氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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「たっ、多大なるご無礼をお許し下さい、王妃様」

「わたくし、アーシュ様が無礼だなんて、一度も思った事は有りませんわ。それよりも、王妃ではなくシアでしょう?」

「でっ、ですが……」


 周囲の視線の多さに、アシュリーは畏縮していると、アナスタシアがアシュリーの手を取り寂しそうな顔を見せる。


「わたくし、アーシュ様と仲良くなりたくて、黙って貰っていたのです。アーシュ様は、真面目で誠実な人柄だと聞いていたので、アレク様に言い寄る為にわたくしを利用しようと企んだりはしないでしょうし、お飾り王妃だなんて蔑んだりしないでしょう?でも、最初から王妃だと知っていたら、アーシュ様はわたくしと距離を置いてしまいそうだったので、それが嫌だったのです。ですから、今までと変わらずに接して下さいな。そうでないとわたくし、とっても寂しいです……」


 儚げな容姿のアナスタシアにウルウルと潤んだ瞳で見詰められ、断れるアシュリーでは無い。

 してや、既に親しくなっているのだ。

 アシュリーはアワアワとしながらコクコク頷けば、アナスタシアは花が綻ぶような笑顔を浮かべる。

(シア様、その笑顔は反則ですっ!!)


「何で……何であんたが王妃になんて可愛がられてんのよっっ!!!」


 サラが大声で喚くものの、アナスタシアは物の見事にスルーして、周囲に聴こえるようにアシュリーに言う。

「アーシュ様。無礼と言うのは自身の立場を弁えず、他人の迷惑もかえりみない、ああいう輩を言うのです。アーシュ様は権力を好まない、欲しがらないタイプでしょう?権力は大きければ大きい程、多大な責任と義務が伴いますもの。それこそ生死を左右する程の。それを理解せずに無視して、美味しい部分だけを味わおうだなんて、都合が良過ぎると思いません?仕事もせずに威張るだけなら、貴族で無くとも出来ますわ。わたくし、礼儀もマナーも弁えない、自分主義の考え無しな、頭の悪い方は大嫌いですの。勿論、わたくしの夫で有る国王陛下に、媚を売ろうとする方も含まれていますわ」


 邪気の無い笑顔でのたまうアナスタシアに、内心ギクリとした者達もいるだろう。

 アナスタシアの言葉にギクリとするなら、多少の自覚が有る分マシでは有るだろうが、アナスタシアの言葉を聴きながらも、自分は大丈夫と根拠の無い自信を持つ者は、きっとその内何かをやらかし、断罪と言う同じ道を歩む羽目になる筈だ。

 無邪気に振る舞うアナスタシアの本質に気付かず、痛い目を見た者も少なくないだろうが、エヴァンス家と渡り合って来た古狸達は、あの・・エヴァンス家当主が後見人になり、連れて来た相手が見た目通りな訳が無い!政治的話題を振り、本人の持論を引き出せば、嫌と言う程それが理解出来わかるのに、見た目通りや無邪気な振る舞いに騙される方が悪いし、それも一種の勉強だと思っている為、赤の他人に口出しをする気は無い。

 下手に口出しして、あの恐ろしい後見人にこれ以上目を付けられたくは無いと思っているからだ。

 そんな古狸の連中ですら恐れるエヴァンス家と、王族で有るエドワルド、国王陛下夫妻に嫌われた者達がどうなるかなんて、考えただけでも今まで通りに貴族で居られる訳が無いと解るのに、当事者で有るサラは、未だに理解していないようだった。
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