氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

299

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「そもそも、私がリラを飽きるだの、捨てるだのと言う前提自体が気に食わないな。もっと若い娘?妖艶な美女?他にもいると言うが、リラ以外の異性に一体どんな価値があると言うのだ?私は元から彼女以外に興味は無いし、リラだからこそ、結婚したいと心底思ったのだ。私が彼女に恋い焦がれて二年半は経つが、他の誰かに心移りをし掛けた事も無ければ、ただ黙って彼女を見ていた訳でも無い。彼女の出そうな夜会には全て出席し、彼女がよく行く図書館にも出来得る限り足繫く通い、彼女との接点を持つ為に、他の誰に邪魔されようと、諦めずにずっと行動していたのだ。何の努力もせずに話せる立場に居ながら、何の行動にも移さない腑抜けと一緒にするな」


 リラはエドワルドの後半の言葉に首を傾げるが、エドワルドは青年に視線を見据えたまま、リラへの想いと真剣に向き合わなかった男の癖に、そんなお前と一緒にするなと言う視線と共に、嫌悪感を露わに敵意を向ける。

 エドワルド的に言えば、リラがエドワルドを深く想ってくれている事も、エドワルドとの為に相手に対して怒っている事も心底嬉しい事なのだが、その前提としてあるのが、エドワルドがリラに興味を失う事なのだから、不満に思うのは当然の事なのだ。

 エドワルドはリラが相手なら、子供を産んで体形が崩れようが、年を取って皺が増えようが、そんな些細な事で今ある想いや興味を無くすとは到底思えないと言い切れる程に、リラにのめり込んでいるのだから。


「そんな訳だから、リラもその前提は止めなさい。私のリラに対する気持ちが疑われているようで、複雑な気分になる」

「しっ、失礼致しました……」


 シュンと落ち込むリラを見て、エドワルドは甘く優しい声を出す。


「けれど、リラの気持ちはとても嬉しかったよ。そんなリラを他の男に取られないよう、私もリラを繋ぎ止める為に、知り得る全ての手段を使ってでも、出来る事の全てを試して、リラを繋ぎ止めていられるように努力をするよ。だからリラは、何の心配もせずに嫁いで来れば良いからね」

「はっ、はいっ!」


 リラがコクコクと頷き、物凄く嬉しそうな笑顔をエドワルドに向ける。

 リラの言葉とエドワルドの言葉では、言ってる言葉は似通ってるのに、言葉の重みはエドワルドの方が明らかに重い。

 だが、リラはそれでも平然と頷き、嬉しそうに返事をしているのだ。

 青年は、そんなリラを見せ付けられて、完膚無きまでに恋心を粉々に砕かれ、多大なる精神ダメージを食らい、茫然自失状態だ。

 店主はリラ達に只管謝り、後日改めてお詫びに伺いますと頭を下げ、リラ達が店を出るのを見送り、リラ達が店を出た直後、青年は店主の父親から大目玉を食らい、見習いからやり直せと、翌日から強制的に馬車に乗せられ、別店舗で一からやり直しをさせられる羽目になったのだった。
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