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~デ・フォン領域~
砂漠の貴重な体験
「今日はここで野宿しよう」
トゥー兄の呼び掛けで、僕達はオアシスでテントを張る。と言っても、地方の地図にすら載らないような、小さなオアシスだ。
「オアシスって安全なの?魔物も寄って来るんじゃないの?」
「来るに決まってるだろ。ここは街中じゃ無いんだから。ディール避けはするけど、他はしないから、寄って来る事はあるけど、手は出さない事。ここは中立な場所だから、こっちから手を出さない限りは安全だから」
トゥー兄があの兄さんに返答してからセスを見て、にっこり笑う。
「君は絵を描くんだってね。なら、ここはとても良いと思うよ。間近でリックルや、野性動物達の観察が可能だから。違う種の生き物が同じ空間にいるなんて、滅多に無い光景だからね。大声出して脅かしたり、急に動いたりしない限り、彼等は襲って来ない。ボクが保証するよ」
「違う種の共存……」
「そう。ここだけは特別。少し離れた場所だと、食う物、食われる物に別れる動物でも、ここではそれをしないと言う暗黙のルールが有るんだ。ディールだけは例外だけど、ディール避けを使うと、動物達はそれに気付くから、沢山のリックルや野性動物が来るんだよ」
テントを張り終え、のんびりと寛いでいると、あちこちから、動物の姿が見えてくる。
「あ、凄いな。あれとあれ、遭遇率がかなり低いリックルだ」
僕が指差しして教えると、隣から大声が響く。
「えっ、大丈夫なの?!」
「大声出すな。トゥー兄が言っただろ。猿轡噛まされたいの?」
僕がそう言えば、口を押さえ、ブンブンと首を横に振る兄さん。
最初っからそうしてろ。
「凄いな。ここは動物達にとっての楽園なんだ……」
「今日はディールの現れる確率が低くなると解っているから、まだまだ集まるよ。小さな動物も、安心して出てくるからね」
小声で話すセスとトゥー兄。まだ夕方なので、どちらかと言えば夜行性の多い砂漠地帯だと、まだ活動してない動物も多いのだろう。
「後、日が落ちれば自生してる植物の花も、咲き出す物がいくつか有るよ。夜にしか咲かない花で、淡く光輝くから、松明は要らない。幸いディール避けも、火に焼べるタイプの物では無いからね。火を焼べると、咲かなかったり、光り輝いてても判らなかったりするから、この砂漠では、極力避ける事をお勧めするよ」
こう言った情報も、砂漠の民ならではだ。
そうして少しだけ時が経てば日が暮れて、砂漠に吹く風は熱風から涼やかなひんやりとした風に変わる。
完全に日が沈んだその時、周囲から淡い光りが辺りを包む。
「「「わぁ……」」」
星々の光りと植物の光りで、周囲ははっきりと見え、時間が過ぎればレアなリックルや、普段見掛ける事の無い固有種が続々と現れ、悠然と僕等の直ぐ横を歩いているのだ。
しかもその内の数種類が僕の所に寄ってきて、まるで挨拶をするかのように、僕に身体を擦り付けて来る。
「ずっっ!!!」
あの兄さんが、大きな声を出そうしたのを、トゥー兄が魔力の紐で、その口を縛りあげていた。
「大声出すなって言ったよな?」
トゥー兄は小さな、けれど、怒気を含んだ声であの兄さんに言う。
僕は構わず、寄ってきたリックル達を一撫でして、挨拶を返す。
「こんばんは。態々挨拶有難う♪」
僕が小声でお礼を言えば、尻尾をパタンと振って、返事を返す子もいる。
「僕の友達にも、触らせてくれたら嬉しいな」
僕が小声でそう言えば、頭の良い子達は、アーヤやセスの方にも、挨拶をしに行ってくれる。
(うん。賢いなぁ。僕の友達って言ったら、ちゃんとあの兄さんだけ避けて行った。まぁ、あの兄さんが大きな身振り手振りして、縛られた口でん~ん~唸ってる所為だけど、自業自得だよね?)
