648 / 805
後日談
50
しおりを挟む
アシュリーは王宮に到着後、ジーンにエスコートされるまま、エヴァンス家に宛がわれた部屋へと向かう。
その際の周囲からの痛い程の視線にアシュリーが萎縮していると、リラが外用の無表情でアシュリーに話し掛ける。
「アーシュお義姉様、もっと堂々としていて下さい。アーシュお義姉様は、お兄様に選ばれたのです。選ばれもしないのに付き纏う、迷惑な方々とは違うのですから」
リラ的に、周囲の事なんて気にしなくて大丈夫ですと言う意味合いの言葉で、嫌味でも何でも無いのだが、他の令嬢からすれば、品位が無いと言った嫌味に聞き取っていた所だろう。
ただし、言われた相手であるアシュリーは、リラの本質を理解している為、リラの言葉をそのまま素直に受け取り、リラの励ましに何とか笑顔で応えるアシュリー。
「有難う御座います、リラ様。これだけ綺麗所が揃っていれば、その中に混じるわたくしも、注目されるのは仕方の無い事ですものね。大丈夫ですわ。わたくし、このような状況には、本の少し慣れていますから」
元婚約者のマディソンの時にも似たような事が有ったので、ある程度は慣れているが、圧倒的にこちらの方が多い人数で、どうしても嫌な記憶を思い起こされてしまうのだ。
とは言え、ジーンとマディソンの態度や接し方の差は、当然、比べようも無い程ジーンの方が上だが。
「私の隣に慣れてくれるのは嬉しいですが、他の男の視線に晒して置きたい等とは、一切思いませんからね。あの男は婿入りするつもりの癖に、よく平気で婿入り先の相手で有る婚約者を放置出来たなと、心底呆れるばかりですよ」
ジーンがエヴァンス家に宛がわれた部屋の中でアシュリーに言う。
マディソンは、アシュリーと夜会に出席しても、エスコートとダンスが終われば、大概学友や他の令嬢達からのダンスの誘いに付いて行ったのだ。
政略婚だから仕方無いとアシュリーは思っていたが、ジーンに言わせれば、爵位欲しさに婿入りする分際で、何様のつもりだと言うだろう。
「アーシュお義姉様を、放置、ですか?」
「婚約者だと紹介するも、学友や他の知り合いを優先し、アーシュを連れずにそちらへと行くのだから、放置と言えるだろう」
「なんて見る目の無い……」
リラが、若干低い声を出しているので、アシュリーは慌てて会話に入る。
「でっ、ですが、そのお陰でジーン様に選んで頂けましたし、リラ様やシア様、それに、沢山の優しい方々と出会い、素敵な家族が増えて、わたくし、今はとても幸せです」
そう言ってアシュリーが心底嬉しそうに微笑めば、その場でそれを聴いていた者達全員が、本当に見る目が無いと心底思い、今夜来た時に、こちらでは大切にされてる事を存分に見せ付けてやろうと思うのだった。
その際の周囲からの痛い程の視線にアシュリーが萎縮していると、リラが外用の無表情でアシュリーに話し掛ける。
「アーシュお義姉様、もっと堂々としていて下さい。アーシュお義姉様は、お兄様に選ばれたのです。選ばれもしないのに付き纏う、迷惑な方々とは違うのですから」
リラ的に、周囲の事なんて気にしなくて大丈夫ですと言う意味合いの言葉で、嫌味でも何でも無いのだが、他の令嬢からすれば、品位が無いと言った嫌味に聞き取っていた所だろう。
ただし、言われた相手であるアシュリーは、リラの本質を理解している為、リラの言葉をそのまま素直に受け取り、リラの励ましに何とか笑顔で応えるアシュリー。
「有難う御座います、リラ様。これだけ綺麗所が揃っていれば、その中に混じるわたくしも、注目されるのは仕方の無い事ですものね。大丈夫ですわ。わたくし、このような状況には、本の少し慣れていますから」
元婚約者のマディソンの時にも似たような事が有ったので、ある程度は慣れているが、圧倒的にこちらの方が多い人数で、どうしても嫌な記憶を思い起こされてしまうのだ。
とは言え、ジーンとマディソンの態度や接し方の差は、当然、比べようも無い程ジーンの方が上だが。
「私の隣に慣れてくれるのは嬉しいですが、他の男の視線に晒して置きたい等とは、一切思いませんからね。あの男は婿入りするつもりの癖に、よく平気で婿入り先の相手で有る婚約者を放置出来たなと、心底呆れるばかりですよ」
ジーンがエヴァンス家に宛がわれた部屋の中でアシュリーに言う。
マディソンは、アシュリーと夜会に出席しても、エスコートとダンスが終われば、大概学友や他の令嬢達からのダンスの誘いに付いて行ったのだ。
政略婚だから仕方無いとアシュリーは思っていたが、ジーンに言わせれば、爵位欲しさに婿入りする分際で、何様のつもりだと言うだろう。
「アーシュお義姉様を、放置、ですか?」
「婚約者だと紹介するも、学友や他の知り合いを優先し、アーシュを連れずにそちらへと行くのだから、放置と言えるだろう」
「なんて見る目の無い……」
リラが、若干低い声を出しているので、アシュリーは慌てて会話に入る。
「でっ、ですが、そのお陰でジーン様に選んで頂けましたし、リラ様やシア様、それに、沢山の優しい方々と出会い、素敵な家族が増えて、わたくし、今はとても幸せです」
そう言ってアシュリーが心底嬉しそうに微笑めば、その場でそれを聴いていた者達全員が、本当に見る目が無いと心底思い、今夜来た時に、こちらでは大切にされてる事を存分に見せ付けてやろうと思うのだった。
26
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる