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本編
5 母の死後
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(でも、こんな都合の良い事、本当に受け入れて下さるのかしら……)
三人の妖精は、妖精の王が遣わした妖精達だった。
三人の妖精達は、王様はリリシアーナを快く受け入れてくれると言っていたけど、一時的とは言え、妖精を拒絶していたのに、そんな簡単に許して貰えていいのだろうかと心配だった。
リリシアーナは寂しかった。
リリシアーナを溺愛してくれていた母が死に、フィオナは生まれたが、身体が弱く、直ぐに熱を出したり嘔吐したりする為、何か有っては大変だと、侍女に阻まれ近付けない。
父親は仕事が優先で、時間が空けばフィオナの様子見。
リリシアーナに構うのは、食事時の僅かな時間で、それさえも仕事で潰される事が多い。
常に愛情を示していた母親が居なくなり、寂しくなるのは当然だろう。
だから、妖精達に話し掛けた。
自分から距離を置いて、拒絶したにも関わらず。
妖精達が嫌うナナカマドの腕輪をしたままで。
妖精達はリリシアーナに近付きはしなかったが、笑顔で会話に応じてくれた。
それからリリシアーナは、腕輪を外す事は出来なかったが、一人になると決まって妖精達と他愛の無い会話をした。
妖精達はリリシアーナに触れる事は出来なかったが、徐々に距離が近くなる。
妖精達にとって、ナナカマドの腕輪はとても怖い物で、触れると激痛が全身を襲い、その腕輪を持ってる人にも触る事が出来なくなる物らしい。
それを知っても、リリシアーナはその腕輪を手放せなかった。
リリシアーナにとって、その腕輪は最愛の母の形見。
貴族の義務を学び始めたリリシアーナは、この家を継がなくてはいけない存在。
妖精に拐われる可能性は、潰しておかなければいけないのだ。
そんなある日。
リリシアーナはあまり遭遇する事の無い、妹を見掛けた。
だが、明らかに様子がおかしい。
顔色は白を通り越し、土気色だし、動きがぎこちない。
リリシアーナはフィオナに近付こうとしたが、妖精達はリリシアーナを止める。
「行かない方が良いよリリィ。あの子、死んでるから」
「何であの子は動けてるんだろう?気持ち悪い」
「同じく、気持ち悪い~」
リリシアーナがよくよく見れば、顔色だけで無く、その瞳は濁っている。
リリシアーナは怖くなって、父親にその事実を伝えたのだが、父親は信じてくれない。
『何を言っているんだ。妙な言い掛かりは寄せ』『死んでいたら医者が気付く。そのような報告は受けていない』『下らない事ばかり言うんじゃない。そんなに妹が疎ましいのか?』
そして、数少ない侍女達も、酷い事を言う姉だとばかりに距離を置く。
家の中では、誰もリリシアーナに構わなくなった頃、三人の妖精達が使用人に化け、リリシアーナの傍に付いた。
妖精には、惑わしの魔法が使える。
自分達に関してのみ、記憶を捏造したり、消去したりも出来るのだ。
妖精達は、嘘は吐かないが、惑わす事は多々ある。
だが、愛し子に関しては、誠実に接する事が多い。
後々嫌われたり、妖精の王や女王にお叱りを受けたくないからだ。
大昔、それで愛し子を泣かせたり、嫌われたりした事があったと言われているからでもある。
だから、誠実に接する妖精達に、心を傾けるのは普通の事だ。
婚約者がフィオナの部屋に出入りし始めた頃。
リリシアーナは妖精達の国に行きたいと、強く願うようになった。
だが、それでも家を捨てる気にはなれなかった。
家の敷地に小さな森があり、そこに母親の墓が有る為だ。
母親が亡くなってから欠かさず毎日、早朝に母親の墓へと足を運んでいたリリシアーナの心を引き留めていたのは、幼い頃の母の愛情と、母の言葉だったから。
