氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

325

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 ジェフからの手紙を受け取っていたジーンとカミユは、サイナスと挨拶を交わし、カミユがクルルフォーン邸での出来事を詳細に話す。

 一応手紙には書かれていたが、詳細を知るには立ち会ったカミユに聞くのが一番だからだ。勿論後で、当事者であるレベッカとランドールの二人からも聞くつもりだ。

 喩え向こうが悪いと判っていても、言い訳や言いたい事もあるだろうし、使用人同士のいざこざの場合、侍女や侍従の頭、それでも駄目な時は執事が中立の立場で仲裁に入るのだが、今回は執事が偏見を持ってこっちの侍女に絡んで来たのだから、執事よりも低い立場では有るが、カミユが責任者として出向いたのだ。

 立場的に言えば、カミユが下だが、明らかに執事が悪いなら、侍女や侍従の頭が諌めるのは当然だ。そこで身分が上なのはこちらだぞと言わなかった分、まだ救いは有るのだ。

 そうして翌日、エドワルドがエヴァンス邸に来るまで、サイナスはそのまま待機して、エドワルドもジェフからの手紙と本人からの報告で、エヴァンス家にランドールの教育者としてエヴァンス家の執事の一人が待機していると聞き、その対応の速さにさすがエヴァンス家だと感嘆し、夕方、エヴァンス邸を訪問すると、玄関で噂のサイナスが出迎えてくれた。


「初めまして、公爵様。私はエヴァンス家の執事の一人、サイナスと申します。この家を出て、クルルフォーン邸に到着後、クルルフォーン家の最高責任者の執事として、そちらの執事を一人前に仕立て上げるまでは、全力で仕えさせて頂きますので、これから宜しくお願い致します。王都の貴族間の勢力や、貴族の作法は一通り学んでおりますが、田舎者故、無知な所が有るかも知れませんが、ご指導ご鞭撻の程をお願い致します。クルルフォーン家に仕えさせて頂く上で、注意点や注文等、お伺いしたいのですが、何かお有りでしょうか?」

「いや、特に無い」

「では、お帰りの際に同行させて頂きますので、それまではエヴァンス邸にてごゆっくりお寛ぎ下さい」


 執事として完璧なお辞儀をし、リラの元へと案内した後、ご用が有る際はお呼び下さいと立ち去る。

 その後ろ姿を見送りながら、エドワルドはポツリと呟いた。


「あれのどこが田舎者だ。礼儀も作法も、完璧じゃないか」

「サイナスはエヴァンス領で応対していた執事、キーツの息子ですわ。執事としての年数は少ないですが、その間見習いとしての期間が長く、他の使用人達の仕事がどういう物かも学んでいます。エヴァンス家の執事は、上に立つ者は先ず、下の者達の仕事も理解しろと、色々な仕事も経験してますので、他のエヴァンス家の使用人達は自分達の苦労も知らないでとは絶対に言いません」


 エヴァンス家の執事は、下積み時代が長いのだ。その行程を熟してからでないと、執事見習いにすらなれない。けれど、そうまでして執事になる為、給料は他領の執事とは比べ物にならないぐらいの高額が支払われるのだ。

 給料目当てで執事希望者になる者もいるが、大概の者は下積み時代で脱落するか、見習いになれたとしても、その仕事の多さや修得するスキルの多さに脱落するかだ。


「……さすがエヴァンス家だな。執事にそこまで求めるとは……」


 リラの言葉に、エドワルドは驚く事しか出来なかった。
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