氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

30

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 ダガーは、レイピアと同じとまでは、いかなかったけれど、それでも、一番馴染む物をライラは選んだ。

 マッドは支払いを済ませると、周囲に人の気配が無い事を確認して、ライラに訊ねる。


「マッサージだけど……職場に帰ってからしちゃうと、娼婦ちゃん達に、絶対からかわれちゃうから、どこか部屋でも借りてする?ただ、安宿だと、聞き耳立てられちゃうかもだしぃ、貴族達が使う宿は目立っちゃうのよねぇ」

「……連れ込み宿はいけませんか?」


 ふと、ライラが口に出す。

 平民の宿には、そんな場所が有ると、娼婦のお姉さん達が教えてくれていたのだ。


「うん?……まぁ、安宿にしちゃあ防音も高いし、本来、情事をする場所だからぁ、問題無いっちゃ無いけどぉ、ライちゃんは大丈夫なのぉ?下手すりゃあ、あたしとの関係を、他の人に勘違いされちゃうわよぉ?」

「平気です。知りもしない相手に何を言われようと、ボクは何とも思いませんよ。マッドさんは、ボクと噂になるの、嫌ですか?」

「う~ん?あたしはライちゃんが噂になっても良いって言うなら、別に構わないわよぉ。寧ろ、ラッキーって感じ?」

「じゃあ、そこで。ボクはまだ、この辺の地理に詳しく無いので、マッドさんが案内して下さい。腕を組んでいれば、普通のカップルだと思われますよ。勿論、マッドさんが嫌で無ければですが……」

「ライちゃんみたいな格好良い男となら、嫌になる訳無いじゃない!じゃあ、カップルを装って行きましょう♪」


(ボクは、装うつもりは無いですけどね。嫌がらず、そんな場所へと一緒に行く、マッドさんも悪いんですよ?ボクはそこで、マッドさんを手に入れる。口説き落として……既成事実も辞さない考えですからね)

 マッドと腕を組みながら、ライラはそんな事を思っているが、当の本人であるマッドは全く気付いていない。

 マッドが連れ込み宿に入ろうとすると、ライラが支払うと言い出し、譲らない。


「今日はマッドさんのお世話になりっぱなしで、ボクの立つ瀬が無いです。ここの支払いぐらいはボクに出させて下さい。お願いします」


 それでもマッドが渋ると、ライラは更に言い募る。


「ここの支払いまでマッドさんに出して頂いたら、次にダンさんに会った後、今日と同じような訓練をされても、マッドさんにマッサージをお願いし難くなります。だから、ボクに支払わせて下さい。でないと、ボクが情けなさ過ぎて、自分で自分が嫌になってしまいそうです」


 ライラの訴えにマッドが折れてくれたので、ライラはマッドに礼を言って、マッドと共に部屋を取り、鍵を受け取り部屋に向かった。
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