英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~デ・フォン領域~

魔法の誓約書と宣誓書

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 そんな事を話してたら、隊長室の部屋の扉がノックをされる。

「レヴァーノ隊長、私です」

 噂をすれば、アル兄だ。

「ああ、入れ」

 扉が開き、アル兄が入室してくる。

「ラル、そちらは?」

 僕が見知らぬ人を連れていると、他の団員から聞いたのかな?

「こっちはリウリク=ウィルク、凄腕の錬金術師。リウリク、あっちは有名なアーヴェル=デフォルト様。僕はアル兄って呼んでる。言わずと知れたフィルゼンの領主で、風の長と契約してる風使い。特部の副隊長でもあるよ」
「初めまして。彼が噂の幽霊ですか?」
「うん、そうだよ」

 後半は僕にたずねるように聞いて来るから頷くけど、アル兄は解ってて聞いてるからね。
 因みに、『誰だ』って聞いてたレノ兄も、初見で気付いてたりする。金髪、長髪、長身、眼鏡、更には白衣って報告されてる上に、依頼を承諾した僕が連れて来てるのに、解らない筈がないからね。
 二人共、リウリクが状況を読み込めてないって気付いて理解しわかり易いように言ってるだけだから。

「それで、どうなっているんですか?」

 アル兄の問いに、レノ兄が即席で作った誓約書を見せる。

「二人も確認しておけ。反故にするとそれなりのペナルティーがあるから気を付けろ」
「魔法誓約書だ♪確かにこの方が信頼性があるね」
「魔法誓約書って……あれか。高位神官が使える神聖魔法込みの誓約書。破れば死ぬ事すらあると言う……」
「それの軽い物だ。破れば腕が動かなくなるとか、その程度だ」
「全然軽くないよな?!それ!」
「死ぬ事は無いから軽いだろう。そもそも、反故にしなければ良いだけだ」
「そりゃあそうかも知れねぇが……って、お前はいいのかよ?!」
「えっ?僕は全然問題無いよ?」

 そもそも、問題が有ればレノ兄には頼まないよ。魔法誓約書じゃなくても、レノ兄の名前入りなんて物は、他の誓約書とは訳が違う。王族でも裁ける人なんだから、誓約破った段階で裁判で有罪確定したのと同じぐらいの効力があるからね。その分、誓約外の人達がちょっかい出して来た場合、裁く事も可能になる。それが魔法誓約書なら、介入段階で魔法が働き、邪魔しようとすればする程散々な目に合う。病死や事故と言った寿命なら、誓約者死亡で誓約が無くなるけど、殺意のある出来事なら介入者と判断されて、介入度合いにより、それ相応の反撃魔法が来るから介入出来なくなるんだよね。

「期限はどうするんですか?」
「期限は人形が一体作れるまでで良いかな?後、リウリクは誓約書とは別に宣誓書も作っといた方がいいかな?」
「宣誓書?」
「うん。人形を悪用しない、貸さない、譲渡しないって事を魔法宣誓書に記して置けば、盗られる事も他者に利用される事もないから。身の危険を感じて使用する分は問題無いし、悪用しないって明記しとけば誰からも文句は出ないよ」

 宣誓と誓約の違いは、魔法対象が一人か複数かで、宣誓書や誓約書はサインした本人なら、見たい時に見る事が可能だ。そしてこの宣誓書の利点は、本人が守り続ける限り、他者の介入を徹底除外出来る事と書き換えが出来ない事。
 悪事に誘われても断れば良いだけで、もし、相手が騙して人形を奪おうとどんな手段を用いても、この宣誓書がある限り奪う事は出来ない。期限を無期限にすれば、リウリクが死んだ後も、誰も手出し出来なくなる。
 その事をリウリクに話せば、物凄く感心しだした。

「他者に奪われないのはいいな。死んだ後も誰にも使えないってのが気に入った。自分が作った人形ものが、悪用や武器にされんのは嫌だからな」

 人形使いマリオネットの人形は、兵器として使う事も可能だ。だからこそ、古代の人形使いは人形を他者の手に渡らないよう工夫した。
 その為、レシピも何らかの制限が掛かっている事が多い。例えば、人形を金儲けの道具としか思ってない相手なら白紙、もしくは人形が製作者をターゲットにするのろいの人形とか。
 とある文献には、そういった嫌がらせ目的のレシピ作成が白熱したとか何とか。
 技術は継承しても良いけど、使い手次第でどうにでもなる人形が、悪の遺物と後世に言われたく無いって古代錬金術師達は思ったみたい。一体でも悪用されたら他もそうなる可能性はあるんじゃないかと疑いが生まれるからね。
 だから、リウリクが人形を金儲けの道具としか思ってなかった場合は、人形が呪いの人形になる可能性が限りなく高い。でも、宣誓書にサイン出来るぐらいなら、レシピは本来の役割を果たすだろう。
 因みにレシピはある程度の腕がないと解読不能。一般人が見ても解らないようにしてあるよ。ただし、僕は精霊人だから、仕掛けのあるレシピは視て解るし、専門用語も解るけどね。
 そんなこんなでリウリクに誓約書にサインをしてもらった。
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