもそうだろう。本人にしてみればそれが普通の暮らしなのだ。そして、お金を稼ぐと言う概念が無いのも多くいる。

 そんな中、エドワルドは王宮を辞しても、政務官として働いている。しかもかなり優秀だ。

 加えてクルルフォーン領の経営は、エドワルドが領主になった後の方が頗る良くなったと聞いている。

 資産家だとは聞いていた。が、リラ達の想像の範囲を軽く越える程の資産家だった事に、リラは少し不安になる。

(わたくし、本当にここへ嫁いで来ても良いのかしら?)

 そんなリラの、心の不安を嗅ぎ取ったのだろう、エドワルドがリラに言う。


「ここが気に入らないなら、他の家に移り変えても良い。私が欲しいのは家ではないし、お金でもない。他の女性達は、私の資産や肩書き、容姿に関心が有るようだけど、肝心の中身には全く興味が無いのだよ。私は私に無関心な妻よりも、私自身を見てくれるリラが欲しい。リラで無いと嫌だ。だから、そんなに不安にならないで」

「エドワルド様は自己評価が低いです!エドワルド様を知って、嫌いになる女性はいません!!」

「そう言ってくれるのは嬉しいけれど、私に近付いて来る女性達は皆、私の中身等、考えてもいないよ。でなければ、女性嫌いだと言われている私に近付いて来よう等とは考えないからね」

「……ですが、エドワルド様は女性嫌いでは無いですよね?そっ、そのっ……わたくしをお望みなのですから……」

「女性嫌いと言うよりも、私に媚びを売る者達が嫌いと言った方が正解かな。男性でも不愉快だが、女性だと身体に触れて来ようとする者達が多いから、更に気分が悪くなる」


 エドワルドが心底嫌そうに顔を歪める。

 そんなエドワルドの顔を見て、リラは思わずエドワルドから離れようとするが、エドワルドがそれを阻止するように、リラを引き寄せ抱き締める。


「ああ、誤解の無いように言って置くが、私はそんな女性達に触られたくないから、気無げなく避けるし、不意を突かれても、直ぐに離れるよ。例外が有るとすれば、リラだけだから。リラだけは幾らでも触れて良いし、媚びを売ろうと誘おうと、私は大歓迎だからね」


 エドワルドは甘い声で、リラに優しく囁いた。
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