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後日談

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「おっ……王族?」


 ライラの言葉にキョトンとした顔をする女傭兵に、一応肯定と忠告をするライラ。

「ええ。この国の王弟公爵が、我々の主人で有り、雇い主ですから。それと、女の色香でどうにかなると思ったら、大間違いですよ。王弟公爵様は大の女嫌いだと言われていて、奥方以外の美女と呼ばれた貴族女性達が、どれ程言い寄ろうが侍ろうとしようが、誰一人相手にされなかったようですから」


 そしてマッドは、ライラの忠告に補足するかのように、どんな美女だろうと関係無いとばかりの昔話を披露する。


「そういや数年前に、隣国が喧嘩を吹っ掛けて来た際、敗者となった隣国の美女と名高い姫君達は、婚約中だった王弟公爵や国王陛下に、嫁や妾になるとか言いやがったらしく、それに腹ぁ立てたウチの主人が、その姫君達の歯を全部抜いて、逃げようとする者の足を折り、肥溜めに放り込み、賠償として娼館に売り払ったそうだぞ。お前もそんな目に合いてぇなら、幾らでも口添えしてやるぜ?」


 マッドの言葉に、ライラ以外の者達が全員顔を引きつらせてドン引いている。


「ああ、隣国は昔からこの国にいざこざを吹っ掛けて来ては、のらりくらりと言い逃れを企む悪知恵だけは持ってる連中ですね。長年国家で成り立っていた事が不思議なくらいの場所ですし、先代の国王は最悪の愚王だったようで、処刑されたようです。新王は、国王陛下と我らが主人の力添えが有って王座に就き、他の王族は身分剥奪の上で、娼館や坑山に送られたそうですね。そもそも、この国は元々強国だと言うのに、何度負けても過去を改めず、馬鹿の一つ覚えみたいに何度も来る方がどうかしてますよ」


 ライラがこの国と隣国ドレファンの関係を簡潔に話すが、他の者達はマッドの衝撃発言の内容によるショックが抜けていないようだ。


「世の中、敵に回してはいけない人がいるんです。そんな方に喧嘩を売るなら、それ相応の覚悟を持って来て下さい。もっとも、貴女は既に、その方の使用人に喧嘩を売ってますけどね。知らなかったら許されるなんて子供じゃあるまいし、いい年をした大人なんですから、他人に尻拭いして貰わずに、自身で確りと責任を取って下さいね」

「ああ、そりゃあそうだ。傭兵団に責任なすり付けた所で、お前の責任が無くなる訳じゃあねぇからな。お前の責任は、きっちりお前自身に取って貰うからな」


 マッドもライラに追随し、責任はちゃんと女傭兵に行くと断言すれば、ライラが再度、断言した。


「取り敢えず罪人として、二度とこの国に来れないような場所へと行って貰います」
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