英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~デ・フォン領域~

ジオーヌの奮闘 2

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「ジオーヌ、悔しいのは解るけど、この兄さんの守備力、防御力はメチャクチャ高いから。この兄さんの防御をぶち抜いて攻撃を加えられるのなんて極限られた人のみだからね。ジオーヌがいくら頑張ってもそこまでは到達出来ないと思うよ。ここにいる兄さん達は各々何かしらのエキスパートで、風の長と契約してる人もいるぐらいだから」
「風の……?精霊の長ですか?!」
「アル兄がそうだよ」

 古代の長達と比べるとどうしても劣ってしまうけど、古代と現代とでは、世界の魔力密度や濃度が違うから仕方ないんだよね。
 とは言え、世界の自属性を纏められるのが長だから、古代で名を馳せた高位精霊よりも現代の長の方が高位になる。
 精霊王は古代精霊しかいないが、次に古代の長、現代の長、古代の高位、現代の高位と続く。古代の間に現代をと、交互に入れる感じかな。ただし古代種は、長を除外した現代の上の位とほぼ同列に近い魔力を持ってるんだけどね。

「それに、全属性に好かれてる精霊使いの兄さんもいるし、ここにはいないけど、龍人や時空魔法の使い手までいるから」

 時空魔法使いの兄さんはイセル=エファナ様と言って、僕はイル兄って呼んでるけど、時空魔法の使い手はかなり希少だ。時空魔法は無属性なんだけど、普通の人間には使えない。けど、何故使えるかと言うと、属性のパワーバランスで均等な属性があるからだ。イル兄は属性で言えば水なんだけど、他に地と風の属性を持ち、この二つのパワーバランスが同じ魔力量だったりする。突出してるのは水なんだけど、他の二つ、まぁいないだろうけど同じく三つが均等の魔力である場合に限り、こうした特殊な魔法が使える場合があるんだよね。ただし、そうは言っても、特殊過ぎて殆どの人が使えないのが現実。均等な方の魔力量も少なすぎたら意味ないからね。そんな中で、イル兄は時空魔法を使える希少な人間だ。アイテムボックス要らずな人だよ。
 古代だと無属性魔法を使える人達が今よりもずっと多く存在したから、古代書や記録石に古代文字で残ってるけど、古代語の読めなかったイル兄は、ほぼ独学に近い。キスト兄が入隊した時に龍人と知り、古代語を教えて欲しいと頼み込んだらしい。

「龍人……時空魔法使い……」

 呆然とするジオーヌとリウリク。どうやらリウリクも詳しくは知らなかったみたい。

「うん、そんな人達の集まりだから、落ち込んだりするだけ無駄だよ?要は、自分がどこまで近付きたいかって事だから。僕だって、まだまだ上を目指すラファス兄に、少しでも早く追い付いて、肩を並べたいからね」
「まだまだ上を目指してんのかよ、お前の兄貴は?既に最強だってのに……」
「う~ん、ラファス兄からすれば最強じゃないって言うと思うよ?僕達の父さん、とっても強かったらしく、ラファス兄は今でも勝てる気がしないって言って訓練してるから」
「……強かったらしく?」
「ああ、父さんは僕が生まれる前に病で死んでるから、僕は会った事無いんだよね。父さんの知り合いにはよく似てるって言われるけど」

 外見だけは、父さんの子供の頃はこんなんだったんだろうなと思わせるぐらいに色違いの瓜二つらしいけど、性格は似てないらしいよ?ラファス兄が性格似なくて良かったって言ってるし、父さんの知り合いにも性格は似てないって言われるから。

「あー、悪い……」
「え?ああ、全然?僕にはラファス兄がいるし、片親がいないなんて、別に珍しくもないよ」

 騎士団に入ってる人なんか、いつ命を亡くすか分からないし、片親がいない子供や両親がいない子供等はそこそこいる。
 まぁ僕の村では珍しいかもだけど、最初からいないし、ラファス兄が父親役してくれるし、ラファス兄大好きだし!で、僕的には問題無いんだよね~。

「まぁ僕の事は置いといて、これから暫く兄さん達が協力してくれるから、頑張ろうね♪」

 その日から、ジオーヌの聖騎士団での訓練が始まり、特部の兄さん達は時間を調整し、交代で僕達の面倒を見てくれる。ジオーヌが休憩中の時は僕の相手をし、闘い方を見せる事によって、覚えさせる。因みにその時の僕の武器えものはジオーヌが使用出来る物。今は僕の為の訓練じゃなく、ジオーヌの為の訓練だからね。

「ラファールさん、私とも手合わせして下さい!」
「う~ん、僕、手加減苦手なんだよね。遊びで王国騎士団の人達と戯れる事はあっても、一対一は僕よりも上の人とじゃないと危ないから」
「誰と遊んでんだ誰と」
「王国騎士団?どういう遊びだ?」

 リウリクとレノ兄に突っ込まれる。今日のジオーヌの相手はレノ兄でした。レノ兄は体術や飛び道具類いが得意なんだよ。銃やボウガンを使用してる所を見た事があるけど、走りながら全部をど真ん中に当ててたよ。

「東の王国騎士団の人達と、大体十人前後で僕を10ジゼルム(※10秒間)身動き出来ないようにするか、意識を奪うかで、各々得意な武器や魔法を使用しても構わない、というルールで、1ゼティルム(※1時間)ずつ相手になってもらうの。相手も鍛えられるし、僕も複数戦の経験積めるし、結構楽しいよ♪」
「成程、そういう鍛え方も有りか……。だが、1ゼティルムも持つのか?その王国騎士達は」
「参加した場合、途中リタイアは出来ないようになってるよ。倒れたら即回復魔法掛けられて時間終了まで強制参加だし、僕からのヤジも飛びまくるから、時間ギリギリまで粘るよ」

 あれ、レノ兄考え込んじゃった。

「ラル、明日ここでその遊びを実践してみろ。団員達の訓練時間に割り込む。ジオーヌも見学しておけ、かなり参考になると思うぞ」
「ん~、じゃあ、僕の武器はジオーヌと同じ物でいくよ。僕のスピードと同等は無理でも、動きは参考に出来るだろうから」

 僕は魔法が使えないけど、ジオーヌは多少なら使えるからね。
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