家を出ろと言われた日、リリシアーナは母親の墓へと最後に足を運んだ。
形見の腕輪を手放す為に。
三人の妖精は、妖精の王が遣わした妖精達だった。
三人の妖精達は、王様はリリシアーナを快く受け入れてくれると言っていたけど、一時的とは言え、妖精を拒絶していたのに、そんな簡単に許して貰えていいのだろうかと心配だった。
リリシアーナは寂しかった。
リリシアーナを溺愛してくれていた母が死に、フィオナは生まれたが、身体が弱く、直ぐに熱を出したり嘔吐したりする為、何か有っては大変だと、侍女に阻まれ近付けない。
父親は仕事が優先で、時間が空けばフィオナの様子見。
リリシアーナに構うのは、食事時の僅かな時間で、それさえも仕事で潰される事が多い。
常に愛情を示していた母親が居なくなり、寂しくなるのは当然だろう。
だから、妖精達に話し掛けた。
自分から距離を置いて、拒絶したにも関わらず。
妖精達が嫌うナナカマドの腕輪をしたままで。
妖精達はリリシアーナに近付きはしなかったが、笑顔で会話に応じてくれた。
それからリリシアーナは、腕輪を外す事は出来なかったが、一人になると決まって妖精達と他愛の無い会話をした。
妖精達はリリシアーナに触れる事は出来なかったが、徐々に距離が近くなる。
妖精達にとって、ナナカマドの腕輪はとても怖い物で、触れると激痛が全身を襲い、その腕輪を持ってる人にも触る事が出来なくなる物らしい。
それを知っても、リリシアーナはその腕輪を手放せなかった。
リリシアーナにとって、その腕輪は最愛の母の形見。
貴族の義務を学び始めたリリシアーナは、この家を継がなくてはいけない存在。
妖精に拐われる可能性は、潰しておかなければいけないのだ。
そんなある日。
リリシアーナはあまり遭遇する事の無い、妹を見掛けた。
だが、明らかに様子がおかしい。
顔色は白を通り越し、土気色だし、動きがぎこちない。
リリシアーナはフィオナに近付こうとしたが、妖精達はリリシアーナを止める。
「行かない方が良いよリリィ。あの子、死んでるから」
「何であの子は動けてるんだろう?気持ち悪い」
「同じく、気持ち悪い~」
リリシアーナがよくよく見れば、顔色だけで無く、その瞳は濁っている。
リリシアーナは怖くなって、父親にその事実を伝えたのだが、父親は信じてくれない。
『何を言っているんだ。妙な言い掛かりは寄せ』『死んでいたら医者が気付く。そのような報告は受けていない』『下らない事ばかり言うんじゃない。そんなに妹が疎ましいのか?』
そして、数少ない侍女達も、酷い事を言う姉だとばかりに距離を置く。
家の中では、誰もリリシアーナに構わなくなった頃、三人の妖精達が使用人に化け、リリシアーナの傍に付いた。
妖精には、惑わしの魔法が使える。
自分達に関してのみ、記憶を捏造したり、消去したりも出来るのだ。
妖精達は、嘘は吐かないが、惑わす事は多々ある。
だが、愛し子に関しては、誠実に接する事が多い。
後々嫌われたり、妖精の王や女王にお叱りを受けたくないからだ。
大昔、それで愛し子を泣かせたり、嫌われたりした事があったと言われているからでもある。
だから、誠実に接する妖精達に、心を傾けるのは普通の事だ。
婚約者がフィオナの部屋に出入りし始めた頃。
リリシアーナは妖精達の国に行きたいと、強く願うようになった。
だが、それでも家を捨てる気にはなれなかった。
家の敷地に小さな森があり、そこに母親の墓が有る為だ。
母親が亡くなってから欠かさず毎日、早朝に母親の墓へと足を運んでいたリリシアーナの心を引き留めていたのは、幼い頃の母の愛情と、母の言葉だったから。
家を出ろと言われた日、リリシアーナは母親の墓へと最後に足を運んだ。
形見の腕輪を手放す為に。
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