英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~デ・フォン領域~

砂漠のご馳走?

 中央デ・トルト大陸の東砂漠での旅も終盤に近付く頃、砂漠地帯では割りとポピュラーな魔物と遭遇した。
 砂漠が主な棲息地で、水源の少ない場所でも極稀に見掛けるサボテンの魔物だ。
 少し離れた砂の中から姿を現し、棘を投げ付け襲ってくるのだが、クネクネと本体部分を動かすし、すばしっこくて砂の上を滑るように動き回り、針のような棘を飛ばし、ある程度のダメージを食らうと逃げようとする。
 その上逃げられないと悟ると、仲間を呼び寄せ、一定数以上になると合体し、針と言うよりは槍だと言える棘で串刺しにしようとする魔物で、出現率は比較的低い方だが、遭遇するとかなり厄介な魔物の一種だ。
 弱点は、その身に一つだけ付いてる蕾か花で、それを潰せば良いんだけど、飴玉サイズなので、自信の無い冒険者や一般人には、手持ちの水で注意を引き付け、逃げる事をお奨めするね。
 因みに、このサボテンの魔物のドロップアイテムは、サボテンの肉片と蕾や花で、蕾や花は色に依って効能が違う薬の原料になる。
 そしてサボテンの肉片は、使い道が無い……と思われているけど、サボテンの倒し方に依って、とんでもない珍味になるのだ。
 まぁ、ぶっちゃけ、サボテンの核となる蕾や花をサボテンから切り離した上で、蕾や花を潰せば良いだけ。
 ただし、先に説明したように、この魔物は物凄くすばしっこい。
 それに、常にクネクネと踊ってるような動きをするので、核となる蕾や花を切り離す事自体が物凄い難易度となるんだ。
 そんな腕の立つ人達はかなり限られて来るので、食べられる事自体知られていなかったようだ。
 何せ切り離さずに倒した場合、そのサボテンの肉片は物凄く苦くて、食べられた物ではないからね。
 手持ちの食糧が尽きそうになった冒険者が、たま~に食べようとするそうだが、あまりの不味さに体調不良を起こすらしい。
 大食いのトゥー兄はサボテンの魔物が食べられるとは知らなかったらしく、砂漠で食糧の確保が難しい……と落ち込んでいた為、僕がラファス兄に、サボテンの魔物って美味しく食べれたよね?と話を振り、トゥー兄があんな不味い物、美味しい食糧になるの?!と食い付いてきた事も有ったなぁ。
 そしてそのトゥー兄は現在、サボテンの魔物の出現に目を輝かせていたりする。

「やった!食糧ゲット♪食材自らがやって来た!さぁ、存分に仲間を呼んで貰うからね♪」

 それを聞いた三人は各々の反応を見せる。

「えっ……サボテンの魔物って食べれるの?」

 セスは恐る恐る僕に聞き、アーヤは僕やラファス兄の話から食べられると知っていて、どんな味なんだろうと思っているのだろう、ちょっと好奇心に満ちた目をサボテンの魔物に向けている。
 そして残りのあの兄さんは、顔を蒼白に染めている。

「いや!食べれないから!!サボテンだよ?!物凄く苦くて不味いって聞いてるから!!食べたらお腹を壊すからね?!そんな事より早く逃げようよ!!」
「煩い。逃げたければ一人で逃げろ」
「サボテンの魔物は美味しいし、トゥー兄が居れば問題ないよ。ただし、特殊な倒し方をするから通常の倒し方では食べれないし、力押しの脳筋には出来ない芸当だから」

 まぁ、僕も出来なくは無い。けど、さすがに剣でやると、核だけでなく肉片も少しだけ斬っちゃう事になるからねぇ。
 そうなるとドロップするのは大小の肉片になるけど、核を切り離した事に変わりは無いから、欠片のような小さい方を食べなければ良いという事なんだけど、折角の珍味が勿体ないから、魔物はトゥー兄にお任せして、僕は魔物の攻撃を弾くだけ♪
 そうしてトゥー兄はサボテンの魔物を呼び寄せれるだけ呼び寄せて、合体した奴も数体いたけど、それも倒し方は同じだし、こっちの方が美味しかったりするので、トゥー兄も僕もご満悦だったりする♪

「ラル、料理は宜しく~♪」
「了解~、って、皮剥いて焼くだけだけどね~♪」

 僕は手早く皮を剥いて、そこいらに転がってる岩の上を軽く拭き、皮を剥いたサボテンの肉片を置く。
 そのままでも暫く置いとけば焼けるけど、ここで火石を使って、同じ岩の上に置けば短時間での調理が可能になる。
 塩を軽く掛け、両面焼けば出来上がり♪

「よし、出来た♪」

 僕は出来上がったサボテンステーキを配る。
 勿論大活躍だったトゥー兄にはてんこ盛り。トゥー兄の食材だと言えるしね♪
 あの兄さんは食べるの躊躇ってたけど、僕達が食べて旨い美味しいと言ってたら、恐る恐る口にして、その美味しさに喚き出し、もっと欲しそうな顔をしてたけど最初に少しで良いと言ったのは本人だから、追加はしてやらない。

「トゥー兄は凄腕だから難無く入手出来たけど、本来一般人には手が届かない程の高値が付けられるんだから、分けて貰えた事に感謝しなよ」
「たっ……高値?」

 聞き返す兄さんの耳元で、僕はこそっと囁いてやる。

「兄さんが食べた量だけでも、取り扱う店なら数百ガルトで買い取るよ」

 因みに、嘘は言ってない。
 実際、ファーグ商会での買い取り価格はそれぐらいだ。
 僕の言葉を聞いた兄さんは、その値段の高さに相当ビビってた。
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