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後日談

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 アシュリーは王宮に到着後、ジーンにエスコートされるまま、エヴァンス家に宛がわれた部屋へと向かう。

 その際の周囲からの痛い程の視線にアシュリーが萎縮していると、リラが外用の無表情でアシュリーに話し掛ける。


「アーシュお義姉様、もっと堂々としていて下さい。アーシュお義姉様は、お兄様に選ばれたのです。選ばれもしないのに付き纏う、迷惑な方々とは違うのですから」


 リラ的に、周囲の事なんて気にしなくて大丈夫ですと言う意味合いの言葉で、嫌味でも何でも無いのだが、他の令嬢からすれば、品位が無いと言った嫌味に聞き取っていた所だろう。

 ただし、言われた相手であるアシュリーは、リラの本質を理解している為、リラの言葉をそのまま素直に受け取り、リラの励ましに何とか笑顔で応えるアシュリー。


「有難う御座います、リラ様。これだけ綺麗所が揃っていれば、その中に混じるわたくしも、注目されるのは仕方の無い事ですものね。大丈夫ですわ。わたくし、このような状況には、本の少し慣れていますから」


 元婚約者のマディソンの時にも似たような事が有ったので、ある程度は慣れているが、圧倒的にこちらの方が多い人数で、どうしても嫌な記憶を思い起こされてしまうのだ。

 とは言え、ジーンとマディソンの態度や接し方の差は、当然、比べようも無い程ジーンの方が上だが。 


「私の隣に慣れてくれるのは嬉しいですが、他の男の視線に晒して置きたい等とは、一切思いませんからね。あの男は婿入りするつもりの癖に、よく平気で婿入り先の相手で有る婚約者を放置出来たなと、心底呆れるばかりですよ」


 ジーンがエヴァンス家に宛がわれた部屋の中でアシュリーに言う。

 マディソンは、アシュリーと夜会に出席しても、エスコートとダンスが終われば、大概学友や他の令嬢達からのダンスの誘いに付いて行ったのだ。

 政略婚だから仕方無いとアシュリーは思っていたが、ジーンに言わせれば、爵位欲しさに婿入りする分際で、何様のつもりだと言うだろう。


「アーシュお義姉様を、放置、ですか?」

「婚約者だと紹介するも、学友や他の知り合いを優先し、アーシュを連れずにそちらへと行くのだから、放置と言えるだろう」

「なんて見る目の無い……」


 リラが、若干低い声を出しているので、アシュリーは慌てて会話に入る。


「でっ、ですが、そのお陰でジーン様に選んで頂けましたし、リラ様やシア様、それに、沢山の優しい方々と出会い、素敵な家族が増えて、わたくし、今はとても幸せです」


 そう言ってアシュリーが心底嬉しそうに微笑めば、その場でそれを聴いていた者達全員が、本当に見る目が無いと心底思い、今夜来た時に、こちらでは大切にされてる事を存分に見せ付けてやろうと思うのだった。
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