氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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 結局、マッド以外の他のお姉様達は、所属先の傭兵団の都合で、二人だけエヴァンス領に行く事が決まった。


「残念だけど、仕方ないわねぇ。けど、居残り組はこの家の警備を続行して良いそうよぉ♪他の仕事が入ったら、そっち優先で受けても良いって若様からのお達しよ!その代わり、ここでの出来事は、他言無用でお願いねぇ♥」

「勿論です、マッドの姐さん!!」

「どんな拷問を受けたって絶対に吐きません!!」

「バラしてなるものですか!」

「良かった♥そうだわ!口止め料として若様が、人数分の化粧品一式をくれたの!あたし達のような者は、買いに行き辛いだろうからだそうよぉ♪ほらぁ、女子会の時に、自分用のが欲しいって言ってたでしょ?どうやらリラちゃんが若様に言ってくれたようなのよぅ。口止め料って言ってるけど、多分口実ね。あたし達がバラすなんて、これっぽっちも思ってないし、バラされた所で逆手に取るでしょうから痛くも痒くもないわよ、きっと。若様らしいけど、あんた達は、絶対あの若様達を、敵に回さない事ね。普段は気前の良い若様達だけど、怒らせると大変なんだから」


 マッドの忠告に、全員コクコク頷く。

 他の皆も、本能的に気付いているのだ。あの手の人種は絶対に敵に回してはいけない事を。


「じゃあ、一緒に来る二人はちゃんと準備をしときなさいよ?あたし達は護衛として付いて行くんだからね」


 こうして着々と準備は進められ、エヴァンス領へと向かう日が迫って来る。

 大体エヴァンス領へは片道十日を予定している。

 距離的に見れば、ローズウッド領よりもエヴァンス領の方が距離は近く、平坦な道ばかりだが、貴族女性が二人もいるのだ。

 馬車の揺れが少ない速度と適度な休憩を挟むとなると、そのぐらいの日数が掛かる距離なのだ。

 そして、貴族女性と言う事で、嵩張るドレス等の荷物も増える。

 その為、エヴァンス家だけでも荷馬車が二台、人が乗る馬車が二台の、計四台で行く事になるが、令嬢や夫人によっては、一人で数台の荷馬車を出す者も居るのだから、少ない方なのだ。


「リラは侯爵領から王都に戻る時、本宅に置いてある物も、運んで来なければいけないわね。宝物も持っていくのでしょう?」

「はい。宝物は全部持っていきますわ!……でも、エドワルド様は邪魔だと言わずにいて下されば良いのですが……」

「大丈夫だよ。そんな事を言うようなら、僕が説教してあげるから」

「大丈夫だって。あんな広い屋敷だぞ?んな事言ったら部屋に閉じ籠ってやりゃあ良い」

「ふふっ、そんな事で撤回して下さるかしら?」


 確実に撤回する。その場にいた全員が、心の中で呟いた。
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