氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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 サイナスが深い溜め息を吐き、ランドールはビクッと震える。


「続けるんだな?執事職。言っとくが、今からやり直ししても、お前が執事として使えるようになるのは二十年、三十年先、それ以上になるかも知れないぞ。それでも良いんだな?」


 サイナスの念押しに、ランドールは心底安堵して、サイナスの問いに力強く頷く。


「はっ、はい!!」

「……取り敢えず、時間が限られてるから、このまま体験学習は続けるとしても、事務職だと思ってたなら、意味すら取り違えてるだろうから、父さんや他の執事達にも話して、教育の見直しからだな」

「……父さん?」

「ここの執事長をやってるんだよ。執事が複数いる場合も一番上が必要だからな。お前も会ってるぞ。最初に来た時、エドワルド様と話してた執事がいただろ。あれが僕の父だ」

「えっ?!あの、年配の方ですか?!」

「お前……見た目で判断するなよ?今も現役で、この領地の全てを把握してる人だからな?出入り商人の名前や人数、物流の流れや物価の動向、領内各地の役人に報告書を作成させて、王都の物価と比較して、そこに輸送費足して、大幅なぼったくり商人だった場合は、二度と領地で物が売買出来ないように、領主の名前を使ってでも指図するぞ」

「当然でしょう。そんな悪い虫を領内で飼い、肥やすなんて、馬鹿のする事です。領主にとって害でしかない害虫なんて物は、餌を与えなければ良いのですから。そんな事より、何をしているのですか?既にダンス講師が待機していると言うのに、中々動こうとしないなんて、時間の無駄です」


 いつの間にか近寄って来ていたキーツに指摘され、即座に謝るサイナス。

 父と言えど、この気配の消され方は心臓に悪い。


「申し訳有りません。想定外の事態が発覚しまして、それに付いて、キーツさんにも相談をとさせて頂きたく……」

「では、移動しながら聞きましょう。マッド様とお友達の方々も一緒に、ダンスレッスンをお受けしませんか?折角綺麗なドレスを纏っておられるのに勿体無いですからね。手の空いている者に声を掛けました所、数人が協力してくれるとの事なので、どうぞ、ご遠慮無く」


 キーツの申し出に、マッド達は大いに喜ぶ。

 そして、レッスンの部屋となる場所に移動しながら、サイナスはランドールの勘違いを報告した。


「……解りました。先ずは、ここでしか体験出来ない体験学習を平行しながら、子供でも解る執事の仕事や役割が書かれた、子供向けの本から揃えて読ませましょう。サイナス、良い機会です。後継を育てるつもりで初歩の初歩から教えて差し上げなさい。ただし、年が年ですから、エヴァンス家の執事では無く、一般の、公爵家に仕える執事としての教育です。執事として、出来ますね?」


 キーツはさらっと言い切り、サイナスはやっぱりそこからかと少しげんなりした。


「……はい」

「声が小さい、やり直し」

「はい。勿論です」

「遅かれ早かれ、いつかは見習いから育てるのですから、その練習相手と思いなさい。……貴方はエヴァンス家の執事と認められているのですから、相手が投げ出さない限り、出来ますよ」

「……当然です」


 サイナスは、キーツの言葉に口元を綻ばせた。
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