氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
342 / 805
本編

290

しおりを挟む
 少しだけ庭を散策していると、少し離れた街にある、教会の鐘が鳴り響く。

 エヴァンス家は、当主、もしくは次期当主が城勤めの政務官である事が多い為、一般の貴族と比べると朝が早く、普通の貴族だと10時頃が朝食なのだが、エヴァンス家では、7時に鳴るこの鐘の音が食堂に集まる時間になっている。

 その為、リラとエドワルドは屋敷内へと戻り、食堂に着けば、エヴァンス姓の全員が揃っている。

 それを見たリラは慌ててジオラルドに声を掛ける。


「お待たせ致して申し訳御座いません!」

「いや、大して待ってはいないから、大丈夫だよ。さぁ、食事にしようか」


 ジオラルドはニコニコしながらそう言うと、リラ達に座るように促す。

 そんな様子を不思議そうに見るエドワルド。


「エヴァンス家では、朝と晩は出来うる限り、揃って食べる事になっているんだよ。貴族では珍しいかも知れないけれど、その方が効率もいいからね」


 ジーンがエドワルドに説明すると、ジオラルドが眉間に皺を寄せ、苦々しい声を出す。


「エドワルド殿は、あの前馬鹿王妃の所為で、家族との食事と言うのが、年に数回程度の物だったから、余計に不思議に思っているのだろうな。私達は知っていながら、役割上、王族との関わりを極力避けねばならんかったから、手助けも出来ず、申し訳なかった」

「大した問題では有りませんよ。私もあの人の悪意を感じていましたし、知っていて父や兄に知らせずにいましたから。ジオラルド殿やジルギリス殿には、エヴァンス家の役割が有るにも関わらず、私が危ない時は、ちゃんと助けて頂いていましたよ」


 リラはジルギリスから、ハンナが幼いエドワルドに、一人で食事をさせていたと聞いていたので驚きはしなかったが、ハンナに対する怒りが沸き上がって来る。


「もしも、会う機会が有れば、絶対に正論で打ち負かして差し上げます!!二度とわたくしとエドワルド様に近付きたくないと思う程に、見下してやるのです!!!」


 リラはハンナへの怒りを声に出す。


「お父様が毒薬投与し、監禁中だと言われましたが、エドワルド様の話を聞く限り、それぐらいで済むなんて、割りに合いません~!」

「ああ、大丈夫だよリラ。それ程度では済まないから」


 ジオラルドは、ニッコリと笑顔で言い切る。


「……お祖父様?」

「王都に戻って来たら、実家の没落が知らされるだろうからね。王家の金を横領した罪で、領地や家名も没収される手筈だから、社交界にも出られなくなるんじゃないかな?王族の面汚しな実家持ちとして」


 ジオラルドはニコニコしながら、ハンナの実家が横領に至った経緯を話し出した。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...