英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~ライトフォーマー周辺~

不本意ながらの共闘

 チェリクの換金屋に着いて直ぐ、ディールだった魔物の核を少し売る。あまり多く売ると換金出来なくなるからね。
 僕の予想では、昨日倒した大ボスクラスは限度外。魔物の核は、魔物避けや武器、武具の強化等様々な使い方をする為、強い魔物の核は価値が高い。場合によっては王都の一等地を屋敷付きで買える程の物もある。
 そんな大金、村中からかき集めても集まらない。何せここは田舎の村。規模だけで見ればライトフォーマーの方がかなりな大きさになる。と言ってもチェリクは田舎の村の割りには物の流通具合がとても良い。
 国に属さない場所だけど、ここの大陸の王族が僕達フォーゼ家と疎遠にならない様に、チェリクまで護衛の騎士付き馬車が定期便として出てたり、チェリクに商人を送り込んだりするからだ。
 因みに商人からすればチェリクはライトフォーマーで作られた幻のワインと言われるワインが取り置かれる唯一の場所。危険を冒してでも手に入れたがる、この大陸の王族御用達のワインだ。
(多分あの兄さんも定期便を利用して来たんだろうけど、旅人名乗るなら、自分の実力に合った場所に行くのが常識だっての。最高難易度のイファデラ大陸を選ぶなんて、死にに来たのかと言いたいぐらいだ。服装からして中央デ・トルト大陸出身者だと思うけど、非常識にも程があるよ)



 換金を済ませてアーヤと喋りながら外を歩いていると、いきなり大きな声がした。

「あんまり動きまくっちゃダメじゃないか!道に迷ったとか、外に出て魔物に出会ったんじゃないかって心配したんだからね?!」

 ゼハゼハと息を切らせ、汗だくなさっきの兄さんが僕達に駆け寄って来て僕を睨む。

「いくら君が男の子で、男の子がいるからっていっても、君達はまだ子供なんだ!男の子が女の子を守るのは当たり前だけど、君がやられたらこっちの女の子だって危ないんだからね?!分かった?!」
「……」

(あー……。本気で心配してるみたいだ……。でも、僕も一応は女……。性別学的上はね。あー、でも、ま、いっか。確かにこの姿じゃ男の子に見える……ってか、いつも男の子と間違われてるしな。それに、女の子扱いされんのも嫌だしね)

「私達の方が詳しいんだから、この辺で迷う筈ないわよ」
「うっ……」

 アーヤの正論に兄さんが言葉を詰まらす。
(アーヤ、さすがナイス突っ込み、鋭い指摘♪こういうアーヤも大好きさ!)
 なんて思ってたら、前方に魔物の気配が。
(前方に三体か。村外れ、一応村の外だけど、村の防御結界緩まってるなぁ。誰か弄ったのか?これじゃあ攻撃魔法使われたら村に被害が出ちゃうよ。この兄さんの前ではあんま戦いたくないんだけどなぁ)

「しゃあない、やるか」

 アーヤをチラ見すればアーヤが頷く。さすがアーヤ。ちゃんと理解してくれている。
 アーヤが付いて来れる速度で僕が走り、アーヤがそれに付いて来る。

「おっ、おい!話はまだ……って、ちょっ、一体何が、ど……」

 息がまだ整ってないのにまた走る事になるなんてね。
(付いて来るのはいいけど、足手まといになんないでよね。――いた!……って、何でまたイカなんだよ!)
 思わず心の中で突っ込む僕。本当、何でだろうね。
 剣を抜き魔物に斬りかかり、足をぶつ切りにする。昨日の魔物と比べればかなり小さい。昨日の半分ぐらいの大きさだ。


   バチバチバチッッ

 魔物の足に、電撃が纏われる。反射で僕は避けそうになる。
(――やばっ!)

   ドンッ!!

「うあっ」

 電撃が僕の身を襲う。丁度その時アーヤがこの場にたどり着いた。

「ラル!」
「――だっ、大丈……夫」

 痺れて飛ばされた動けない僕の代わりにアーヤが僕の作った魔銃弾咆を取り出し発動させ、後から来た兄さんも参戦する。
(まだだ。もう少し。完全に痺れが取れるまで……。あ、あの兄さん電撃弾いた。今後は敵のスピード落ちてる。兄さんの武器は剣だけど……何か……攻撃魔法は持ってないっぽいな)
 僕は兄さんの剣の腕を見て、改めて思う。
(本当、剣の腕も一般評価で中の中じゃん。よくここら辺まで生きて来れたよなぁ……。まぁ魔法が使えるからだろうけど……それでもよくやるよ)

「さて、と。そろそろかな」

(よし!痺れが取れた。戦闘復帰、完全復活♪)
 剣でイカの足をぶつ切りにし、まだ名前も知らない兄さんの背後を取り、自分でやってて不本意だけど、背中合わせで話し掛ける。

「大丈夫?あんま無理しないでね」

 運動不足じゃないのかと問いたくなる程息を切らせた兄さんを置いて三匹のイカに斬り掛かる。
(一匹、二匹……三匹、っと!)
 イカの胴体を真っ二つにしてその姿を消滅させる。
 戦闘終了したのはいいけど……。

「――……大した事ないレベルの魔物だったなぁ」

 ここらで見掛けるにしてはお粗末な魔物だった。まぁあの電撃の威力は強かった方だけど。
 僕の言葉にカチンと来たのだろう。どうやらお怒りのようだ。
(何だって?!嫌味か?んのガキィ、何様のつもりだ!!……って落ち着け僕、相手はガキだ、ガキ。怒っちゃいけない。どんなに憎ったらしいクソガキでもだ。しかしこれぐらいの嫌味は言い返してやるぅ!)

「最初っから痺れて動けなかったのは誰だったんだろうねぇ。女の子だってメカらしき物で攻撃してたのに」
「……」

(あー……嫌味のつもりじゃなかったんだけどなぁ……)

「でも、これを作ったのはその子よ」

 アーヤが兄さんに敵意を向ける。
(はいぃ?!何だってぇ?マジっすか?!)
 兄さんが僕をマジマジと見る。
 やっぱこの兄さん何か嫌い。
感想 3

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