因みに、ちゃんとトゥー兄の所にも撫でられに行ってるし、触られるのが嫌いな子達は少し離れた場所から鳴き声を出したり、頭を下げたりしてる。
こういう時は、自分の血筋に感謝したくなる。彼等の言いたい事を何となくだけど理解出来るからね。
僕達は、モフモフまったりと、貴重な時間を過ごしていく。まぁ、中にはモフモフでは無く、ツルツルした手触りや、ゴツゴツした子もいるけど、大した問題では無いからね。
そうして僕達の貴重な時間はゆっくりと流れ、色んな子達が入れ替わりにやって来て、幻想的な光景の中で、ゆったりと時を楽しんだ。
「明日も有るから、夜更かしは程々にね?」
トゥー兄が、一応そう言って声を掛けてくれる。気付けば、もう、真夜中の時間帯だ。
セスも花や星明かりの下で、スケッチしていたのだが、時計を確認して、驚いてる。
「有難う御座います。もう少しで終わるので、俺は、今描いてる分だけ描いたら寝ます」
「じゃあ僕はトゥー兄の傍で寝るよ。トゥー兄、3ゼティルム(※3時間)程で起こして。一応僕も見張りするから」
「了解。じゃあ3ゼティルム経ったら起こすよ」
「あの、僕も、見張りを……」
「任せる訳無いだろ。お前、何が危険かなんて判んないだろうが……」
トゥー兄が冷ややかな声で、あの兄さんの申し出を却下したのは、当然の事だと思うよ。
トゥー兄の呼び掛けで、僕達はオアシスでテントを張る。と言っても、地方の地図にすら載らないような、小さなオアシスだ。
「オアシスって安全なの?魔物も寄って来るんじゃないの?」
「来るに決まってるだろ。ここは街中じゃ無いんだから。ディール避けはするけど、他はしないから、寄って来る事はあるけど、手は出さない事。ここは中立な場所だから、こっちから手を出さない限りは安全だから」
トゥー兄があの兄さんに返答してからセスを見て、にっこり笑う。
「君は絵を描くんだってね。なら、ここはとても良いと思うよ。間近でリックルや、野性動物達の観察が可能だから。違う種の生き物が同じ空間にいるなんて、滅多に無い光景だからね。大声出して脅かしたり、急に動いたりしない限り、彼等は襲って来ない。ボクが保証するよ」
「違う種の共存……」
「そう。ここだけは特別。少し離れた場所だと、食う物、食われる物に別れる動物でも、ここではそれをしないと言う暗黙のルールが有るんだ。ディールだけは例外だけど、ディール避けを使うと、動物達はそれに気付くから、沢山のリックルや野性動物が来るんだよ」
テントを張り終え、のんびりと寛いでいると、あちこちから、動物の姿が見えてくる。
「あ、凄いな。あれとあれ、遭遇率がかなり低いリックルだ」
僕が指差しして教えると、隣から大声が響く。
「えっ、大丈夫なの?!」
「大声出すな。トゥー兄が言っただろ。猿轡噛まされたいの?」
僕がそう言えば、口を押さえ、ブンブンと首を横に振る兄さん。
最初っからそうしてろ。
「凄いな。ここは動物達にとっての楽園なんだ……」
「今日はディールの現れる確率が低くなると解っているから、まだまだ集まるよ。小さな動物も、安心して出てくるからね」
小声で話すセスとトゥー兄。まだ夕方なので、どちらかと言えば夜行性の多い砂漠地帯だと、まだ活動してない動物も多いのだろう。
「後、日が落ちれば自生してる植物の花も、咲き出す物がいくつか有るよ。夜にしか咲かない花で、淡く光輝くから、松明は要らない。幸いディール避けも、火に焼べるタイプの物では無いからね。火を焼べると、咲かなかったり、光り輝いてても判らなかったりするから、この砂漠では、極力避ける事をお勧めするよ」
こう言った情報も、砂漠の民ならではだ。
そうして少しだけ時が経てば日が暮れて、砂漠に吹く風は熱風から涼やかなひんやりとした風に変わる。
完全に日が沈んだその時、周囲から淡い光りが辺りを包む。
「「「わぁ……」」」
星々の光りと植物の光りで、周囲ははっきりと見え、時間が過ぎればレアなリックルや、普段見掛ける事の無い固有種が続々と現れ、悠然と僕等の直ぐ横を歩いているのだ。
しかもその内の数種類が僕の所に寄ってきて、まるで挨拶をするかのように、僕に身体を擦り付けて来る。
「ずっっ!!!」
あの兄さんが、大きな声を出そうしたのを、トゥー兄が魔力の紐で、その口を縛りあげていた。
「大声出すなって言ったよな?」
トゥー兄は小さな、けれど、怒気を含んだ声であの兄さんに言う。
僕は構わず、寄ってきたリックル達を一撫でして、挨拶を返す。
「こんばんは。態々挨拶有難う♪」
僕が小声でお礼を言えば、尻尾をパタンと振って、返事を返す子もいる。
「僕の友達にも、触らせてくれたら嬉しいな」
僕が小声でそう言えば、頭の良い子達は、アーヤやセスの方にも、挨拶をしに行ってくれる。
(うん。賢いなぁ。僕の友達って言ったら、ちゃんとあの兄さんだけ避けて行った。まぁ、あの兄さんが大きな身振り手振りして、縛られた口でん~ん~唸ってる所為だけど、自業自得だよね?)
因みに、ちゃんとトゥー兄の所にも撫でられに行ってるし、触られるのが嫌いな子達は少し離れた場所から鳴き声を出したり、頭を下げたりしてる。
こういう時は、自分の血筋に感謝したくなる。彼等の言いたい事を何となくだけど理解出来るからね。
僕達は、モフモフまったりと、貴重な時間を過ごしていく。まぁ、中にはモフモフでは無く、ツルツルした手触りや、ゴツゴツした子もいるけど、大した問題では無いからね。
そうして僕達の貴重な時間はゆっくりと流れ、色んな子達が入れ替わりにやって来て、幻想的な光景の中で、ゆったりと時を楽しんだ。
「明日も有るから、夜更かしは程々にね?」
トゥー兄が、一応そう言って声を掛けてくれる。気付けば、もう、真夜中の時間帯だ。
セスも花や星明かりの下で、スケッチしていたのだが、時計を確認して、驚いてる。
「有難う御座います。もう少しで終わるので、俺は、今描いてる分だけ描いたら寝ます」
「じゃあ僕はトゥー兄の傍で寝るよ。トゥー兄、3ゼティルム(※3時間)程で起こして。一応僕も見張りするから」
「了解。じゃあ3ゼティルム経ったら起こすよ」
「あの、僕も、見張りを……」
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