英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~デ・フォン領域~

魔物退治とプレゼント

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 あの兄さんの身体がただただ降下し、中央へと引き摺られ落ちていく。

「まっ、まだなの?!」
「まだだよ。ってか、まだ魔物は顔すら出して無いじゃん。言っとくけどそいつ、一軒家程の大きさはあるからね。魔法も通常攻撃も殆ど効かない。その癖こっちの身動き封じる粘液吐くから、結構たちが悪いかな?イファデラと比べればまだマシだろうけど」
「そそそっ、そんな魔物からどうやって身を守れって言うのさ?!無理無理無理!!僕には無理だからね?!!」

 理解しわかってるよ、そんな事。

「だからボク達の前を歩くな、って言ったのに、聞かなかったお前が悪いんじゃないか。この二人はちゃんと言う事聞いてるから、魔物の巣に落ちる事無く無事なんだよ?年上のお前が忠告無視るからそうなったんだ。ねぇ、ちょっとは反省してんの?してないなら、このまま放置して先に行くよ?」
「してます、してます、してますからぁ~~~!!ほっ、放置だけは嫌だーーーっっ!!!」
「煩い。それなら黙ってろ」
「?!!」

 魔物の巣の中央から、魔物の脚が一本、二本。砂の中から徐々に現れる。

「ひぃいぃい~~~っっ!!!」
「本っ当、煩い奴だなぁ」

 そう言いながらも、トゥー兄が紐を構える。
 魔物が全体を現した所でトゥー兄が紐を勢い良く下方に向けて降り下ろす。
 その束ねられた紐が一本の細長い糸のような形状になり、トゥー兄の意思通りに物凄いスピードで、魔物の額にある拳大の魔石のような核へと向かい、ピンポイントで核に到達したかと思った瞬間、核が割れ、魔物の頭を貫通する。

   ーー!?!!!ーー

 魔物は声を発する事無く消えていく。多分、魔物自体、自分に何が起こったのか、理解出来ないまま消滅していったのだろう。

「さすがトゥー兄♪凄いなぁ、ピンポイントだよピンポイント♪しかもあれ、核のド真ん中だよねぇ!この距離でも物ともせずに、一撃必殺♪良いなぁ~トゥー兄格好良い!!」

 僕が思いの丈を口にすれば、トゥー兄が紐を回収して、僕の頭を撫でてくれる。

「やっぱラルは可愛いなぁ」
「ななななっ……何が起きたの?!?」
「煩い。もう終わったよ」

 トゥー兄のあの兄さんに対する塩辛対応!そんなトゥー兄も大好きさ♪

「すっ……凄い……」
「……」

 セスの呟きに、アーヤは声も出ないのか、ただひたすらコクコク頷いている。

「おぉ、良い反応♪やっぱこのぐらいの年の子は可っ愛いなぁ~。ボクの弟なんて、小さい頃は可愛かったけど、今じゃ全然だしね~。そうだラル、これあげるよ」

 トゥー兄が僕にくれた物。

「さっきの魔物のドロップアイテムだぁ~!魔物の粘液!わぁ~い、ありがとう~♪」

 僕の声が聞こえたのだろう。あの兄さんが声を張り上げる。

「そんな物欲しがって、何が嬉しいのさ?!そんな事より、早く引き上げてよ~!」

 ムッ、そんな物?何が嬉しい、だって?

「何寝惚けた事言ってんの。これ、凄く貴重で有用性も有るんだから。売ると王都の一等地が買える値段で売れるんだから!」
「……はぁ?!」
「トゥー兄は簡単にドロップ出来るけど、それでも十体に一回ぐらいの確率で、あいつの弱点を一撃必殺で倒さないと絶対貰えない、特殊条件付きのドロップアイテムなんだから!ってか、手なんか貸すか!自分で勝手に落ちた癖に!」
「魔物は倒されたんだから、自力で登ってきなよ。砂山を登る感じで登れるんだから。それともここに放置されたい?ボクはどっちでも良いけど」
「のっ、登ります!登らせていただきます~!」

 馬ー鹿、馬ー鹿!物の価値も分からない癖に、口出しすんな!僕が子供だからって嘗めやがって!本当ムカつく!!

「ラル、これもあげるよ。メカエンジニアとして使える素材だろ?」

 トゥー兄が、魔物の鎧部分もくれる。これも弱点のみで倒した場合のみに貰える部分で、武器にも防具にも使える優れもの素材だ。ただし、鉄鋼石を使った武器でも中々斬るのが難しい物だから、ちょっとしたコツがいるけどね。

「わぁ~い!トゥー兄大好き~♪」

 本当、誰かさんとは大違いだ!!今度ラファス兄に頼んで多めに手料理作って貰おう~っと♪♪♪

「この砂漠の欲しい素材があるなら言いなよ?ボクが持ってる物ならあげるし、無いなら取りに行けるから。そこの二人も遠慮せずに言いなよね。見たい物、知りたい事もドンと来い!」

 本当に特部の兄さん達は僕に甘いなぁ♪僕はそれで得をするから良いけど、今度お礼に何か面白い物でも作ってあげようっと♪
 特部の兄さん達にも僕の作った物は性能が高いからと重宝がられてるしね♪この兄さんには絶対やらないけど。
 何作ろうかなぁ、今度皆から、色々アイデアも貰おうっと♪
 そして僕達は、巣から這い上がってきた兄さんに休みを与える間もなく、意気揚々と、砂漠の旅を再開した。
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