氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

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「あら、誰かと思えばリラ様じゃありませんか」


 背後から、若い女性の声が響く。


「……ごきげんよう」


 リラに声を掛けてきたのは、リラと同じく侯爵家の令嬢。ただし、資産家といった金持ちの部類で言えば、リラの家の方が上になる。

 それが気に食わないのだろう、毎回顔を合わせればリラに何かと絡んでくる。特に異性に関する事で。

 リラより二つ下だが、彼女は十三、リラは十五で社交界デビューをし、同時期のリラに話題性が集まり彼女自身が目立たなくなってしまった事も、リラに絡む要因に上げられるだろう。

 彼女はとても愛くるしい見掛けをした令嬢で、甘やかされて育ったからか、甘え上手な我儘だ。人々の注目を集める事が大好きで、特に異性の気を惹きたがる。

 そんな彼女だからこそ異性の影がないリラに、結婚はいつするのか、パートナーはいないのかと聞き、いないと答えるリラに嘲笑し、勝ち誇った顔で何かしら嫌味を言うのだが、毎度リラに言い負かされ、逃げるように立ち去るのが常である。


「リラ様は今日もお一人ですの?いつも思うのですが、リラ様はドレスがお淑やか過ぎるのではなくて?女性は着飾り、年相応の若さをアピールしなくては目立ちもしませんし、そんな野暮ったいドレスや装飾品では、男性方も喜びませんわよ?」


 それに対し、リラの返答はというと、


「過剰装飾やド派手なドレスでは、軽い女に見えてしまい兼ねないわ。外見だけなら未だしも、頭まで軽く見られるのはさすがに遠慮したいですわ」
[訳=輝かしい装飾や華やかなドレスでは、衣装負けし兼ねないもの。外見だけ整えても似合わないと自覚しているし、これ以上痛い女と思われるのはさすがに嫌です]


 困った事に、リラは自身のみ・・を、極々平凡な容姿と誤認している。それは幼少の頃、とある貴族の子息にブスだ不細工だと言われた為で、更には笑顔や泣き顔等に散々暴言を吐かれたから、家族や家の使用人以外には見せられない表情ものと思っているのだ。

 ただ、リラの言葉を自分への嘲りだと受け取った令嬢は憤る。


「わっ、わたくしがそうだとおっしゃりたいの?!」


 令嬢に、リラの本意は勿論伝わらない。


「わたくしは“誰が”なんて一言も言ってませんわ?でも、ご自身がそうおっしゃられるのなら、貴女自身そう思っているのではなくて?」
[訳=わたくしは貴女が似合わないなんて一言も言ってませんわよ?でも、貴女なら輝かしい装飾や華やかなドレスが似合うだろうし、それを纏ってる貴女自身が似合うと思って着ているのではなくて?]


 そして案の定、嫌味として違った意味に受け取られるリラであった。
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