英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~ライトフォーマー周辺~

壊れたからといって捨てるのは間違いです

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「ねぇ、ラファール。このヘグルス変換機器って壊れてる可能性が高いんだよね?」

 兄さんが深刻そうな顔で僕に聞いてくる。
(何か……嫌な予感しかしないんだけど?)

「まぁね。兄さんが未だに体調が優れないっていうのなら機器が壊れてる可能性の方が高いと思うけど?」
「じゃあ、買い替えた方が良いよね?」
「……」

(だから中央大陸に行くって言って……まさか、この大陸で買い替えるつもりか?つもりなんだな、この兄さん……)
 僕が心底呆れた声を出す。

「一応聞くけど何処で買い替えるつもりなの?」

 僕の質問に当然のようにあっさり答える兄さん。いやいや、当然のように答えんな?

「え?勿論ここか、王都辺り?」
「うん。チェリクここには売ってないよ」
「じゃあ王都ならあるよね?そこで買い替えよう」
「……で、買い替えてどうする気?」

 僕の言葉に不思議そうな顔をする兄さん。

「え?勿論使うつもりだよ。だって、中身取り換えればいいって話だよね?」

(やっぱそう思ったのか。それがとんでもない間違いだとも気付かずに……。本っっ当、単純馬鹿だよな、この兄さん)

「するのはいいけどそれしたら、兄さん全く……身動きすら出来なくて寝たきり状態になるよ?」
「えっ?!何で?!」

(ちっとは頭使えよこのお馬鹿!)

「兄さんが持ってるヘグルス変換機器の中身、移し替えると中央大陸の土砂がこの地の魔力に触れて上書きされるから。普通、違うヘグルスの物があれば、強くて多いヘグルスに呑まれて上書きされるから、ヘグルス変換機器の中に収めて上書きされないようにするんだよ。それを取り出すって事は、今いる場所のヘグルスに上書きされるって事。ここのヘグルスは9だから、中央の出身者が身動き出来るとは思えないけど?今兄さんが身動き出来るのは、壊れているけどそのヘグルス変換機器があるお陰。今この大陸で、捨てたり買い替えたりすれば、間違いなく立ち上がる事すら困難になるからね。僕が行き先を中央にしたのはその為だけど、取り換えたければしてもいいよ?その代わり、僕達は兄さん放って先行くだけだから」

 兄さんは僕の言葉に青くなるけど、僕が放って行くのは当然だ。立ち上がる事すら困難な健康体なんて邪魔なだけ。しかも理由が理由だし。そもそも、壊れた原因がやっちゃいけない最低限の取り扱いによる悪さでだし。
 ヘグルスによる寝たきり健康体なんて、馬鹿馬鹿し過ぎて誰も相手にするか!と思うのは僕だけじゃない。絶対これ、常識だから。

「あのさ、それ、俺の場合は大丈夫なのかな?」

 セレヴィスが心配そうに聞いてくる。が、地の魔力が高い場所のヘグルス変換機器の場合は全くと言っていい程問題ない。因みにここのヘグルス出身者なら、ヘグルス変換機器が無くても何処だろうと行ける。
 ただし、その場合、身体が軽過ぎて立ち回りとかが難しくなるけどね。軽過ぎて止まんないとかで。逆にそれに慣れてきたら今度は出身地が辛くなるし。
 なので、慣れたヘグルスが一番良いから、皆自分の出身地の土砂をヘグルス変換機器にセットして持ち歩くんだよ。

「問題ないよ。セレヴィスの場合は市販のヘグルス変換機器でも壊れないから」
「何それ、何で~?!」
「当然じゃん。魔力の高い所から低い所行って壊れる方がおかしいし。兄さんの場合、初級魔法しか使えないのにいきなり上級魔法唱えたようなもんなんだから。途中で魔力切れ起こしてぶっ倒れるのと同じだよ。ってか、普通は先ず一番にヘグルスを気にして行動するから。しなかった兄さんの方がおかしいし」
「おっ、おかしいって……」
「言っとくけど、中央だと常識も常識、言わなくとも皆知ってて当たり前な事なんだからね。知らないで過ごしてる兄さんに吃驚だよ」
「そういうラファールは詳し過ぎない?何でそこまで知ってるの?」
「中央にも知り合いいるし、自分の常識不足を棚上げすんな」

 僕の言葉に落ち込みだした兄さん。全く、安全に旅する気あるのか?と思いたくなる。結局兄さんは壊れたヘグルス変換機器をそのまま持ち歩き、中央大陸で買い替える事にしたようだ。本っ当にお馬鹿って質が悪いよね。
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