氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

後日談

5

「レベッカ、どうせなら、二人纏めて引っ越しをしろ。使用人達の部屋だと主賓室と比べて防音が心許ない。隣は双子だろう。知識として有るのかどうかは私は知らないが、仲の良い知り合いの性交の声だの音だの、聴きたいと思わないだろうし、レベッカも、聴かせたいとは思わないだろう？」


　エドワルドの言葉に、レベッカは肩を落とした。


「それは、確かに嫌ですね……。やっぱり通いですかね？でも、今からは無理だし、家を購入するぐらいの資金は有るには有るけど……」


　レベッカがブツブツと言い出すので、エドワルドはレベッカに再度待ったを掛ける。

　放って置いたら今日は取り敢えず宿に行こうと言い出し兼ねない勢いだ。


「だから待てと言っている。厩の側に、物置にしていた建物が有ったのを覚えているか？庭の苗とかを置いていた横の建物で、雨に濡らしてはいけない物や、馬具と言った備品を置いてある場所だ」


　レベッカは、一番最初にクルルフォーン邸へと訪れた時に、苗や肥料を取りに行ったので、直ぐにその場所が思い浮かぶ。

「ああ。あの、物置にしては、無駄に大きな建物ですね？」

「あそこは元々、愛人のいた元王子が、愛人の為に建てた建物らしい。私には不要の物だから物置にしているが、二階部分は普通に使用出来る。雨の避難場所や、馬のお産の詰所場所として、ヨルドにも使わせていたからな。私達二人の子の乳母になるのなら、近い方が良い。馬具は厩に運べば良いし、他の物も移動させて構わない。今のままでは使い難いと言うのなら、好きに改築しても構わないぞ？」

「!!本当ですか？！」


　レベッカが目を輝かせ、エドワルドは頷く。


「敷地内なら直ぐに来れるし、レベッカが乳母になるのなら、これ程心強い事は無い。他を雇うよりは安心出来るからな。取り敢えず今夜は、着替えと明かりだけを持っていけば大丈夫だろう。いつでも使えるようにしているので、問題は無い筈だ。後の荷物は少しずつ運べば良いし、鍵はヨルドに持たせているのと、執務室に置いている物だけだから……サイナス、取ってきてやってくれ」

「はい、分かりました。お茶のご用意は出来ていますので、話の続きはサロンでどうぞ」


　サイナスは一人執務室に向かい、エドワルドの言う建物の鍵を手にしていつものサロンへと向かう。


「どうぞ」


　それをソファーに座っているエドワルドに手渡し、エドワルドはその鍵を、レベッカに差し出す。


「これからも、宜しく頼む」

「勿論です！有難う御座いますエドワルド様！ヨルドさん、今夜から宜しくお願いしますね♪」

「こっ……こちらこそ、宜しくお願い致します」


　ヨルドは顔を赤く染めて、エドワルドとレベッカに頭を下げた。